時間に追われた生活で
マジマジと、鏡を見るなんて
事はなかった。
化粧をしても、髪を整えても
それは、仕事に行くためだけの作業で
鏡に映る自分のパーツが
変じゃないかどうかの確認を
していただけだった。
けれど、自分を「見る」という事は
大切な事なんだ。
嫌いとか、見たくないとか
関係なく。
見ることで「知る」ことが出来るし
知ることで「必要な物事」が
分かったりもする。
疲れてるね。休もうかとか。
じゃあ、どんな休養が良いかなとか。
鏡が伝えてくれる情報は
中々に侮れないサインのひとつなのだ。
【お題:鏡】
夜の海よ、私を呼んでくれ。
私を強く強く呼んでくれ。
引きずりこむように
荒々しく、恐怖も何もかも
考えられなくなるぐらい
そんな、潮騒じゃ足りないんだよ。
甘いんだよ。
私には、優し過ぎて
今日の大潮でも、まだ逝けない
じゃないか。
さらってよ。
あの人をのみこんだみたいに。
奪ってよ、この痛みから解放されるように
月明かりを、泣きながら睨みつける。
月がキレイだなんて、誰が言ったんだ。
【お題:夜の海】
心は、思っているよりも
頑丈で
痛みや、悲鳴を無視しても
身体に、引っ付けておけば
見失うはずも無いと
そう思っていた。
油もささず、休憩もとらず
ギィーギィーと歯車が軋み始めても
「まだ、大丈夫」と
心と身体が、どれだけ重たさを
感じても動くのだからと
過信していた。
そうして、壊れてはじめて知る。
心と身体は、ひとつであったこと。
一度壊れた物を
組み立て直すのは簡単ではないこと。
心が壊れると、身体が壊れる。
けれど、日常を失っても
世界はそれを気にはしてくれない。
壊したのは、お前だろうと。
だからなんだ、働けと。
馬鹿みたいだなぁと、思いながら。
もっと馬鹿だった自分の為に
少し泣いた。
【お題:心の健康】
鐘が鳴ると、厄災が起こる。
小さな村の住人たちは
その言い付けを、代々守り続ける。
幼い頃から刷り込まれた
鐘に近づいてはいけないの
鐘を鳴らしてはいけないの
皆んなが不幸になってしまうのよ。
誰もが、何故?という
疑問を抱かない。
きっと、命と引き換えになっても
誰も鐘に触れないのだろう。
そうして、恐れていた事が起こった。
村に疫病が流行り
慎ましく生活してきた村人に
薬なんて買える代物ではなかった。
ただひとつ、あの黄金色に輝く
鐘を売り払う以外には
生き延びる選択肢はなかったのだ。
そうして、村は村人ごと
滅びてしまった。
あの鐘だけを残して。
その鐘すら、どこの誰かが盗んでいった。
厄災は起きなかった。
ただただ、村人たちは自分の中に
巣食ったあの鐘の呪縛を
ふり払う事が出来なかったのだ。
【お題:鐘の音】
つまらないことでも
他にやることが無いなら
手を出してみたら、どうかな。
まだ、夏は続いて
暑過ぎて、やる気も気力も
何か考えるのですら面倒だけど。
やらなきゃいけないことを横目に
クーラーの効いたファミレスで
耳にも入ってこない雑談を
お金と時間とグラスの氷を溶かしながら
過ごすより。
もしかしたら、違う何かが
起こるかもしれない。
何もかもが有限な世界だからこそ
無駄になる時間は、きっと無い。
【お題:つまらないことでも】