途中書きです。すみません。
この冬は闇鍋パーティーなるものをやりたいです。私は芋けんぴを持ってくんだ。
「冬は一緒に」
「闇鍋パーティーをやろう!」
途中書きです。すみません。
私はとりとめもない話をするのが得意で、友達にはよく「オチ」とは何たるか、を教えてもらっていました。
でもオチがくると一段落しちゃうから、私はわざとオチを作らず先延ばしにするんです。
ずっとあなたと話していたいから。
なんちゃって。
「とりとめもない話」
途中書きです。すみません。
「風邪」
風邪引くなよ
「大丈夫、馬鹿は風邪引かないから」
ははっ、それもそうだな
「ひどーい。自分で言うのと他人が言うのは違うんだよ」
じゃあ、また始業式
「うん、良い冬休みを」
『諦めずに頑張れよ』
体調に気をつけろよ、川上
「馬鹿は風邪引かないらしいので大丈夫です」
ちょ、川上!馬鹿じゃないだろ
「今は馬鹿だけど冬に進化して天才になるので応援しててください」
『自分らしく最後まで粘って』
風邪引いた
「大丈夫?」
40℃超えたけど、今はもうすっかり元気
「ゆっくり休んでね」
『夢の大学生まであともうちょい』
途中書きです。すみません。
雪の結晶をプレパラートにのせて溶けないように急いで家の顕微鏡で観察した思い出とか、雪だるまの玉を小さかった頃の自分の腰くらいの大きさにまで成長させた思い出とか、雪の上で思いっきり転けて人型の跡を作った思い出とか、雪はたくさんの思い出を運んでくれる。
もちろんホワイトアウトの思い出も。
「雪を待つ」
昔、スキー場でホワイトアウトに遭遇した。
最後にあと1本滑ろうかと言って滑っていた最中のことだった。
もともと天候が悪く視界も悪かったが、そのスキー場の特殊な地形も相まって、谷は猛吹雪となった。
ゴーグルに雪がはり付いて視界がすぐに白くなり、ゴーグルの雪を払っても1メートル先の地面がもう見えない。
皆の声は吹雪の緩急のおかげで微かに聞こえるけど姿は見えない。
指先の感覚がなくなって、冷たいのか熱いのかわからなくなる。
世界に私一人だけの空間。
私はここで死ぬみたいだ。
そう死を予感した時だった。
吹雪の向こう側に影が見える。
こちらへと近づいてくるその影。
吹雪が途切れて姿を現したのは、白一色のワンピースを着た女の子だった。
雪がキラキラと反射して輝いていてそこだけ眩しい。
女の子は指を指し、その女の子の示す方へ私は進んだ。
「ここは…」
「目を覚ましたようだね」
昨日泊まった宿のおじさんがそこにはいた。
「他の皆は?」
途中書きです。すみません。
「イルミネーション」
夏は花火。
冬はイルミネーション。
一年中様々な色に光輝いているこの通り。
綺麗だなって思うけど。
ずっと見ていたいけど。
私には少し眩しすぎる。
付き合ってください、と言われたのは8月のちょうど中頃。
塾の帰りで例の通りを歩いていた時、柄にもなく立ち止まって花火を見つめていた。
「…綺麗」
私の声が思わず漏れたのかと思ったけど違った。
少し離れて隣にいる男性の声だった。
「綺麗ですよね、花火」
今思えば私にしてはおしゃべりだったと思う。
「…貴方が、綺麗。花火じゃなくて」
「え」
「自分でもおかしいと思うんだけど、貴方に一目惚れしました」
暗闇を花火が鮮やかに照らす。
私にはその時のあなたが忘れられない。
一瞬でもあなたが綺麗だと思ってしまったのはきっと花火のせいだ。
「それでその人と連絡を取り続けていると」
夏休みが明け、久しぶりに友達のりまに会った私は例の話をすると、あちゃーと言って心配する姿を見せた。
その日に丁重にお断りしたのだが、LINEだけでもと言われ、断るのが苦手な私はつい連絡先を交換してしまって今日に至る。
「その人には勉強に専念したいから、って言ってお断りしたんだけど、受験が終わるまで待ちます、って言われちゃって」
「いいよって言っちゃったの?」
「もちろん言ってないよ。貴方はきっと素敵な人だから私なんかより周りにいい人がいますよって何回も言ったんだけど、なかなか諦めが悪そうで待ちます、とだけ」
私は高校3年生で受験生だ。
今は受験期を理由に断っているけど、受験が終われば断る理由がなくなる。
告白するのも大変だと思うけど、傷つけないように告白を断るのも難しいと今回の件で実感した。
「とりあえず様子見かな」
立花雪見、大学1年生で私の1つ上。
近くの国公立大学に通っている理系。
私と出会ったときはたまたま大学の帰り道だったらしい。
食べることが好きでLINEでの会話はご飯の写真がほとんどで飯テロ状態。
会うのを迫られたらどうしようと思ったけど、そんな様子は微塵もなく、受験の迷惑にならないようにか、週に2、3回連絡が来る程度で私はリアクションだけつけている。
「思った以上に平和だ」
「やっぱり本気なのかな?」
りまはお昼ご飯を食べながら私の話を聞いて言った。
「最初は冗談かと思ったけど、よくよく考えたら接点のない人に自分のことを好きになってもらうには直接話しかけるしかないよなーって」
「LINEで会話してるだけだけど、悪い人じゃなさそうなんだよね。むしろとても良い人みたいで。ほら」
「何、ほだされちゃってんの?」
「…っ。ちょ、ほだされてなんかいないよ」
ただ少し罪悪感があるだけ。
こんな良い人ならきっとモテると思うのに、私なんかを好きでいていいんですか?って。
恋とか、愛とか、全然わかんないし。
初恋すらまだしたことない。
私はあなたに同じ想いを返せないかもしれないけど。
それでも少しだけあなたを知りたいと思うのはダメなのかな?
「…今度の学園祭誘ってみたら?」
「はい?」
「2人きりで会うのは何かあった時守れないかもしれないから反対だけど、学園祭なら私が一緒にいてあげられるからさ。話してみないと分からないことだってあるでしょ」
「え、でも」
「もう送っちゃった」
学園祭当日。
待ち合わせの校門前。
なぜかちょっとどきどきする。
「和葉さん」
後ろを振り返ると立花さんがいた。
「待ちましたか?」
「いえ、今ちょうど来たところです」
「よかった」
本当は緊張して30分前から校門前にいたことは決して言うまい。
「今日は学園祭に誘っていただきありがとうございます。この日をすごい楽しみにしていました。ただ…」
「どうかしました?」
「僕の友達も学園祭に行きたいと言い出してしまって」
「学園祭は外部の人が自由に出入りできるので大丈夫だと思いますよ」
「いえ、あの、そうではなくて僕の友達が貴方に会いたいって言って聞かなくて」
「雪見が一目惚れしたっていう和葉ちゃんはこの子か」
後ろから声がして振り向くと4人の男性が私を囲んでいた。
「ごめんなさい、和葉さん」
ほら、あっちいて、と雪見さんは友達を追い払う。
「友達は賑やかな方たちなんですね」
「そうですね。それで暴走してしまうこともよくあります」
友達は少しだけ苦手だけど、立花さんはあの中ではちょっと異色というか大人しい性格なんだな。
「どこを見に行きたいですか?」
「うーん、どこも面白そうで迷っちゃうな」
「じゃあ、友達のクラスを見に行ってもいいですか?」
行こうと快く賛成してくれたので、りまのクラスに行くことになった。
「和葉と…」
「立花雪見です。和葉さんのお友達の方ですか?」
「ええ、そうです。桜木りまって言います」
「よろしくお願いします」
「もうすぐハロウィンだから私のクラスはそれに合わせて仮装できるお店をやってて、他クラスとも協力して仮装してる人たちはトリックオアトリートって言うと各お店で違ったお菓子をもらえるようになってるんですけど、仮装していきますか?」
「はい、お願いします」
立花さんも乗り気だったので、2人とも仮装することになった。
「ちょっとあんなにイケメンだって聞いてないんだけど」
女性更衣室でりまが唇を尖らせる。
「しかも見た感じ好青年」
「ちょ、しーっ。隣が男性更衣室なんでしょ?話、聞こえちゃうよ」
「少しくらいなら大丈夫だよ」
ここ座って、とりまは言って、私の髪を巻き始める。
「それでどうなのー?」
「何が?」
「好きなの?」
と耳元でりまが囁いた。
「あー、動かないでよ。せっかくうまくできてるのに」
「今のはりまが悪いよ。びっくりしたじゃん、もう」
好き!?好きって何?
前会ったときは周りが真っ暗だったから姿がよく見えなかったけど、今日会って確かに少しかっこいいって思っちゃった自分がいる。
外見が良くても中身がダメだったらって思ったけど、きちんと礼儀正しくて私を大事にしてくれているのが伝わる。
でも良い人なのはわかるけど、良い人だからと言って好きという感情が伴わないと付き合っちゃダメなのかわからない。
好きかわからない。
自分がどうしたいかわからない。
「…こんなに顔も耳も真っ赤で」
「なんか言った?」
「ううん、私の友達は自分の気持ちに鈍感で世話が掛かりますなぁって」
「むぅ、ひどい」
「仕方がないよ。事実だもーん」
ま、でもそこが可愛いんだけどね、と言ったりまの声は小さすぎて和葉には届かなかった。
「よし、できた」
「こんなに時間が掛かって大丈夫かな?待たせてるんじゃ」
「大丈夫、可愛い女の子は少し遅れていくものだよ」
「やっぱり待たせてるじゃん」
急いでお店を出ると思い切り人にぶつかってしまった。
「すみません」
「こちらこそすみませ…」
振り向いたマントの男性は立花さんだった。
吸血鬼の衣装。
外側は黒、内側は赤の長いマント。
爽やかな好青年が一気にクールで大人っぽい感じになっていた。
突然マントに包まれて前が見えなくなる。
「…あの、立花さん?」
ちょっと近すぎるって。
こういうのに免疫ないからどきどきしすぎて死んじゃうよ。
私の鼓動伝わってないよね!?
「すみません。その、和葉さんのデビル姿が可愛すぎて…。こんな可愛い姿、誰にも見せたくないなって」
すみません、突然おかしなこと言ってますよね、と言いながら私を離す。
か、か、可愛い!?
誰が?えっ、私が?
顔が熱い。
熱があるみたい。
「そ、そんなこと。それより立花さんの方がか、かっこいいです」
目が合わせられない。
私、今どんな顔してるんだろう。
「店の前でイチャイチャするの、やめてくれる?」
と、りまがにやにやしながら言った。
「イチャイチャなんかしてません!」
2人して息ぴったり揃って言ってしまった。
りまはなおもにやにやしながら「はいはい」と言ってしっしっと手を振った。
私と立花さんは恥ずかしさでその場から逃げるように立ち去った。
「…いつの間にか大人になっちゃってたんだね」
お姉さん、さみしーなぁと小さく言いながら、りまは2人の後を見送った。
「つ、次はどこに行きますか?」
さっきのことで私と立花さんは一気にぎこちなくなってしまった。
「次は…」
「カップルの方ですか?」
「かっ…」
「…カップルじゃないです。僕が一方的に彼女を好きなだけで」
「そうでしたか、すみません」
好き!?
いや、知ってたけど。
でも、言葉で直接「好き」って言われるのは強力な必殺技すぎる。
恋愛耐性ないんだってー!
恥ずかしさでここを今すぐ立ち去りたくて言ってしまった。
「行きますよ、立花さん」
「えっ、行くんですか、お化け屋敷?」
お化け屋敷?いつの間にそんな話に?
どうやら私が自分の世界に閉じこもっている間にお化け屋敷の話がなされていたらしく、「和葉さん次第ですが」と立花さんが言ったところで、食い気味に「行きますよ、立花さん」と言ってしまったらしかった。
「あの、立花さ…」
「2名様お化け屋敷にご案内!」
もう戻れなくなってしまった。
お化け屋敷は苦手だ。
暗闇がまず怖いのにそこへお化けも登場するなんて鬼畜すぎる。
そういえば、小学生のとき学活の時間にお化け屋敷をやった。
クラスのお楽しみ係と先生がお化け屋敷の仕掛け人で私はお客さんだった。
最初班でまとまって入ったはずなのに途中ではぐれてしまって一人で暗闇を歩いていた。
「みんな、どこ…?こわいよ…。だれかたすけて…」
「…おばけさんはここにいるよ」
「っ!?」
私は無我夢中で走った。
急いでおばけさんから逃げる。
突然電気がついた。
しばらく眩しくて目が開かなかったけど、だんだんと見えてくるとそこはひどい有様だった。
椅子や段ボールで仕切りを作った道が壊れている。
椅子が倒れていたり、段ボールが破れていたり順路がめちゃくちゃだ。
そのせいで私の班の人たちも同じく迷子になっていたようだ。
この犯人は…間違いなく私。
その後、先生に怒られお楽しみ係に謝った。
今回は怖くても破壊しないように頑張らないと。
そのためには協力が不可欠だ。
「立花さん、手を」
「えっ?」
「何があっても離してはいけないですよ」
お化け屋敷攻略の鍵は挨拶。
お化け屋敷ではおばけといかに仲良くなれるかが重要。
「こんにちは、おばけさん」
「ぎゃぁぁぁ、生首がー!」
「いますか?おばけさん」
「フフフフフって笑わないでー!」
「元気ですか?おばけさん」
「ち、血!血!」
なんとか破壊せずにクリア。
「あの、手」
「はっ、え、すみません」
いつの間に手なんて繋いだんだろう。
怖すぎてお化け屋敷の記憶を思い出せない。
「和葉さんってお化け屋敷ではいつも挨拶するんですか?」
「へっ?」
挨拶…。
うっすら思い出してきた。
「いえ、違います。恥ずかしながら昔…」
小学生の頃のお化け屋敷のエピソードを話すとすごく笑われた。
「もう、そんなに笑わないでくださいよ」
「だって道を破壊していくとは思わないじゃないですか、あははっ」
「だーかーらー、もう」
「好きになったのが貴方でよかったと思います。声をかけてよかった」
そういう不意打ちと甘い言葉に弱いのだ、私は。
「付き合ってください」
そんな真正面から言われたら自分の心に向き合うしかなくなるじゃないか。
「…私はあなたに同じだけの想いを返せません」
そのことに罪悪感がないと言えば嘘だけど。
「でも少しだけ気になってるんです、立花さんのことが。初恋まだだし、これが恋かわからないけど、少なくとも私に声を掛けてくれたあの日、私も立花さんが綺麗だと思ったんです」
顔が熱い。
緊張で指先が冷たい。
「それでもこんな私で良かったら喜んで」
立花さんは私をぎゅっと抱きしめて言った。
「これからよろしくね、和葉」
「こちらこそよろしくお願いします。…雪見くん」
私、人生初彼氏ができました。
「…っ。苦しいです、立花さん。ちょっとぎゅってしすぎ」
「名前呼んでくれないと離してあげない」
「…雪見くん、ちょっと力強い」
「よくできました」