よあけ。

Open App
11/1/2024, 8:13:02 PM

:永遠に

これからどうしよう。どうなるのかな。死んじゃうのかな。分からない。後悔ばかり?後悔はない。でも身辺整理なんてできるのかな。せっかく集めた物を全部捨てられるの?プレゼントで貰った物もゴミ袋に入れてしまえるの?ああ恐ろしい!恐ろしい、悲しい、寂しい、切ない。

少しの嬉しさがスパイス痺れる隠し味。

せんせいにはなんて言うの?「もう回復したと思うので次回の予約はとりません」って?なんてワクワクするんだろう!最低だ!他人の心と人生をなんだと思っているんだ!本当にな!だからこそじゃないか!

どうか私の心をぶち抜いて。

嗚呼神様 私の神様 なんて美しい御方。どうか手を引いて、どうか背中をそっと押して。

神様なんていないよ。けどいるの、あたしの神様はいるの。あの慈しむ瞳と体温のないぬくもりと空気が頬をなでたの、ああもう何を言っているのかも分からない!でも、そう、貴方は神様だけど、なんの力もない。私の手を握ることもできないし、背中に触れることすら。

高台から突き落とされる人を初めて見たときの吐き気を今でも思い出せる。あの気味悪さ、全身がじんわり痺れたような感覚、食事が喉を通らない、あの暑苦しい日を。

ステップを踏めばキラキラ金平糖が飛び出す。クルクル回ればふわふわ綿あめが生まれる。お財布の中からロリポップを取り出して、そちらのキャンディと交換してくださいな。手を叩けばチューインガムがパチンパチンと弾ける。ベトベトになった全身をジュースで洗って、チョコレートの湯舟に浸かって、シフォンケーキのベッドで眠る。

嗚呼神様! あたし、こんなに幸せ!

ずっとずっと夢を見させて!永遠に!

こんなに簡単に幸せになれるなら、体の1kgくらい捨ててしまって構わないわ。さあ早く脳みそを、早く!!

許してほしいの、間違ったことに手を付けたこと。許されないことを許されてしまいたい、この気持ちがどれほど甘酸っぱくて美味しいさくらんぼか知らないの?食べてみて、どれほどでも飲み込んで、毒ある種ごと2kg以上口にして。腹を壊してしまってよ、吐き気に身を任せてしまってよ。

味わってみせて。大丈夫!きっと幸せになれるから、さあベロ出して。

どうなっちゃうの?生きていけないよ、もう無理なんだ、耐えられない、早く、目がチカチカする、時計の針が全く進まない、なんで、なんでこんなに永遠に感じるの、どうして針がこんなに遅いの。

気がついたら数年経っちゃってた。永遠のように感じていたのに、私には空白の数年が存在している。きっと異世界にでも行っていたのよ。だってなんだか楽しかった感覚が残ってるもん。空を飛んでいたような気もするし、虹を滑ったりもした気がする!あの空に浮かぶ雲は、わあための味じゃなくて、あれ、食パンの味がしたの!青い世界に包まれて、嗚呼あたし、幸せだったなあ。

神様も天使様もいなくて、喋りかけてくれる存在は誰一人いなくて、あ、それは嘘かも。でもあたしはずっと動いているのかも分からない鈍い足を動かしながら、ふらふら眩しい世界を歩いていたの。何もかもがグルグル回りだしてジェットコースターに乗ったみたいになったり、グーーーーっと世界が一点に吸い込まれていったり、あるときはビカビカ!って色が突然輝きだしたり、かと思えば、ただ、何かも分からない煙をボーッと眺めたり、重力にあまりにも引っ張られて体が鉛みたいに重くてずっと床と一体化してたり。あたしの焼死体がやっほ〜って喋りかけてきて、嬉しくなって抱きしめたら、ボロボロになっちゃって、体は煤だらけになっちゃった。臭い?どんなだったろう、臭かったような気もするし、焼鳥のような匂いがした気もするし、酸っぱかったのかな。

誰かがマフラーを巻いてくれたような気もする。クリスマスに貰ったかわいいチェック模様のマフラー。きっと誰かが私を愛してくれたんだわ。首を絞めるならもっと違うロープにするはずでしょう?大事なマフラーで首を絞めようだなんて、そんな悪魔いるはずないよ!

天使も悪魔もいなくて、現実はカビと埃と下水の臭いがしているだけで、ああ、冷蔵庫にレモンはあったかな。レモンって、常温だっけ。

許してほしい。もう生きていけない。どうして?どうしても。もし生きてしまったらどうしたらいい?私はまた慰めてもらえばいいの?神様みたいな存在に?孤独の成れの果てに?存在もしない存在に宥められて?

永遠にこのまま。努力でどうとでもなる?努力すれば、あたしは、あたしは、あたしは手っ取り早く。手っ取り早さなんて求めちゃだめ?コツコツ積み重ね、延々と?そんなことする気、ないんだけど。じゃあどうするの?どうにも。

ああ!思い出した!ピンク色のオーニングテントがあって、扉はちょっと古ぼけてたけど……でも中にはあたしよりも背の高いショーケースがズラっと並んでて、どこを見てもかわいいケーキばっかり!ケーキ、ケーキ、ケーキケーキケーキ!!ああずっっと食べたかったの!ホイップクリームが紫だったり、水色だったり、赤かったり、オレンジだったり、カラフル!カップケーキもおいてあったよ。これは黄緑色!どれも美味しそう!

ゴミまとめなくちゃ。

足りないんです、もっとほしい。もっと幸せになりたい、だからもっとその優しい愛の塊が欲しい。私を連れて行って、体重の1キロくらいなくなって構わない、どうか私の脳をぶち抜きたいの。

10/24/2024, 5:37:20 PM

︰行かないで

いい感じの話とかなんも書けねぇし読めねぇ。

何が言いたいのかさっぱり分からん。心動かされる刺激的な何かもない。いよいよ感性が死んできた。

今までみたいなやつもう書けねぇしなあ。

不安定な精神に頼りきって書いてきたもんで、随分クリアな思考ができるようになってからはこう、深く暗いところを漂うような話の良さがいまいち分からなくなってきた。なんだ、クリアにはなったが、何かこう、不健康なクリア故に、攻撃性ばかり増しているような。

悩みがあるなら解決すればいい。解決できないなら諦めればいい。諦めきれないなら悩みが少しでも解消する方法を探せばいい。立ち止まってウジウジしてたって何もないだろう。卑屈になっていじけている暇を使って順序立てて攻略していけばいい。

何を勝手に決めつけて出来ない言い訳ばかり探しているのだ。出来ない言い訳ばかりをしている理由すらも探っていけばいずれ「何故か」に辿り着く。根本が見つけられればそれに対処すればいいだけ。対処できないなら何故対処できないのか考え、それの対策をまた考えるだけだ。考えたら実践あるのみ。考えるばかりで行動に移さないからグルグル回ることになるのだ。

腹括れないなら遠回りしてもいい、言えないなら言えるようになるまで気長に待てばいい。人生は短いから早くしろなんていうが、今その時ではないのにやって自滅する方がよっぽど無駄だ。1年でも3年でも5年でも10年でも長く待つほうがいい。

どの道ウジウジ人間はウジウジが解消されなきゃ暫くずっとそんなことばかりして問題解決は出来ないわ悪化させるわで碌でもない。

碌でもない、碌でもない、価値観や考え方ってのは、本当に変えられるのか?

誰かに教え込まされた何かがあるなら無理矢理にでも引っこ抜きましょう。

夢見ていたものがドロドロ溶け始めてベタベタになってきたんだ。人の心の儚さ?脆さ?美しさ?何が美学だって?人との繋がりがロマンスだって?感傷的ってやつだろ。さっぱり分からん。

人が消え死に苦しむ話ってのはそんなに心引っ張られるのか。他人が死んでもどうでもいいのに?というかなんで殺してしまう。それ以外インパクトを出せないからか?誰かを傷つけないと自己表現できない?

「できない言い訳を探している」

左様でございますか。

理解した風で言っているけど根本的なところ何も分かっていない。他力本願して自分の首絞めて最後の最後まで自責風他責って。一体何が「分かってる」なんだろう。

素直に「分からない」「怖い」「不安」「やめてほしい」とだけ言って、聞き入れてもらえたらハッピーなのか、って、なんだ?なんで相手が主体なんだ?自分が言いたいから言うんだろう。聞き入れてもらえないと分かっているなら最初から吐き捨て前提で言えばいいじゃないか。怖いって?なら今は黙っていろ。言えるようになるまで一旦箱にしまっておきましょう。

置いて行かないで、とは。元来お前は最初からそんな人間だったではないか。自分では共感能力が高いだのと自負していた割には人に寄り添うのがストレスで?人の気持ちを汲み取るのもストレスで、イライラしてきて「まず共感」なんでできやしないし、基本的に事実優先で、慰めてほしいなら最初から「慰めてくれ」「心配してくれ」と言えやと思っていて、そのくせ自分は人に察してちゃんとは、実に傲慢で自己中心的な人間だろう?いやはやどこが繊細なんだ。ああ!自己防衛に必死という点において繊細かね?

人の気持ちが分かるというなら、本当に人に寄り添えるというなら、自分が優しい人間だというなら、お前、なんで今そんななんだ?

大丈夫、お前は元からそんな奴だよ。今更それが悪化しようが好転しようが大して変わらない。心配いらない。君は実に優れた社会不適合者だ。幸せにはならないから安心して不幸を全うし謳歌すればいい。素敵な人生だろうが素敵じゃない人生だろうか、そんなこと気にするより大事なのは明日の食い物さ。人生の満足度を考えたってそれで腹は膨れないよ。

別に、腹が膨れてほしいとも思わないけど。

本当に?なら今頃とっくに餓死しているはずだろうに。

ぐ〜たら生きて気ままにのらりくらりヘラヘラ笑ってやってくのが一番だな。

10/23/2024, 4:45:14 PM

︰どこまでも続く青い空

自分のことも信じられないのによくもまあ適当なカミサマだなんて信じられるな。

「妹か弟欲しくない?」って聞かれたんだ。酒を飲んでひどく酔っ払ってるみたいだった。「赤ちゃんはきっとこのへんをふよふよ〜って飛んでるから」「いつ産まれようかな〜って見てるの」と言って目尻を下げて笑ってた。

ああ心底気色ワリィな!嘔吐しないギリギリの吐き気で良かった。ゲロぶっかけてたところだったよ。

「カミサマは見ていてくれてるから」ですって。「ご縁」ですって。「前世」ですって。

心底馬鹿げている。目に見えないものを妄想して、そうやってアンタは生きてきて、ヤベぇ男に捕まって、また勝手に何か素敵な物語でも空想して、耐えて来たのか?

そのツケだろ。

アンタの行いを見てきた神様がいたとして、アンタを幸せにするんだとしたらとんでもないカミサマだ。

縋る先が存在しないものだけっていよいよだな。

これも偏見だって?偏見も持つだろうな。イカれた人間が信じているものなんか胡散臭いとしか思えない。

アンタの恋人ってやつもこれっぽっちもアンタの暴走を止めようとしないしむしろ同情して肩を持ってるイカれた野郎だ。そんなやつとの間に子供が欲しいって、冗談じゃない!!

産むつもりなんかよ、歳考えろよ。そもそもそんな話我が子にしないでくれ。「あくまでこれは妄想の話です」って?あーあ、夢見るのは好きにすりゃいいけどまず現実的に離婚から考えろよ。どこに不倫相手との子供が欲しいです宣言するイカれ人間がいるってんだ。

ここにいたんだな。

「お母さんを選んで生まれてきたのよ」「空から見ていたんでしょう」ですって。

こんな母親選んで生まれてきたとしたら一生の過ちと恥だ。一生空曇っといてくれ、青空なんか見たくもねえ、どこまでも晴れ渡りやがって。こんな空にまで八つ当たりするようになっちまったな。

縁切り神社に行きたいだの、想像の中で嫌いな人を埋めればいいだの、そういうこと親が子供に言うのは教育に悪いと思わないのか?思わないのか。

倫理観なんて元からないようなもんだもんな、家。

こういうまだ自分の心を守れる思考を、もうあと7、8年前にできていれば……いや、約10年はデカいか。無理だ。道徳、倫理、正しさ、そんなものもまともに判断できない頃で、自分の違和感すら気づけないような年で、せめて小学校を卒業していたら。

いや、きっといつの時代に言われたとしても耐えられないだろう。今言われても耐えられる自信がない。どうか子供の前で酔っ払った姿を見せないでくれ。そして気色の悪いことを口走らないでくれ。許しを乞おうとしないでくれ。

己がまともな思考をできているかも怪しい。

「欲しい」って言ってたら生むつもりだったんだろうか。そんで「あなたが欲しがったから」という体でどんどん話が進んでいってたのか?なあ、アンタ離婚したいしたいスルスル詐欺のときもこっちに委ねてきたよな。「お父さんとお母さんどっちについていく?お母さんについてきたら愛情はあるよ。お父さんについていったらお金はあるだろうけど愛情はないよ。どうするる?どっちのほうがいい?」って、なあ、お金は良くないものって刷り込みしてたのもアンタで、愛情至上主義的な思想もアンタのもんで、実質私に選択肢なんてなかったよな。だって私の選択肢は「家族仲良く暮らしたい」だったんだから。

「考え方を後世に残すことが大事」らしいぞ。「繋ぐってそういうこと」だってさ。はは、ああもうひどいなあ!アンタの考え方を後世に残すですって、とんでもないとんでもないとんでもないったらありゃしない!アンタみたいな化物思想を継がされて誰が幸せになるんだよ。

魂?輪廻転生?魂もどんどん成長してるって?死んだら何もない。死は死だ。信じるとか信じてないとかもない。何がロマンチックなものか。現実世界をロマンチック色眼鏡をかけないと生きていけないほど、スピリチュアル方向へ行かないとやっていけないほど、現実見れない阿呆だとでもお思いで?

失礼、失礼、これじゃまるでロマンスを大事にしている人やスピリチュアルを大事にしている人を阿呆呼ばわりしているじゃないか。マトモじゃないロマンチストとマトモじゃないスピリチュアル信者が恐ろしいだけさ。

ああクソ!これも駄目ならなんだってんだ。あの人はマトモだったのかよ。他人の心をえぐり取ってグサグサ刺してわけのわからないうわ言をペラペラ酒に酔っ払いながら語る人間がマトモだって!?ヤッベェな!!

ヒドイなあもう。我が子が大事って言っておきながら、毎晩毎晩出ていって毎回朝帰りからの土日祝日は全部家に帰ってこない。「居てほしいときに居てくれなくて寂しい思いしたから、自分の子にはそんな思いさせないように」って、語ってくれたのも、ありゃぜ〜〜んぶ嘘だったってことか?それともただ心変わりしたか。それともなんだ、やっぱり“遺伝”ってやつか!

親によって子は左右されない!とかほざいてたのになあ。アンタもろに影響受けてんじゃねえか。言うつもりもなかったけどアンタはアンタの親にそっくりだぜ。あんだけ嫌ってんのになあ結局似ちまうんだよ!!

似ちまって。あーあ、可哀想に。

誰がって?自分がさ。

今週はしばらく曇りと雨の予報で嬉しい。

10/22/2024, 7:25:17 AM

︰声が枯れるまで

声が枯れるまで叫び続けて訴えかけて、何していたんだろう。


“一緒”だと思ってた。仲が良いから、いつの間にか何もかもが一緒だって思ってた。価値観とか、考え方とか、配慮の仕方とか、優先順位とか、何でも一緒だろうって、お互い何でも分かってる、僕達は“一緒”だって、心が繋がってるんだって思ってた。

そうあってほしいってただの願望だったなあ。

あの子と僕は似ている部分はあれど少し性格が違うし、気を配るポイントも違うし、考え方もお互い少しだけズレていて、育ってきた環境が全く違っていて、根本的な部分で分かり合えることはなくて……いやもう分からない。分からないよ。

お互い、全部分かり合えないと駄目なのかな。分からない部分があったってそれでいいんじゃないかな。だって僕達、別の人なんだよ。相手の脳全てを理解できなければ一緒にいられないなんて、そんなの、変だって、僕は……。

僕の生活も、悩みも、人生も、それは君に関係があるわけじゃないと思ってる。だって僕の問題は僕とその当事者だけの問題で、第三者の君にどうすることもできない。僕だって君の問題をどうにかはできない。ただ、話を聞くだけが、最大限だと思う。それ以上踏み越えていく行為は侵害であると思っているから。

人と人の間にはある程度境界線が必要だと思ってるから。

分かり合えない部分があることが駄目なことだと思えないんだ。僕達は人だから、完璧に他人のことを理解するなんてことできないって思ってるから。

君は「口にすれば何でも理解し合える」という経験を積んできたからそう思えるのかい?

何もかもを把握しておかないと気がすまないというならそういうの僕にはできないよ。僕は君が言う「何でも話して分かり合おう」という気持ちを尊重できないし、君は僕が言う「分かり合えない部分があってもいいじゃないか」という気持ちを尊重できない。

一緒だと思ってた。気がついたら僕は大事だと思っていた境界線を薄くして君と僕自身を混ぜ合わせて考えてた。でも違うんだ。危ないよ、混ぜ合わせて考えるのは。僕ら別の人間だ。

混ぜ合わせることが危険だと思わないなら、そういうところ、僕とは違うね。違うならどうする、どちらかが折れる?どちらかが我慢する?そんな関係性それこそ嫌だよ。

何もかも明け透けにすればいいってわけでもないんじゃないかって思ってるんだけど、やっぱりこれは僕特有の考え方かな。

当たり前かぁ。


別、別、境界線を引く行為を「冷たい」なんて形容するなんて不思議だった。人に関心がない冷たい人間って僕の中ではもっと別の人を指していると思ってきていたから、その感覚、奇妙だ。適切な境界線を引ける人こそ素敵な人だと思っていたから、それが「冷たい人」って形容されてるの、やっぱり、分かんねえなあ……

人が辛いと泣いているのを見ても、無視しているつもりもなく無視できて「え、だって自分は辛くないし、お前が勝手に辛くなってるだけでしょ?」と平気で言い放てる人が人に関心がない冷たい人だと思ってる。僕にとっては恐ろしくて怖い人。「辛いの?自分がどうにかしなくちゃ!ねえどうしてほしいか言ってよ、なんで泣いてるばっかで何も言ってくれないの??どうしてほしいの?助けてあげるって言ってるのに!」と言う人を温かみのある人だとも思えない。相手の悩みと自分の悩みをまぜこぜにして考えて、相手の心を侵害しているようにしか思えない。僕は、侵害されるのは好きじゃない。侵害されるのがむしろ好きな人、嬉しい人はこういう人を優しい人と思っているのかもしれないけど。

「そっか、辛いんだね」と言って背中を撫でるだけ。そんな人が一番温かみがあって、素敵な人だっと思ってた。貴方の悩みは私の悩みじゃないからどうにかしてあげようとは思ってないよ、でも話は聞くよ、相槌も打つし返事もする、それにちゃんと気持ちは貴方に向いてるよ、でも過度な干渉はしないよって、そんな人が一番温かみのある人だって。

だから、そんな人を「物足りない」「冷たい人だ」と言っている人を見ると違和感がある。けど、これもやっぱり感覚の違いってやつなんだろうな。


誰かに「どうかしたの?」と尋ねられて自分で「大丈夫」と言っておいて、後から「『大丈夫』って言ってるけど本当は大丈夫じゃないの!察してよ!助けてよ!」とか言う方が変じゃないか。

こけて足を挫いたとして、誰かに「痛みどれくらいある?椅子座って休む?」と聞かれたとしよう。本当に痛いならこのときに「椅子に座りたい」と言えばいいと思う。我慢して歩いてみようと思って「大丈夫、歩ける」と答えて、歩き出してからやっぱり痛くなったならそこで「歩けると思ったけどやっぱり痛くて歩けない。椅子に座りたい」と言えばいいと思う。

言わずに「普通足挫いてる人が『大丈夫』って言ってても椅子に座らせるよね?なんで『大丈夫って言ってるけど絶対痛いよ!椅子座っとこう』って言ってくれないの?なんで気遣ってくれないの?察してくれないの?」って、相手を責めるの、それこそ酷い奴じゃないか。大丈夫って言ったのは自分で、無理やり引きずられて歩かされたわけでもないのに「分かってくれない相手が悪い」って、それ、やっぱりどう考えても変だなぁ……。

「言いたくても言えないの」って状況は二パターンあると思う。一つは相手から頭ごなしに否定されてるパターン、もう一つは相手が聞く耳を持っているパターン。前者だと「自分の気持ちを言っても相手に否定され無視され蔑ろにされ心が折れてしまうし怖くて言えない」と思うのも頷けるし、相手に非があるように思う。後者の場合の「相手は聞く耳持ってくれてるけど人のこと心から信じられないし裏切られたら怖いし本音言って嫌われたくないから言えない。できれば相手がこっちのことを気遣って察して分かってくれたらいいのに」というのは、己の問題だろう。相手を信じられない自分に問題があるのに察してくれない相手が悪いってのは……

自己中と思われたくなくて引っ込んでるつもりだがやってること自己中ってのが最早コントみたいだ。どうしよう、ツッコミ待ちだったとしたら。ボケにはちゃんとツッコまないと、もしかしてノリに乗れてないのは僕の方なのか?だから冷たいって?でも僕どちらかというとツッコミよりボケがやりたいしなぁ。


大概の話は「どちらにも一理ある」というものらしい。変だなぁと感じているのも、それは僕が変だと感じているだけの話で、何が良いとか悪いとかの話ではないのだろう。

声を枯らしてまで必死になって伝える必要が、本当にあったのだろうか。ある程度話して通じ合えないならそこで「あ、僕達理解し合えないね。感覚が違うね」でも、別にいいんじゃないか。だって僕達別人なんだから。理解さそう分からせようとするのは傲慢なんじゃないか。相手の感覚、思考、心を侵害している行為。

違って当然、分かり合えない理解できないなら仕方がない。だって僕と君は、別人。

一緒じゃない。

10/17/2024, 6:03:16 AM

︰やわらかな光

何もありませんでした。知的好奇心があるわけでもなく、頭を使うのが好きなわけでもありませんでした。嫌でも考えなければ、知識をつけなければ、理解できなければ、生きるか死ぬかの窮地に追い込まれていた、ただそれだけでした。


学芸員になりたかったんだとはにかむあなたを見て「ああ、なんだ、やはりあなた“は”そうなんだ」と、ようやく腑に落ちた。

私は美術館に行くことが特別好きなわけではなく、むしろ退屈であったと確信した。別に好きでもなんでもなくて、興味があったわけでもなくて、ただあなたについて行っていただけだった。あなたがじっくり絵を一つ一つ見ている時間も、遅いなあとしか思っていなかった。暇だった、楽しくなかった、分からなかった。

一人で美術館に行くこともあった。一目で好きじゃないと思ったらさっさと飛ばして次の絵を、次の絵を、次の絵を求めた。気に入った絵だけをじっといつまでも見詰めることは楽しかった。楽しかった、と思う。

「せっかくチケットを手に入れたのに全てじっくり見ないだなんて勿体無いことを」「芸術が分からずつまらないとしか思えないお前の心がひどく乏しいだけだろう」

絵を見るために並んでいる人たちをどんどん飛ばしながら、きっと誰かはそう思って私を咎めるのだろうと想像した。その通りだ、イマジナリー世間様。私が思い描く正しいと信じて疑わないイマジナリー世間様。ああ鬱陶しい、どうしていつもあなた方のほうが正しいのだろう。

人だかりができている本日の主役を横切ってから、先程一瞥した絵画が妙に脳裏にちらついて踵を返す。気になっていたものは少し戻った角に展示されていた。

バターナイフを持つ少女。左奥にある窓から光が差し込み、そのやわらかな光に包まれた少女は左手を自身の膝の上へ、右手にはバターナイフを持ち、目の前の皿に載ったバケットを見詰めている。幼さ特有のふっくらとした頬、右目の長いまつげが控えめに輝き、内に巻かれたボリュームある栗色の髪が絵画全体の柔らかさを際立たせている。しかし目の前の皿には少女の影が落ち、バケットはくたびれ、しおれている様に見える。そんなバケットを冷たい目で見下ろす少女。柔らかな少女の雰囲気に似付かわしくない、光の宿っていない硬い瞳。

美しいと思った。思って、本日の主役絵画の前にできた人だかりを思い出して、辟易した。この絵画に人だかりはできていない。

この気持ちは寂しさだと思う。孤独感というやつだった。「自分だけがこの絵の良さを理解できているんだ!チラシに載っている目玉しか見れないような凡人共とは違うぜ!」などと、虚勢ではなく心から思えるような人間だったら良かったのだろう。思えなかった。

私は実に我侭だったのだ。己は興味のない絵画をすっ飛ばしていくというのに、自分が好きだと思った絵画を誰もじっくり見ていないときには心にじっとりとした何かが巣食うなどと。

そうして思い出すのだ。すべての絵画を余すことなくじっくり、爛々と目を輝かせながら見て回る、あの人を。学芸員になりたかったんだとはにかむあの人を。

あの人はただの知的好奇心だと言った。ただ面白くて好きだからだと言った。だから全てを目に焼き付けたいのだと。それこそ真の意味での誠実さだと私は思う。私のような適当な人間ではなく、目玉しか興味のない人間ではなく、あなたの様な心が、芸術に対する誠実さだと。

芸術なんて語り始めれば派閥が生まれ争いが生まれ果てに辿り着くのは主義主張の押し付け合いだ。なるべく「みんな違ってみんないい」であってほしいと思うが、全員が全員そうではないので、芸術とはなんたるかという話をしたいわけではない。しかし、しかしだ、私は、芸術に誠実でありたかった。私の理想はそうだったのだ。そうであってほしかった。そちらのほうが美しいと思っていたから。


駄目でした。どうも気後れする。何故か理由は分かっています。私が、本当はどうでもいいと思っていたからだと思います。興味なんてありませんでした。ずっと面倒くさいと思っていた。あったのは上っ面の誰かの受け売りだけ、あなたの受け売りだったのかもしれません。何かに縋り付きたかった、頭を使って考えて考えて知って知って知って理解したふうになっていなければ私が生きていけなかった、ただそれだけでした。純粋な好奇心ではありません。芸術なんてどうでも良かったんです。心からの関心など毛ほどもありませんでした。

「あなたはあなたの道を進めばいい」なんておっしゃるけれど、私は自らこうなりたかったわけでもなく、知りたくなくても学ばなければならなかっただけ、故に私はあなたと違った人間になったのかもしれませんが、ええ、ええ、本当、今私が知っていることとかクソどうでもいい。ではなくて、別に、好きで、学びたかったわけではなく、ええ、ええですから、あなたは、あなたは芸術が本当に心からお好きなのでしょう、純粋に好きなのでしょう?私は確信したのです。学芸員になりたかったんだとはにかむあなたを見てようやく腑に落ちたのです。「やはりそれは、あなたの夢だっただけで、私が好きだったわけではなかったのだ」と、心底安堵したのです。

私には何もありませんでした。知的好奇心があるわけでもなかった。窮地に追い込まれていただけだった。逃げ道をひたすら作っていたかっただけで、そこに純粋な心など塵ほどもなく、ただ、何かからか逃げたかっただけでした。

美術館に足を運ぶのが億劫だったことにも気づかず、芸術に心からの熱意を向けていたわけでもなく、いいえ、それだけに限った話ではありません。何事にも当てはまります。何事にも。熱意なんてなかった、好きの気持ちなんて分からない、どれも全部どうでも良くなる、あなたの気持ちがこれっぽっちも分からない。ただあるのは、焦りと不安と恐怖。正しくできなければならないという恐ろしさだけ。そして全てを投げ捨てる、だから何も残らない、空虚な

嫌?嫌じゃない、だから困ってるんだ。空っぽ人間で良かったと安堵した。あなたのような志が無い人間で心底良かったと。だってあなたのことがずっと苦手だったから。


バターナイフを持つ少女を美しいと思った。きっと共感できたからだ。空虚な人間になったことに安堵して、他人の思考から引き剥がされるようになって、ようやく私は、あの少女と向き合えるのだ。私もようやくバターナイフを持って、やわらかな光に包まれながら、くたびれしおれたバケットを見詰められるのだ。

Next