「プレゼントかー…」
今年のクリスマスプレゼントは何がいいかと聞いたら、
「うーん…」
…悩んでしまった。
長年ともに過ごしてきた俺たちには、プレゼントはお互いが欲しいものを贈るという決まりがある。
いつもは「加湿器が欲しい」「まくらが欲しい」など、12月に入った時点で欲しいものが決まっているのにどうしたんだろう。
「決まってないの?めずらし。」
「うん…、なんかピンとくる物がなくて。」
「今年は24.25日にあんたと一緒にいられるだけでいいや。それが何よりのプレゼント。だからお休みもぎ取ってきてね。」
うわ、無自覚天然発言出た。
「ん?どした?顔ニヤけてるよ?」
「お前…そういうとこだぞ…」
この発言が俺へのプレゼントになってること、気づいてないんだろうな。
231223 プレゼント
「お風呂あがったよ。お次どうぞ。」
そう言ってくれたあなたからゆずの香りがする。
そうか、今日は冬至か。
「ありがとう。行ってくるわ。」
沈ませては手を離し、ぽこんと浮かんでくるゆずを見ながら温まる。
無心でそれを繰り返し、危うくのぼせそうになって慌ててお風呂を出る。
「いいにおいする。」
なんて言いながらくっついてくるあなた。
「おなじにおいするよ?」
「んー。」
…こりゃ聞いてないな。そして眠いんだな。
一緒の布団に入るとすぐ寝ついたあなた。
あなたの寝顔を見ていると、何故か心もあたたまる気がする。
おやすみ、また明日。
231222 ゆずの香り
遠い場所に住んでいる君と休みが合った。
じゃあ中間地点で会おうと約束をしたのが二週間前。
ずっとずっと楽しみにしてきたこの日も始まってしまえばあっという間。
「次はどこに行こっか?」
「あなたが住んでいる場所がどんなところか知りたいな。」
「本当?遠いけど駅まで来てくれれば迎えに行くから!」
「うん、楽しみにしてる!」
束の間の逢瀬もおしまい。
…正直、ものすごく寂しい。
でも僕から見えるこの大空は、君から見える大空と繋がっている。
会えない日も君のことを考えるだけで元気が出てくる。
よし、次の約束の日のためにも仕事頑張るぞ。
231221 大空
社会に揉まれ、やることなすこと全てがうまくいかず何にもやる気が出なかったあの時。
「もういっそのこと…」なんて考えてしまったあの時。
雨の中傘もささずぼーっとベンチに座っていたら、ベンチの下から雨宿りをしていたあの子が鳴きながら足に擦り寄ってきた。
「そうか…お前もひとりぼっちなのか。」
「にゃーん」
「…一緒に、帰ろ。」
自分はどうでもいいがこの子が雨に濡れてしまうのが嫌だ、そう思って自分の家に連れ立って帰ったことを思い出す。
あの子がいたから、僕は人生をもう一度頑張ろうと思えた。
あの子がいたから、頑張りが報われることもあるんだと知れた。
「これまでありがとう。ゆっくり休みな。」
あの子がつけていた首輪のベルの音が聞こえた気がした。
231220 ベルの音
「あ!今学校帰り?」
「うっす……」
小さい頃は「大きくなったら結婚してね!!」なんて言ってくれていたのにな…なんて寂しさを感じる。
まあ高校生の思春期真っ只中にも関わらず、無視せず会釈してくれるだけすごいことだけど。
そうぼんやり考え事をしながら歩いていたから目の前に自転車が迫っていることなんて気づかなかった。
「あぶないっ!!」
あと寸でのところで自転車と衝突する、その瞬間誰かに腕を引っ張られ抱きしめられる。
「もう!ぼんやりしない!昔っから変わらず危なっかしいんだから!!」
隣の家の歳下の幼馴染もこんなに立派になって…と今考えるべきではない思考に落ち着く。
「…やっぱり俺が守らないと。」
231219 寂しさ