天国と地獄があるかは
分からないけど。
ふと、思い出すのは
祖父のことだ。
もう、末期癌だった。
夏休みいっぱい滞在して
中学1年の私は慣れない電車で
病院まで通った。
大きな病院の静かな個室で
祖父は、眠っている事が多かった。
ゆっくりと、傍の椅子に腰掛け
祖父が息をしているか…ジッと眺めた。
車椅子を、押して病院内を少し
散歩することもあった。
『天にも昇る気持ちやなぁ、嬉しいなぁ』
と、祖父は物凄く喜んでいた。
その言葉が、何故だか離れなかった。
身体の痛みや息苦しさは
どれほどの地獄だったろうか。
ただあの夏…
私と祖父は同じ時間の中で
ほんの束の間…車椅子を押しながら
天国を歩いたのかもしれない。
【お題:天国と地獄】
5/28/2023, 4:14:58 AM