6/30/2025, 8:24:33 AM
青く、深く、
世界が眠る場所で
ぼくは君を、見つけた。
波は声をなくし
光は色を忘れて
それでも君の瞳だけが
青の奥に、揺れていた。
誰も触れられない深さで
誰も届かない静けさで
ふたりだけ、息をする。
言葉は落ちて、泡になる。
想いは沈んで、歌になる。
君が手をのばすたびに
ぼくの鼓動は
遠い光のように
揺れて消える。
青く、深く、
それは
さよならさえも
響かない場所。
6/29/2025, 7:54:56 AM
六月の終わり、夕暮れ時の風が少しだけ湿り気を帯びていた。
公園のベンチに座り、氷の溶けかけたアイスティーを手に、ぼんやりと空を見上げた。
どこかでセミが鳴いた気がした。けれど、それは気のせいかもしれない。
まだ夏には早い。でも、確かに何かが変わり始めている。
隣の席に、去年の夏に亡くなった祖母の面影をふと思い出した。
「この風が吹くとね、梅雨が終わるんだよ」
毎年そんなことを言っていた祖母の声が、風に混じって聞こえた気がした。
スマホの画面には、友人たちの楽しげな予定が並ぶ。
海、祭り、花火。みんなが待ちわびる夏。
けれど紗月にとって、夏は少し寂しい季節になった。
それでも 風の中に、あの人の記憶がまだ生きている気がして、そっと目を閉じた。
草の匂い、遠くで聞こえる子どもたちの笑い声、どこからか漂う線香花火のような甘い香り。
ああ、夏が来る。
やさしく、静かに、それはやってくる。
そしてまた、誰かの記憶と、新しい時間を連れてくるのだ。