ごめんね、ごめんなさい!
ごめんっ!ごめんなさい!
ごめんなさい…ごめんなさい…
あぁ、もう誰に謝ってるのかすら
よく、分からなくなってくる。
何が、悪くて謝ってるのかも
忘れてしまった。
私は、まるで謝罪人形。
誰か、背中のスイッチを切って。
思い切り、この身体ごと…。
【お題:『ごめんね』】
傷が気持ち悪いからと…
半袖は着れない。
こんなに痩せてと…
上着を羽織りなさいと言われる。
だから、誰もいない夜道を
歩くときだけ
思い切り伸びをして歩くんだ。
腕を大きくふって
夜風が、鼻先にツンと沁みて
泣かないよ。
胸を張って、歩くんだ。
【お題:半袖】
天国と地獄があるかは
分からないけど。
ふと、思い出すのは
祖父のことだ。
もう、末期癌だった。
夏休みいっぱい滞在して
中学1年の私は慣れない電車で
病院まで通った。
大きな病院の静かな個室で
祖父は、眠っている事が多かった。
ゆっくりと、傍の椅子に腰掛け
祖父が息をしているか…ジッと眺めた。
車椅子を、押して病院内を少し
散歩することもあった。
『天にも昇る気持ちやなぁ、嬉しいなぁ』
と、祖父は物凄く喜んでいた。
その言葉が、何故だか離れなかった。
身体の痛みや息苦しさは
どれほどの地獄だったろうか。
ただあの夏…
私と祖父は同じ時間の中で
ほんの束の間…車椅子を押しながら
天国を歩いたのかもしれない。
【お題:天国と地獄】
月…月は綺麗だなぁ…
ふと、引き寄せられるように
眺めてしまう事がある。
もう直ぐで、家に着くところだけど
こんな日があっても良いかとも思えた。
それほどに、美しい月だ。
ぼんやりと眺めながら、今日1日の
出来事が…ゆるく巻き戻ってゆく。
ふとある女性が、チラついた。
なんの気もなく接していた同僚だった。
たった、数秒前までは。
驚きと、自覚してしまった感情に
月を眺めるどころではなくなった俺は
言葉にならない気恥ずかしさに
足早に、家に急いだ。
月には、人の心を開かせる
不思議な力があるのかもしれない。
【お題:月に願いを】
雨音しか聞こえない。
髪を濡らし、頬を伝い
服も靴もぐしゃぐしゃに濡れ
赤く染まった血溜まりは溢れ
全てを洗い流してゆく。
ガタガタと震えていた
身体は、先ほどまでとは
違い湯気を放ちそうな勢いで熱く火照る。
ノイズのような、雨音が
思考も時も止めるような感覚。
握りしめていたナイフは
轟々と流れる川に投げ捨てた。
降り止まない雨が、そのうち足跡すら
掻き消すかもしれない。
さぁ、家に帰ろう。
今日は久しぶりによく眠れそうだから。
【お題:いつまでも降り止まない、雨】