俺の恋人は色素が薄くて儚さを感じる女の子。
そんな彼女が最近気に入って付けているのが、透明な羽根のピアス。
ショートカットだから彼女が動くたびにガラスの羽根が反射する。その彼女がキレイで目を引くんだ。
俺は彼女が太陽の下でそのピアスをしている姿が好きだから、お出かけする時にシレッとリクエストしてしまう時がある。
俺のプレゼントじゃないのが少し悔しいんだけど。
彼女が一番お世話になっている人からもらったと言っていたから、まあ、しょうがない。
「どうしましたか?」
ぼんやりしていた俺に後ろから愛らしい声が聞こえて振り返る。
彼女はほんの少しだけ首を傾げるとキラリと透明な羽根が光った。
肌の白い彼女だから余計に映えるし、俺の心臓が飛び跳ねる。
「かわいいね」
目を大きく開いたかと思うと、ふにゃりと照れ笑いする彼女。
うん、かわいい。
おわり
五四一、透明な羽根
気温の下がり方が一気に下がっていて、暖房を入れるか一瞬悩むけれどそこまでじゃない。
食事が終わって恋人と居間のソファに座って寄り添い合う。彼の温かさが愛おしい。
あ、そうだ。
私はちょっと名残惜しいけれど、クローゼットの奥から取り出した。
せめて見るだけでも暖かくなるようにと思って、少し早いけれどティーライトのアロマキャンドルをテーブルに置いた。
彼はライターでアロマキャンドルに火を灯す。私は彼の隣に座って腕を絡めて肩に頭を乗せた。
揺らぐ灯火から柔らかい甘い香りが、気持ちが穏やかになっていく。
特に音もなくて、ゆっくりとした時間だけが流れて行った。
おわり
五四〇、灯火を囲んで
少しずつ気温が下がってきて、薄着で過ごすには難しい季節になりました。
それなので今日は恋人とふたり休みを合わせて衣替えデーです。
クローゼットの奥から収納ボックスを彼が取り出してくれる。私が受け取ろうとするけれど、彼から「重いからダメ」って言われた。だから大人しく置いてくれた収納ボックスを開けていく。
このボックスは彼のだ。
そこにはブラウンのダウンジャケットがあった。
「あ……」
私はそのジャケットを自然と手に取ってギュッと抱きしめてしまった。
「どったの?」
彼のジャケットを抱きしめているのを見て彼が驚いて声をかけながら隣に収納ボックスを置く。
私の様子を見てふわりと微笑んで座ってくれた。
「俺のジャケット、なんか変だった?」
私は首を横に振った。
このジャケットは大切なデートの時に着てくれたから私にとって思い出が深いジャケットなの。
なにより、このジャケットを着た時の彼が格好よくてドキドキしたから、その時をどうしても思い出しちゃう。
「変じゃないです。一度クリーニングを出しましょ」
「そうだね。君のジャケットも一緒に出そ」
「はい!」
そうお互いに微笑んでから、また冬支度を進めた。
おわり
五三九、冬支度
いま、私はとても幸せです。
大好きな彼と恋人になって、一緒に住むようになった。
一緒に眠る時間がどうしようもないほど幸せなの。彼の温もりは安心してゆっくりと深く眠れるようになったんだ。
だからね、この時間を止めて欲しいって思うの。
でも。
私はいつか彼と〝家族〟になりたい。
そう思うのは早いかもしれないけれどね。
だから、時間は止めて欲しくないの。
今が幸せだけれど、この先に幸せがもっともっと増えるかもしれない。
そう思ったら、時間を止めてなんて言えない。
だから私は彼と先に進むの。
彼と幸せになる道を探すために。
おわり
五三八、時を止めて
季節限定の甘やかな香りが鼻をくすぐる。
俺の恋人はその香りが好きだから、この季節はさらにご機嫌だ。
俺自身も嫌いじゃないと言うか、どちらかと言うより好きなんだ。
仕事の帰りにバイクでキンモクセイが香る場所、少し探してみようかな。
穴場を見つけられたら、彼女をバイクデートで連れていきたいんだよね。
俺は去年、彼女をキンモクセイが香る場所に連れて行った時の幸せそうな顔を思い出す。
あの愛らしい笑顔がまた見たいから、ちょっと探索しよ。
もちろん、彼女に心配させない程度にね。
おわり
五三七、キンモクセイ