よあけ。

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9/15/2024, 4:14:22 AM

︰命が燃え尽きるまで

楽しかった日の夜景は一段ときれいに思えるし、きっと今日の思い出は近い将来寂しい出来事として記憶されるんだろうし、そう思うと今の楽しいって気持ちも少しだけ愛おしいと思える。

体をじんわりと痺れさせる穏やかな痛み。幸せの痛みってものだと思う。世の中何でも等価交換だから、幸せを味わうと痛く悲しくなるものなのだ。

締め上げて食い込んだところから「楽しい」とか「嬉しい」とか「幸せ」が滲み出てくる。痛めつけて傷つかないと自覚できない。認められない。幸せも凶器みたいなもの。刺して血が出てきてから痛いと自覚できるようなもの。いたんでからでなければ幸せかどうか気にもしない。

ネガティブな感情が良くないことでポジティブな感情が良いことなんてのはイメージで、どちらの感情も良いもんじゃないし、素敵なものだと思う。どっちでも痛いんだから。

破裂するまで締め上げて、バチンと弾けさせて、全部ぶちまけてしまった方が楽だろうか。全部溶かしてしまった方が楽だろうか。

心が足りない。命がきっと足りない。

感情を消費して命を燃やしているなら、感情によって命が消耗していくなら、足りない。

命が燃え尽きる瞬間まで感じ続けなければならない。いくらあったってずっと痛い。

痛い。どんな感情でも痛い。幸せな感情のほうがずっとずっと鋭利で痛い。心が足りない。

いっそ早く素敵な思い出に変わってしまいますように。痛みも葛藤も苦しさも忘れて単なる「思い出」としてふんわりとした「寂しい」に美化されてしまいますように。たかが過去の一つになってしまいますように。

9/13/2024, 8:05:48 PM

︰夜明け前

空を眺めていると少しだけ身軽になれる。

ここのところ同じことを考えている。同じことに囚われているのはもう随分昔からか。

囚われているから同じことを考えているのだ。「そればっかり」って、そりゃあそうだよ。

紫と藍が混ざり合って、地平線あたりは細く青白い。これから空は徐々に色を薄めていく。

ただぼーっと、ゆらゆら薄明を眺める。

復讐心とか、そんなのも、伸びて薄れていくようなもんかな。ヤケクソになって、拗ねて、縮れて固まったこれも薄く伸ばされて。

「あいつのせいじゃん」と呟いてみて、弁解するように「他責はだめよな」とこぼれ落ちる。

まだ暗い空の色に乗せて、なんとなく広がってく心ってやつを想像する。

いつか白む空のように明るくなるだろうか。

「心の中で他責するくらいいいかなぁ」なんて、包み込んでくれる球体に向けて。

「他責はだめよなって思えてる時点で立派じゃないか。他責して全部人のせいだって暴れててもおかしくなかったろ」

口から出た言葉の煙が細く長く広がる雲に変わってく。

「責めてもいーよなぁ。他人のことも、自分のことも」

人を責めてはならない、他者も自己も責めてはならない。そういう決めつけ、痛くて辛かったんだよなぁ。

「他人のこと責めたいなら責めてもいーよ。自分のこと、責めたいなら責めてもいーよ」

誰にもそれは咎められない、当事者以外が口を出せることではない。なら、事象をどう扱うのかは己が決めることだ。

風が優しい。柔らかい風が体をほどいていく。

細い糸になってくみたいだ。

自分が弱かったから、弱いから。強くなりたかった、なれなかった。

責めたいなら自分のこと責めてもいいんだ。いいんだ。誰もこの気持ちを咎めることはできない。そんな権限なかったんだよ。

だってみんなただの他人だしなぁ。

自他境界ゆるゆる人間があれこれ口出ししてきてたんだよ。お前は私じゃないし、私はお前じゃない。こんな当たり前も理解できないほど脳みそ変になってたんだなぁ。

責められたら、責めてたら、ちょっとホッとするんだ。あの人達は悪くなくて、自分が弱かったからだよねって思える。それこそ現実を見ず逃げてしまえた。

私の痛みは私だけの痛みで、あの人達の痛みはあの人達の痛みだ。別物で、交わることがあったとしても同じではない。

「私は貴方じゃないから、アンタのことよく分かんねぇや。アンタも、私のこと」

理解なんてのはなくて、そこにはただ解釈があるだけ。憶測と同情と手探りで相手を理解しようとしているだけの決めつけ、ただの解釈。

誰も悪くなかったってことにしたら楽なんだ。誰のことも咎めなくていいってことは、誰のことも憎まなくていいってことになるはずだと。

ああ、でも、悲しいな。

涙、しょっぱい。

早く太陽が見たいな。

『むずかあし』

――――あ

救われてくれるのかな。大丈夫なのかな。「難しいね、分かんない」って気恥ずかしそうに照れながら笑ってた。君は救われるのかな。

「むずかあし」

……難しいね、考えるって、難しいよね。

悲しいな、でも好きだよ。夜明けだって悲しいど、でも好きだよ。朝は怖いけど、昼は嫌だけど、夜明けが来てほしいと思うよ。

寂しいね。本当は身を寄せ合っていたかったのかな。

どこまでも、どこまでも空は広い。空はどこまでも、いつまでも、綺麗だ。

空に包まれている間はきっと正気でいられる。

夜ほど鬱屈していない、夜ほど孤独を誘う静けさじゃない、夜明け前の静寂は、包み込んで傍にいてくれてる。

きっとちっぽけな人間のことなんて気にしちゃいないんだろうけど。

夜明け前の、これから温かくなる前の冷たさを、まだ好きでいられる。

9/12/2024, 12:30:39 PM

︰本気の恋

いつまでも元気でいてね。いつまでもどこまでも明るく笑っていてね。溌剌としたあなたの事をきっとこの先も思い出す。アイドルという存在に惹かれたことも、ペンライトを握ったことも、色に染められたのも、全部あなたが初めてだったの。

煌めくあなたが大好きだった。あたしの初恋、あたしのはじめて。かわいいかわいいビビッドピンク。弾けるような笑顔だけれど、長い黒髪が大人っぽくて、ああでも喋り方は無邪気で愛らしい。リアルタイムで成長を追えることがあんなにワクワクすることだったなんて、あたし本当にあなたに出会えていろんなことを知っちゃった。

あたしはあなたのただのファン。あなたに光を貰った一人。あたしあの夏夜、あなたの輝きに魅せられちゃった。ぬるい空気から逃げ出して、冷房の効いた部屋で一人、画面の中でチカチカ光るあなたを見たの。なんてまばゆいびびっどぴんく! 普段何気なく見てスルーしてた、今まで気にも留めてなかった。たったあのときあのウィンクで、まんまとキラキラ瞬いちゃった。

かわいい、かわいい……かわいい!

あなたの歌を何度も聴いた。映像だって何度だって見返した。あなたの声もまなこも振る舞いも、何もかもが素敵に見えた。かわいいかわいいビビッドピンク、もう一度笑ってウィンク飛ばして! 輝くピンクのペンライト、握りしめたこと忘れない!

9/11/2024, 8:30:39 PM

︰カレンダー

自罰してたら取り敢えず怒られない
「僕が悪かった」
思ってないこと呟いて責めを避ける

いやいやほんと困っちゃうよね
「クズ野郎だから」
言ってるうちに本当のクズになっていく

卑下して皮肉ってれば楽々飄々
プライドが高笑いしてんだ
「僕は出来損ないなので僕がそんなことできるわけないでしょう!よって僕は無実!!」

クソボケバカカスゴミって暴言吐いてりゃスッキリすんだって
そんなんで生きてて楽しーの?
うるせえ

災いを呼ぶ口。 どーしようもないね

「恵まれてるやつはいーよな」
「別に恨んじゃいないさ」
「これでも好きなんだぜ」
「慰めなんて勘弁してくれよ!」
「おいおいお前ら僕より優秀なんだろ!なのに分からねーとかダッセェな!」

嫌味な態度劣等感より。 どーしようもないね

日めくりカレンダー毎日破り捨て
道踏み外し階段踏み外し
日は進むし日は昇るけど僕は真っ逆さまに転がり落ちる

『本当は自分のせいじゃない』
『本当はあいつらのせいなのに』

卑下と自虐と自罰のフリしてるだけ
本心引き裂いて覗けばホラ真っ“白”
さっさとばれてら

どーしようもないね!

どーもしてない。

9/6/2024, 9:16:54 PM

︰時を告げる

意味とか理由とか探して、それ、見つかったら幸せになれる? 人生の意味とか、自分の価値とか、そういうのあったら生きやすくなれる? やる気出てくる? 本当にそれさえ見つかれば生きていけるの? 無い物ねだりばっかりよね。中途半端考えられる人の脳を持ってるから、中途半端辛いのね。そんなの見つけたところで臭いものに蓋してるだけなの。ずぅっと苦しいまま。

どうして生きているのかなんて二の次なのよ。そんなことを考えているのは生きていて苦しいから。ならその根源を探して潰せばいい。生きる意味があったって辛いものは辛いのだから、重要なのは生きる意味じゃなくて、ストレスを取り除くことやストレスに対処するってことなの。

ああ、そう、正しい対処法なんて、そんなの誰も教えてくれないわ。

ムカムカするの。人を見るとどうにもこうにもソワソワして、イライラしだして、とりあえず何か引っ掻いてないと落ち着かない。ギャハハって下品な笑い声も、パチンパチンシンバル持ったお猿さんのぬいぐるみみたいに手を叩いてるのも、恨み辛み愚痴ってるのも、理解できないからって攻撃してるのも、全部うるさいの。

人間邪魔だし、そこの一部である自分も嫌。イライラムカムカガリガリ。そんなことしてたら皮膚がボロボロになっちゃって痛いから、脳内で人を刺すイメージをするの。思う存分刺して刺して刺して刺してあー! スッキリ!

何度も刺したらね、そしたら人間だった何かになるの。脂肪も筋肉も内臓も混ざりあった細切れの肉と骨だけになる。人間もね、ただの肉の塊なのよ。ただの肉の塊と骨を高温で焼き尽くしてしまえば何も残らない。中身なんて無くなる。

「あ、人間もただのお肉なんだ」。なぜだかとっても心が洗われたような気がしたの。ただのお肉なら、そんなに気にしなくていいやって思ったの。

ただのお肉なんだ、ただの肉、ただの人の肉! どうでもいいや!

ただの肉ならどうでもよくなれたの。他人も、自分も。

だからね、人肉さん、好きなようにすればいいと思うの。

お前はどうせ排便するのに美味しい食べ物がいいって料理して食べてるものね。栄養にはなるよ。でも料理そのものはなくなっちゃう。それとおんなじだと思う。どうせなくなっちゃうの。

偉業でも成し遂げない限り後世の人に認識されることはないし、一人でぽっくり死んでしまったら誰からも忘れられる。どうせ何も残らないの。

だからね、人肉さん、好きに笑って、好きに怒って、好きにほざいて生きていればいいと思うの。み〜んな肉の塊よ。ただの肉塊。精肉店で販売すらしてもらえない肉の塊。人間って食べたらどんな味がすると思う? 食べる部分があんまり多くないから、齧り付くのが難しかったり。人間も鶏肉と同じように骨とくっついてる部分が一番美味し? あんまり美味しくない。でもとびきり美味しいから精肉店に並ばせてもらえないってことにしちゃおう。SSRのお肉! 共食いしたら病気になるから食べちゃ駄目ってだけだと思うけど。

「ただの人肉がなんかほざいてる」

人がただの肉塊に思えたとき、とても息がしやすくなった。どうでもいい存在、喚いてようと笑ってようと、お肉がなんか喋ってるって思ったらちょっとファンシーだった。スーパーに並ぶ肉が何か言ったとしても気にも留めないだろうし。だってただの肉だもの。

スーパーに並ぶ肉を見てひとつひとつその動物たちに思いを馳せたりする? ひとつ、ひとつ、その動物はどんな生き方をして、どんなふうに感じて、どんなふうな思いを抱いてここに並んでるんだろう、って。やる人に「人を肉だと思え」なんて強いるのは無茶な話かな。

肉に対して食べ物としか認識していないの。特に何も感じず肉のパックを手にとって「どれが安いか」「どれが美味しそうか」を気にするだけ。だからかな、人のことをあっさり「ただの肉だ」と思えたの。同じだと思った。人間もただの肉とおんなじよ。ならここにパックされてるお肉たち同様、いちいち気にしなくていいやって思った。ただの肉が動いて喋って生きてるだけならあんまり怖くなかった。

いっそ可愛いと思えた。一生懸命お肉が何か叫んでるんだって、お肉、一生懸命生きてるんだって。有難いことね、ちゃんと「いただきます」って言うように、ちゃんと挨拶しないとね。

倫理観なんて人によって変わるものなのに、それをベースに話そうとするなんて「変なの」って思わない? 曖昧に存在してる「倫理観」「倫理的に」ってやつで話が進んでく。きっちり倫理観の磨り合わせってやつをしたらね、揉め事が起きちゃうんだって。本当かな。

人もお肉。だから怖くない。己も肉の塊。だからなんだっていいんだ。

どうせ肉の塊なんだ。憎たらしいあの人も、消えてほしいあの人も、みんなただの肉。大事に思っているあの人も、仲良くしてるあの人も、みんなただの肉。己もただの肉。人って呼ばれてるだけの肉の塊。

ねえ人肉さん、少し息がしやすくなったって思わない? 人間でいると疲れちゃうものね。たまにはただの肉の塊になればいいのよ。ただの人肉。燃やしたらなんにも残らない。

人肉さん、人間みんな肉の塊なんだから、どんなこと思おうと、どんなこと言われようと、どんな行いをしようと、なんでもいいのよ。肉の塊が服着て歩いてるだけなんだから。人肉がなんかほざいてるだけなんだから。途端に全部、どうでもよくなれる。焼いてこんがり美味しい肉にはならないけど、今日もお肉、げんきそうだなあ。

ただの肉の塊がたまたま電気信号で動いてるだけで、全部己の脳が下した判断に従っているだけ。

ねえ人肉さん、貴方も燃やせばなくなるんだから、気楽に生きていいのよ。ただの肉が、何か口にしたところで、どうでもいいもの。人肉さん、なんでもいいの。なんでもいいなら、気楽でしょ。気楽に生きてね、人肉さん。

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