彼の優しさは残酷だ。
誰にでも優しくて人たらしだから、独りになった人にとってその優しさは彼に特別な想いを宿らせてしまう。
なにより私も特別な想いを寄せてしまった。
胸の奥にしまい込んでいるけれど、そろそろ溢れそうになっている。
他にも想いを寄せている子がいるのも知っているの。
だから。
彼を困らせたくないから。
彼への気持ちを胸の奥に隠して、なにも無かったように笑うの。
彼が寂しそうにしていたら、トモダチって笑うの。
でもね。
誰にでも優しくしている姿を見て胸が締め付けられる時があるんだよ。
おわり
六二一、優しさ
一緒に住んでいる彼は今日は夜勤で帰ってこない。
寂しい時間が続くけれど、早めに眠って目を覚ましたら彼を元気な顔で出迎えたいんだ。
時計を見つめると今日が終わりを迎えようとしていた。
明日の朝ごはんの支度もしてあるから、あとは寝るだけ。
私はベッドに潜り込む。
隣が広くてやっぱり寂しいから、早く目を閉じて彼が帰ってくる時間を楽しみにしよう。
おわり
六二〇、ミッドナイト
気持ちを認めていいの?
彼が好きだと認めていいの?
胸がキュッと締め付けられる。
彼を異性として好きだと言っている人がいるのは知っている。
だから胸の奥にしまっていたんだけど、止められないくらい溢れ始めていた。
いつか彼に気持ちがバレてしまうかもしれない。
それが怖い。
彼の前でいつも通りに笑顔でいられたらいいんだけど……。
変わらない笑顔の仮面。
彼が来ても問題なく付けていられたら安心するのにな。
おわり
六一九、安心と不安
ようやく、ようやく彼女に想いを伝えた。
けど失敗した。
ちょうど彼女の背中から太陽の光が差し込んでいて、彼女の表情が見えない。
彼女の反応が分からないから不安が募る。
視線を逸らして、うつむいてから俺の方を見ている、と思う。
うう……何か言って欲しい。
怖くて喉が乾いて痛い。
ゴクリと喉を鳴らしてしまうとそれが聞こえたのか、身体をびくりと震わせてから俺に向かって一歩、また一歩と近づいた。
そして見えるのは彼女の笑顔だった。
「私もです!」
その声と一緒に俺の手に彼女の温かい手が添えられた。
おわり
六一八、逆光
可愛い天使を抱き上げて、満面の笑みを俺に向けてくれる愛しい人。
抱き上げられた赤ちゃんも彼女によく似た笑顔で本当に天使だ。
愛しい人も少しだけ大人びていて、胸のときめきが止まらない。
ああ、なんて幸せだろう。
そんな夢を見たんだ。
数年前にね。
ガシッと俺の足を両手でつかみながら俺を見上げていた。
「ママから逃げてきたな〜」
天使を抱き上げると、楽しそうにキャッキャと笑っていた。
無邪気過ぎて怒れないなー。
「あ、捕まえてくれたんてすね。ありがとうございます」
「大丈夫だよ。むしろいつも見てくれてありがと」
彼女は天使のほっぺをつんつんとつつくと、天使は楽しそうにニコニコしていた。
ああ、本当に幸せだ。
おわり
六一七、こんな夢を見た