社会に揉まれ、やることなすこと全てがうまくいかず何にもやる気が出なかったあの時。
「もういっそのこと…」なんて考えてしまったあの時。
雨の中傘もささずぼーっとベンチに座っていたら、ベンチの下から雨宿りをしていたあの子が鳴きながら足に擦り寄ってきた。
「そうか…お前もひとりぼっちなのか。」
「にゃーん」
「…一緒に、帰ろ。」
自分はどうでもいいがこの子が雨に濡れてしまうのが嫌だ、そう思って自分の家に連れ立って帰ったことを思い出す。
あの子がいたから、僕は人生をもう一度頑張ろうと思えた。
あの子がいたから、頑張りが報われることもあるんだと知れた。
「これまでありがとう。ゆっくり休みな。」
あの子がつけていた首輪のベルの音が聞こえた気がした。
231220 ベルの音
12/20/2023, 1:20:41 PM