もぐもぐと幸せそうな顔でみかんを頬張る恋人を見ていると、心が暖かくなって今こうしている時間が本当にしあわせだなと感じていた。
色々あった一年だ。
でも、こうして彼女と過ごせる初めての一年で、今度は二年目が始まる。
出会ったのは去年だけれど、こんな関係になったのは今年からで。苦しい時も、辛い時もあった。
でもそんな時には彼女がそばに居てくれた。寄り添ってくれた。
俺はもう手放せない。
そんなことを考えながら彼女の頬へ自然と手を伸ばしていた。
「? どうしましたか?」
「うん……」
大したことないんだ。
「一年、色々あったけれど、しあわせだなって」
その言葉を聞いて、頬に添えた手の上に被せるように彼女の手を置き、頬を擦り寄せる。
「私もしあわせです」
おわり
二二八、一年間を振り返る
家でのんびりとした時間を過ごしていると、恋人が丸いボウルにみかんを山にして持ってきた。
「疲労回復みかんの登場ぉ〜!」
先日、早めの年末年始の買い物をしてきたけど、みかんを買った記憶はなかった。
「どこから出てきたの、そのみかん〜?」
彼女は俺の隣に座ると、ローテーブルにボウルを置いて、そこからひとつを撮って俺に向ける。
「社長からもらいました〜。沢山送ってもらったんですって〜」
「おすそ分け〜」
向けられたみかんを受け取り、皮を剥き、甘皮も丁寧に取る。
「あーん」
キレイになった一粒のみかんを、俺は当たり前のように彼女に向けた。
目を丸くしてみかんを凝視した彼女だっけれど、ふわりと笑顔になって口を大きく開けてくれる。
俺はゆっくりと彼女の口にみかんを運ぶと、俺の指ごとパクッと食べる。と言ってもみかんだけ食べて、指はハムハムと唇で止めていた。
「こらぁ、俺の指まで食べるな〜」
「んふふふふ〜、おいひぃれす〜」
完全に顔が蕩けた満面の笑みが、とても愛らしい。
「分け合いながら食べようね〜」
「はーい」
次のは自分で食べるけれど、その次も食べさせてもらえるのと思っているのか、目が輝いている。
「また食べさせてもらえると思ってるな〜?」
「思ってます〜」
実際、彼女は自分の目の前にあるみかんに手を付けず、楽しみに待っていた。
「自分で剥け〜、じゃなかったら俺に食べさせるために剥け〜」
「あはははは」
話しながら自分の身体を思いっきり彼女の身体に押し付ける。
「剥きます、剥きます〜」
彼女は目の前のみかんを丁寧に剥き始める。俺はそれを見守っていると、優しい瞳が俺を捕らえた。
「はい、あーん」
おわり
二二七、みかん
昨日、一応仕事納めしてきた。
一応というのは、私の仕事が車の修理屋なので、年末年始と言う運転に慣れていない人が車に乗る季節なのだから、壊すことが多い。
だから、緊急連絡に率先して連絡してもらうように申請してきた。
理由は簡単。
同棲している恋人がほとんど居ないからだ。
彼は年末年始、普通に仕事。救急隊員だから、年末年始の人が休みだから、運ばれてくる人も多いので忙しいらしい。
彼が冬休みを取れるのはこの都市が〝普通〟を取り戻した後だと。
だから、私も彼が冬休みを取れる時になったら、率先してお休みを取れるよう、緊急出勤に手を挙げた。
彼が居ない家は本当に寂しい。
普段は泣きそうになるけれど、今日は違った。
私はお店が年末年始てお休みに入る前に買い物をしに来ている。
冬休みを取れない彼のために、家事をしようと決めてたの。明日の朝ごはんも、お弁当も、夕飯も頑張るんだ。
だから、私たちの冬休みは、もう少したけ先延ばし。
おわり
二二六、冬休み
クリスマスも過ぎ、年始の準備に入って、恋人と買い物に行くと、彼女の冷たい手を繋いで自分のコートのポッケに入れることが普通になってきた。
彼女と手を繋ぐことは嬉しいから、いいと言えばいいんだけど、俺が居ない時はそのままでいるのしたら嫌だな……。
今度デパートに行って、彼女の好きそうな手ぶくろを探してこよう。
俺が居ない時につけてもらう用のやつを、ね。
おわり
二二五、手ぶくろ
去年、彼女との関係はまた恋人ではなかった。
でも仕事の関係で会って、クリスマスプレゼントを贈った。
そこから彼女に惹かれている自分に気がついて、彼女との関係がどんどん紡がれていき、今では隣で眠っている。
誰よりも愛おしい彼女。
来年はどんな関係になっているのか楽しみだ。
おわり
二二四、変わらないものはない