誰もいない、雨の日の帰り道
傘をクルクルと回しながら
ひとり、帰る。
新しい傘の模様は
お気に入りで、普段見慣れた
紫陽花もより綺麗に感じる。
ふと、視線を前に戻すと
遠くからでも分かるあの人の
後ろ姿が見えた。
今朝、私の傘を「良いね」って
褒めてくれた彼だ。
ひとつの傘に、2人…
それは、私のお気に入りの傘よりも
雨の日によく似合う光景だった。
ふぅ…っと、息を吐いて
立ち止まる。
紫陽花に語りかけるように
自分に言い聞かせるように
「お似合いだね」と呟いた。
じんわり胸の奥がいたいけど
泣いたって、涙ごとこの雨と一緒に
流れてしまいそうだから。
こんどは、彼の真似をして
「良いね」って、言ってみたんだ。
【お題:相合傘】
6/19/2023, 12:05:33 PM