少し、気になる人がいる。
怪我をした時に助けてくれて、その時に優しくしてくれた。
その後も怪我をして病院に行くと、挨拶から気軽に声をかけてくれてから、私用で会っても挨拶から話せる人になった。
私の職場にも来てくれて、少しずつ〝医者と患者〟から〝友達〟になっていけていると思ってる。
でもね。
私はもう少しだけあなたに近づきたい……です。
おわり
五二二、friends
機嫌がいい時は無意識に鼻歌を歌ってしまう。それは俺だけじゃなくて恋人もそうだった。
キッチンから恋人の楽しそうな歌声が聞こえる。
あまり歌は得意じゃないと言っていたのに、リズミカルに歌う彼女の声は自然と俺も嬉しくなってしまう。
上手かどうか、というより。彼女の歌声と言うだけで十分幸せを感じる。
そしてお腹を空かせるかぐわしい匂いに鼻も誘われてしまう。
この匂いは、俺の好物の匂いだ。
それで彼女の機嫌がいい理由が分かる。
今日も俺は幸せです。
おわり
五二一、君が紡ぐ歌
夜の街に恋人と歩いていると湿度が高くなったのか、空気がぼんやりとしていた。柔らかい光が街中に灯って幻想的だった。
「きれいですねぇ」
ジメッとしていたけれど、俺はつい彼女の手を取って彼女に視線を送る。
「いや?」
少しだけ不安になってそう彼女に聞くと、柔らかい笑顔を向けてくれた。
「嬉しいです」
キュッと手を握り返してくれる。眉を八の字にさせて照れた顔はすごく愛らしくて、胸が暖かくなった。
すぐ霧は晴れてしまうかもしれないけれど、彼女との時間が続けばいい、そんなふうに思った。
おわり
五二〇、光と霧の狭間
眠れない。
さらさらと砂が落ちる音が優しくて心地いい。
片目を開けると、砂時計の砂が半分くらい下に落ちている。
おしゃれだと思って見ていたら、プレゼントにもらった一時間用の大きめな砂時計。それが半分も落ちているという事は、寝ようと思ってからもう三十分過ぎていると分かった。
微妙に眠れない時には恋人の体温が俺には一番効く。でも今日は会社の女性陣でお泊まり会をすると呼ばれて今日は俺のそばにいない。
「はあ……」
彼女がいないと彼女の生活音も聞こえないから、砂時計の砂が落ちる音だけが響いていた。
おわり
五一九、砂時計の音
デートにプラネタリウムを何度か選んでいて、空や宇宙が好きな俺と彼女だからお土産に星図のジグソーパズルを買ってみた。
ピースの数も多いから、ふたりで少しずつ進めていた。
家に帰るとどちらからともなく初め、集中力が切れるとやめてを繰り返す。闇夜の中に光る星々だから、難易度も高い。
だからゆっくりゆっくりと星図が描かれていた。
でも、それでいいんだ。
彼女も俺もお風呂にあがりの眠る前に少し座り、消えていた星図が少しずつ輝きを取り戻していく。
それをふたりのペースで完成させていくのが楽しい。
おわり
五一八、消えた星図