なんだかんだで20年以上、仲良くつるんできた奴らがいる。
出会ってから今に至るまで、色んなことがあった。
楽しいことはもちろん、しんどいこともそれなりにあったけど、振り返るとあっという間に過ぎてきたし、こいつらとはこれからもずっと一緒にいると思っている。
もしも未来を見れるなら、いつまでこいつらと一緒に過ごせるのか…知りたい気持ちと知りたくない気持ちがある。
ヒトの身体は思っているより脆いから。
でも思っているよりしぶとくもあるんだ。それは自分が一番知ってる。
ただ時間は有限だから。今までもそうしてきたように、これからも全力でやりたいことをやりたいようにやる、それだけ。
そして心で言えば、こいつらとは永遠に一緒だから、もうそれだけでいいんだ。
【お題:もしも未来を見れるなら】
もう、見ているだけでいい、そう思った。
だがそんな決意も虚しく、少しでも話せばもっと声が聞きたくなるし、他の人と話している姿を見れば、こちらを見て欲しくなる。
自分で制御できるものならとっくにそうしている。
制御できないから困っているし、戸惑っているのだ。
願うことすら不相応だと分かっている。
分かってるけれど…。
あの時見た、自分に向けてではないあの視線。
あの視線を一度でいいから自分にも向けて欲しい、だなんて。
【お題:届かぬ思い】
自分は1人で生きて1人で死ぬんだと思っていた。
この人に会うまでは。
他人を頼ること、他人と助け合うこと、他人と信頼関係を築くには一方ではなく双方の歩み寄りが必要なこと。
他人と生きていく心得みたいなもんは、自然とこの人が見せてくれた。
この人が生きていく姿をずっと見ていたい。
この人が笑って泣いて怒って照れて嬉しがる姿をずっと見ていたい。
できることなら、自分といて幸せだと思ってもらえるようになりたい。
この人と出会って自分はこんなに強欲だったのかと思い知る。
神様、どうかこの人が最期まで幸せに過ごせるよう、自分に守らせてください。
【お題:神様へ】
好きなところ。
男らしい、カッコいい、鼻が高い、まつ毛が長い、喉仏がセクシー、口角が上がっててかわいい、笑うと八重歯が見えてかわいい、体毛が薄くて悩んでてかわいい、照れると無口になってかわいい、寝てる時しがみついてくるのがかわいい…あかん。全部かわいい、になってまう。
かわいい、の4文字では到底表現しきれない魅力があるのに、かわいいの汎用性が高すぎて、ついこの言葉に頼ってしまう。
自分が悪かったな、と反省してる時にこちらを伺うようにチラと視線を送ってくるところなんて、本当にもう、……かわいいのだ。
ダメだ本当にかわいいしか出てこん。
自分の考えを上手く言葉にしたいのに、対象者が『かわいすぎるばっかりに』言葉にできない。
【お題:言葉にできない】
「桜、満開やで!」
明るい声で起こされた。
起きる直前に何か夢を見ていた気がするが、明るい声で全てかき消された。
まだくっつきたがっている瞼を必死にこじ開けると明るい声に違わない爛漫の笑顔が目の前にあった。
「起きた?起きたな?花見行こうや」
今日が花見日和やって、明日からは雨らしいで、人混む前にサッとでええから行こうや、
覚醒しきらない俺を他所に、着ていく服やら目覚めのコーヒーやら色々と準備してくれながら急かしてくる男に笑いが洩れる。
ちょいちょい、と手で呼ぶと「なん?」と言いながら寄ってくる。
腕を掴んでぐいっと抱き寄せると男からはほんのり桜の香りがした。
「散歩行ってきたん?」
早朝目が覚めると1人で散歩をするのが日課な男に問うと、あんまり桜が綺麗やったから途中で戻ってきてん、と返された。
日課の散歩を中断するほどの桜、いや、それを俺に見せたくて戻ってきたのか。
たまらない愛おしさが込み上げてきた。
早く準備をして行こう。
スイッチが入ったようにきびきび準備をしだした俺に笑いながら、どこのルートがあんま人おらんかなぁ、とぼやく男。
10分で身支度を済ませ、今度は2人で散歩に出た。
男が慌てて起こしにきたのも頷けるほど、河川敷の桜並木は満開だった。優しく風が吹くと桜の香りが漂ってきて、思わず深呼吸した。
土手に咲く菜の花やたんぽぽの黄色に新芽の柔らかい緑、青い空、世界は美しいな、なんて柄にもなく思う。
「起こしてくれて、散歩誘ってくれて、ありがとう」
そう言うと、男はまた爛漫の笑顔を返してくれた。
【お題:春爛漫】