「ありがとう、ごめんね」
部屋の掃除で出てきた古い人形
昔の遊び相手
「ありがとう、ごめんね」
私は人形をダンボールに詰める
「部屋の片隅で」
部屋の片隅で冷たくなっている息子を抱えた妻は泣きじゃくっていた
お酒に溺れた俺は酒瓶を息子の頭にぶつけた
息子は俺が殺めた
裁判にかけれ刑務所に入り、酒をやめた俺が刑期を終える間際、妻の自殺したそうだった
一人誰もいない家に帰り、散らかった家を片付けていた
目の前にあった酒瓶で、俺は自分の片目を潰した
酒はあれ以来飲んでいない、街から酒瓶を集めて体に突き刺すのが俺の日課になった
裸足で破片を突き刺す、酒瓶に囲まれた生活
自分がもっとも嫌な方法で男を自殺に追い込むために。
「眠れないほど」
浜辺で待っていると彼女がやって来た
足だけが見える透明人間の彼女
「こんにちはエウレナ」「こんにちはマシュー」
彼女は透明人間のエウレナ浜辺で歌を歌っている透明人間だ
「足が見えるようになったんだねエウレナ」「はい!そうなんです、私もびっくりしていて自分の足を見たのはずいぶん久しぶりです」「どうして見えるようになったんだい?」
「それが私にもわかりません」「もしかしたらここで二人で音楽をやっていたからかもしれないね」「そうかもしれません」
「聞いてくれよエウレナがくれた曲素晴らしいよ!」「ホントですか、嬉しいです」
「今は歌詞を考えてるがアイディアに掻き立てられて眠れないほどだ」
「出来たら読ませてください」「もちろんだ、そうだエウレナ」「はい」「良かったら僕の舞台にでてくれないかい?」「え…私がですか?」
「キミのの才能はもっと知られるべきだよ」「私にできるでしょうか…」
「気が向いたらまた声をかけてくれ」「わかりました」
「今日はもう帰るよさようならエウレナ」「さよならマシュー」
二人は立ち去り、足跡だけが残る。
「夢と現実」
僕は転職を決めた時、周りに反対された
電気会社の正社員になって役職についた
家には妻と息子がいたし
家族を養うお金もあった
やめる理由は時間を気にしたからだった
今の仕事は確かにお金は貯まるが家に帰る時間がないのだ
家に帰れば家族は寝ている休日は上司とゴルフ
このまま会わずに家族といることが果たして幸福なことなのか迷っていた
家族との時間を大事にしたい。
家族に話し辞表を出して転職を決めた、家族の成長を見ながらまた新しい生活を夢見ていた
しかし僕は気づいたていなかった、妻は今まで買えていたブランド品を買えなくなったことをストレスに感じ始め、息子もお小遣いが減ったことを嘆いた
ある程度の年齢になった僕はなかなか転職が決まらず焦り、派遣会社の人事部に転職した
家庭内で喧嘩が絶えなくなり、僕は副業で夜にバイトを入れる始末だ
お互い限界がやってきて僕ら離婚することになった子供は妻が引き取ることになった
皮肉なことだ、家族との時間のために仕事をやめたのに結果的に家族を失うことになった
奇麗な言葉を並べても夢と現実は違う。
家族の間には確かに金銭の繋がりがあるのだ。
タバコを吸いがらを車の灰皿に押し付け一人僕は仕事に向かう。
「さよならは言わないで」
私があの神社にたどり着いたのは、20年後だった
人間の一生を終え
それが終わると牛の姿
牛の体が終わればバッタの姿
バッタが終わればネズミ
ドジョウ
ニワトリ
蟻
鹿
何回姿をやり直してもあの人に会いに神社を目指した
馬になった私はあの神社を訪れたあの人はいた、嬉しそうに私を抱きしめると、たくさんの話しを私に聞かせた、月日がたつにしたがい私の体は衰弱していった
「さようなら言わないでおくぞ」
いつか人間の姿でお互い話しをしよう