家でのんびりとした時間を過ごしていると、恋人が丸いボウルにみかんを山にして持ってきた。
「疲労回復みかんの登場ぉ〜!」
先日、早めの年末年始の買い物をしてきたけど、みかんを買った記憶はなかった。
「どこから出てきたの、そのみかん〜?」
彼女は俺の隣に座ると、ローテーブルにボウルを置いて、そこからひとつを撮って俺に向ける。
「社長からもらいました〜。沢山送ってもらったんですって〜」
「おすそ分け〜」
向けられたみかんを受け取り、皮を剥き、甘皮も丁寧に取る。
「あーん」
キレイになった一粒のみかんを、俺は当たり前のように彼女に向けた。
目を丸くしてみかんを凝視した彼女だっけれど、ふわりと笑顔になって口を大きく開けてくれる。
俺はゆっくりと彼女の口にみかんを運ぶと、俺の指ごとパクッと食べる。と言ってもみかんだけ食べて、指はハムハムと唇で止めていた。
「こらぁ、俺の指まで食べるな〜」
「んふふふふ〜、おいひぃれす〜」
完全に顔が蕩けた満面の笑みが、とても愛らしい。
「分け合いながら食べようね〜」
「はーい」
次のは自分で食べるけれど、その次も食べさせてもらえるのと思っているのか、目が輝いている。
「また食べさせてもらえると思ってるな〜?」
「思ってます〜」
実際、彼女は自分の目の前にあるみかんに手を付けず、楽しみに待っていた。
「自分で剥け〜、じゃなかったら俺に食べさせるために剥け〜」
「あはははは」
話しながら自分の身体を思いっきり彼女の身体に押し付ける。
「剥きます、剥きます〜」
彼女は目の前のみかんを丁寧に剥き始める。俺はそれを見守っていると、優しい瞳が俺を捕らえた。
「はい、あーん」
おわり
二二七、みかん
12/29/2024, 1:25:42 PM