病室からもうずっと出ていない。
最後に出たのはいつだったっけ。
でも寂しくはないよ。
毎日君が来てくれるから。
僕は覚えてる限りこの病院の敷地から出たことがない。
そういう子はこの病院にたくさんいるけど、
仲良くはなれなかった。
みんな僕より体が強くて僕よりいろんなことができた。
僕にはできないことがたくさんあったから誰も仲間に入れてくれなかった。
昔から僕を看てくれている看護師さんがいた。
その人はずっと僕の担当だった。
最近はなんだか悲しそう。
僕は病院の子と仲良くなれなかったけど、
君は僕を見つけてからずっと仲良くしてくれてる。
初めて次の日が来るのが楽しみになって
初めてずっと起きていたいと思った。
そのくらい君が大好きだよ。
早く来ないかなぁ~
「おはよ、来たよ」
そうやって笑う君が早く見たくて、
たくさんの管に繋がれた体が今日もそわそわして落ち着かない。
だから、一人でいたい。
って言ってたの。
彼はそうやって僕から離れていったの。
僕は一人でいたいけど、
1人でいたくないの。
だからお願い。
僕の純美が壊れるまででいいから、
手を離さないで。
澄んだ瞳。
君の目は澄んでいるねって言われたことはないが、
心のなかで街ですれ違う人と目が合うときに口に出しそうになることがある。
基本的に人と至近距離で関わることが苦手な僕は自分から話しかけに行くことができない。
怖いのだ。
普通の人たちの輪に入るのも、
自分が普通になってしまうのも。
でも魅力を感じた人のそばに行きたいと思うし、
話したいと思う。
だがそれはいつだって周りの人と少し違うなと思う人だった。
髪色でも、
目の色でも。
中でも目というのは僕の大好物だった。
キラキラした目。
緑色の目。
ハイライトの入らない黒い目。
ずっと見つめていたくなる。
だから僕は僕が好きだ。
特に僕は僕の目が好きだ。
僕の目にはハイライトが入らない。
写真なんかはいつも暗く映る。
でも近くで見れば栗色のきれいな目だ。
きっとこれを知っているのは僕と、
これを読んでしまった貴方だけだ。
僕らだけの秘密ですよ?
神様が舞い降りてきて、こう言った。
「 」
僕の耳はそれを拾えなかった。
僕の世界はずっと無音だ。
僕はそれが嫌じゃない。
哀れみも慈悲も僕には必要ない。
もちろん神様だって必要ない。
あぁ~、、、
眠たい。
寝よ。
おやすみ神様。
神様が舞い降りてこない明日が来ますように。
誰かのためになるならば僕は何でもするのかと聞かれた。
まず僕は誰かのためにというのがなんのことを指すのかわからなかった。
例えば僕が誰か特定の人のために行動すれば、
それはその人のためになったことになる。
それを踏まえて誰かのためとはなんだろう。
僕が無意識に行ったことが
僕の生身の体温すら知らない誰かのためになることを指すのだろうか。
じゃあもしも、
僕がペーパーナイフをたまたま購入して
たまたま僕にひったくり犯が襲いかかってきて
たまたま持っていたペーパーナイフで抵抗しようとして
たまたまひったくり犯がそれを奪うことができて
たまたまそれが僕の目にのめり込んで
たまたまひったくり犯が逃走することができたら
それは彼のためになるのだろうか。
だとしたら僕は彼に貢献したことになるというわけか。
でも彼はそれに対して、
たまたま彼のポッケに入っていたカッターで
たまたまそれに手が届いた僕に
たまたま逃走経路に先回りしていた僕に
たまたま胸にカッターを押し込まれて
たまたまそれが胸に入ってしまった彼は
たまたま膝を地につけるしかなくなったのだからそれはつまり、、、、
彼は僕に貢献した。
ということはお互いの生身の姿を知らない僕らは誰かのために行動したと。
そういうことになるのか。
それが誰かのためにということか。
何だ簡単。
僕ってば天災。
完全に理解したわ。