途中書きです。すみません。
「星のかけら」
―新月の夜
星を売るため、ひさしぶりに故郷である地球に行く。
宇宙開発が活発化し、人間が地球以外の星で生きられるようになった今。
地球の方がまだまだ栄えているが、年々どの星も人口が増加傾向にあり、特に火星は人気の星で近い将来地球の人口を追い抜かすだろうと言われている。
私は宇宙開発担当として人類にとって住みやすい環境づくりをテーマに日々仕事に取り組んでいたが、長年の夢を叶えるべく会社を辞め、現在は自分で製作した星を売っている。
途中書きです。すみません。
「Ring Ring…」
ベルを鳴らすと現れる私だけの妖精さん。
小学生の頃、毎日ベルを鳴らしてはいろんなことを相談していた。
友達と喧嘩したとか。
好きな人ができたとか。
先生に怒られたとか。
ベルを鳴らすとすぐに現れてくれた。
クラスメイトの目から見ると、突然ベルを鳴らしたり、誰もいないところで誰かに話しかけていたりするおかしな子だったと思うけど、私に妖精さんが見えることは私の中では当たり前のことだった。
ベルは私が海外旅行に行った時におみやげとして買ってきたものだ。
取っ手がおしゃれだし、真ん中に地球儀がはめ込まれていてくるくると回るところも好きだったし、何より涼しげなのに可憐に聞こえる音がお気に入りで、旅行中ずっと鳴らしていた。
妖精さんが見えるようになったのはいつからだろう。
私の「追い風」という話に登場する人々は主人公に限らずどの人たちの生き方も尊いものだと思います。
もちろん皆さんのこれまでもこれからも。
生きづらい世界だけど、それでも頑張って生きているあなたを応援しています。
「追い風」
私の生きたい方向は向かい風。
最初は皆も向かい風に立ち向かっていた。
でもひとりまたひとりと去り始め、別の方向へと歩み始める。
ある人は進んできた方向に背を向け、向かい風は追い風となって彼らの背中を後押しした。
私が向かい風の中、一歩を進んでいる間に彼らは追い風に乗って、あっという間に私からでは見えないくらい遠いところまで行ってしまう。
そんな彼らの進んだ方向から楽しそうな笑い声が聞こえてくると私も追い風に乗ってそちらへ行ってしまいたい気持ちになったけれど、彼らのいる方向は今まで私がいた方向で私の今までの軌跡が無になってしまうと思うと向かい風に背を向けることはできなかった。
またある人は別の道を探すため、風に少しずつ流されながら、または少しだけ抗いながら、風の流れに対して斜めに進んでいった。
彼らは思ったように行かないことが多かったけど、たまに私の行きたい方向へと繋がる追い風を見つけて私よりも先に行ってしまった。
そんな彼らの進んだ方向から幸せそうな笑い声が聞こえてくると私も近道を探してより早く楽に目的地に着きたい気持ちになったけれど、ここを離れて彼らの進んだ近道を見つけてももうすでに風の流れが変わってしまっているかもしれないし、もしかしたらスタート地点よりも後ろになってしまうかもしれないと思うと別の近道を探すことはできなかった。
進んでいる気がしない。
ちっとも近くならない。
憧れの世界はずっと先。
かすかに見えてるけど。
消えてなくなりそうだ。
そんな状況が辛くて、向かい風を追い風にしようと試みたけど、神様じゃないから、世界の中心じゃないから、私が周囲の環境を変えることはできなかった。
一緒に向かい風へと立ち向かう者は本当に少なくなってしまった。
私がこの道を進み続けたら。
いつか私だけになってしまうのかな。
その懸念を晴らすため、数少ない仲間と共に励まし合い、助け合いながら進んだが、この道を進む辛さを分かち合った仲間だからこそ別の道に進むと言われると、祝福こそすれ引き留めることはできなかった。
別の道を進む前に彼らは私に聞いた。
「どうしてそんなにもそちらの方向へ行きたいのですか?」
「なぜこんなにも辛い道をめげずに諦めずに歩めるのですか?」
私たちはそんな熱い情熱や強い志を持っているあなたが羨ましい、とそう言われた。
羨ましいのは私の方だ、と思う。
もはやここまで来て別の道で幸せになれる未来が見えない。
熱い情熱とか、強い志とか、とんでもない。
ただの意地だ。
どうしてこの道を進んだのか、何がきっかけだったか、もう思い出せない。
違う道を歩んだ彼らは今何しているのかな。
幸せになれたのかな。
幸せだといいな。
私も幸せになりたい。
「おひさしぶりです」
と後ろから声が聞こえて振り向くと、少し離れたところから見覚えのある顔が見えた。
「別の道を探すって言って追い風に乗って出て行った…」
「そうなんですけど、いろいろあってまた目指したくなって」
「いろいろって?」
「いろいろって言っても別に明確な何かがあったわけではないけど、あそこを目指していた時が一番生き生きしていたと思えたんです」
彼が追い風に乗って別の道を進んでいる間も、私は向かい風の中でも前に進み続けてきた。
でも彼は別の世界からまた私たちに追いついた。
この辛い道に戻ってきてくれて嬉しいと思うと同時にずっと頑張ってきた努力が簡単に追い越せるものだと知って辛く苦しかった。
私はずっと間違っていたのかな?
この道を行くのは間違いだったのかな?
もうここがゴールでいいんじゃないかと思えてくる。
生きている時間のほとんどを費やした。
報われるには、もう十分。
強く、追い風が吹いた。
ぐんぐんと近くなる目的地。
ようやくたどり着いた境地。
仲間たちと肩を組み、喜びを分かち合う。
感動で涙が止まらなくなって視界が霞む。
私たちは手を繋いで憧れの地に大きな一歩を踏み出した。
ここでの幸せな日々の中で気づいたんだ。
ここがゴールじゃないって。
まだこの先も新しい世界が広がっていて生きている限り終わらない。
でも、怖くはないよ。
これだけ長い間強い向かい風に耐え、進み続けられたんだから、きっと今ならどんなことでも乗り越えられる気がする。
「君と一緒に」
私は恋がわからない。
だけど、ふと君のことを思い出す。
君が一緒にいたら、と思う瞬間がある。
これが恋なのかな。
「冬晴れ」
ネックウォーマー、帽子、手袋、ゴーグル。
あっ、順番間違えた。
先に手袋を着けちゃうと、細かい指の動きが難しくて何もできなくなっちゃうんだった。
ゴーグル、手袋。
「準備できたー?」
「うん。今、行く」
今日は初めて友達とスキーをするんだ。
昨日は楽しみすぎて寝れなかった。
「お待たせ。ウェア、めっちゃかっこいい」
「そう?ありがとう」
スキーのウェアって何でこんなにおしゃれに着こなせるの。
普段もボーイッシュなイケメンだけど、今日はいつも以上にきらきらしていて、眩しくて見れない。
「行こっか」
何回かリフトを乗り換えて頂上まで行く。
危ないけどちょっと後ろを振り返ってみた。
こんなに高い場所まで来たんだって分かってちょっと嬉しくなる。
夏はこういうところを歩きで登ってるわけだから、リフトのありがたみが分かって少し感動するのだ。
その間友達は危ないよ、と注意しつつ、私の体を支えてくれた。
中身もイケメンすぎないか…?
セーフティーバーを上げ、頂上に降り立つ。
頂上の景色は今までで一番だった。
私たちの周りをぐるっと囲み連なる山々のてっぺんが白く染まっていて、雲一つない澄み渡る濃い青空とスキー場の白い雪が綺麗に一つにまとまっている。
太陽は優しく大地を照らし、雪は光を反射して宝石のようにキラキラと輝いていた。
「今日は焼けそうだね」
「こんだけ晴れてたらね。雪焼けしちゃう」
日焼け止め塗り忘れたから後で塗らなきゃ。
そう思いつつ、眩しいのでゴーグルを被る。
「あっ、ねぇ。下の方に小さく赤い屋根が見えるよ」
「あそこがセンターハウスか。遠いね」
「今、頂上だから」
「そうだ、写真撮ろうよ」
あの時撮った写真はちゃんと残ってるけど。
写真を撮らなくても、もうこの冬晴れは目に焼き付いちゃっていつまでも離れないよ。
(雪目になっちゃった)