子供の頃は、知らなかった
蛍の話し。
毎年、この時期になると
蛍を見に私の住む地域は夜の
車の往来が、物凄く多くなる。
蛍の数は、幼少期の記憶から辿っても
少なくなったとしか言いようがない。
それでも、この時期になると
私は蛍を見にそっと出かける。
成虫になるまで、およそ1年
繁殖に不要な口は退化し
僅かな水分とそれまでに蓄えた養分で
2週間光り舞う蛍たち。
そういう知識は子どもの頃には
なかったけれど。
ただ、あの頃のまま
蛍の光は、やはり美しい。
また、来年もと…いつまでも
見ていたい光景を惜しみながら
家に帰るこの気持ちも、あの頃のままだ。
【お題:子供の頃は】
忙しなく動き回る日常で
ふと、自分の腕の細さに気付いた。
内側にこもった考えに
支配されないように
必死で、掃除に明け暮れている。
仕事から離れて半年を
過ぎようとしている、いま…
玄関先に辿り着くなり
倒れ込むように居眠りをして
少しの薬と、忙しさ、やり甲斐で
心身をすり潰してきたのが
半年前までの、日常だった。
あの日々に、戻れるか
戻りたいかと、自問自答してみるが
心が、ギュッと苦しくなり
また、シンクを磨き続ける。
指先がひび割れても。
爪がはげても。
私は、何を求めているの?
私は、何?
答えは、何処にあるのか。
【お題:日常】
いろんな色があるけれど
明るい色が好き。
目に見える色もあるけれど
場所や人や音にだって
想像すれば、色がつく。
よく笑う人の色。
賑やかな公園の色。
溜め息の色。
大事なひとは、きっと特別な色。
触れるともっと
私の好きな色になる。
【お題:好きな色】
あいつには、随分助けられたわ…と
電話越しに聞いた
彼の言葉。
お前が、居たからと…
私もその言葉がほしかった。
【お題:あなたがいたから】
誰もいない、雨の日の帰り道
傘をクルクルと回しながら
ひとり、帰る。
新しい傘の模様は
お気に入りで、普段見慣れた
紫陽花もより綺麗に感じる。
ふと、視線を前に戻すと
遠くからでも分かるあの人の
後ろ姿が見えた。
今朝、私の傘を「良いね」って
褒めてくれた彼だ。
ひとつの傘に、2人…
それは、私のお気に入りの傘よりも
雨の日によく似合う光景だった。
ふぅ…っと、息を吐いて
立ち止まる。
紫陽花に語りかけるように
自分に言い聞かせるように
「お似合いだね」と呟いた。
じんわり胸の奥がいたいけど
泣いたって、涙ごとこの雨と一緒に
流れてしまいそうだから。
こんどは、彼の真似をして
「良いね」って、言ってみたんだ。
【お題:相合傘】