『もがく』
空は毎日違う。空だけじゃない、同じ日なんて一生無いのだ。
私たちは、日々を必死に生きて、もがいて
息を吸い込んで吐く暇も無いくらい必死で
そうして、やっと落ち着いたときに空をふと見れば、優しく見守ってくれている気がするのだ。
いつだって空は、頑張る私たちをずっと見てくれている。
お題:《空を見上げて心に浮かんだこと》
『ある終わり』
私には7年付き合って、今年で2年同棲している彼氏が居る。とても優しくて、私の心配ばかりしている人だ。
仕事帰りはどこにも寄らずに帰ってくるし、なんでもない日に突然、プレゼントをしたりしてくれる。でも最近、昔より少しだけ帰りが遅くなることが多くなった。
今日も今日とてメールに
《今日も少しだけ残業してから帰るね!
待っててね!》
と来ている。昔は私に早く会いたいから!と言って残業もしないで帰って来ていたが、最近は残業続きだ。
でも浮気しているとは思えなかった。
ちゃんと仕事をしているのだろうと思った。
そんな日が続いたある日のこと、
彼氏が
「話をしたい」
と言う。少しだけ嫌な予感がした。
「ごめんね休んでたのに。」
「ううん、平気。それでなに?話したいことって。」
「僕、この関係をもう、終わりにしたい。」
…別れ話だ。なんで?どうして?
でも次の瞬間、そうでないことは確定した。
「………僕と結婚して欲しい。好きです。」
お題:《終わりにしよう》
『社会』
人は一人では生きていけないらしい。
そんなの分かってる。
食材は誰が取ってきて料理して、服は誰が作って原料を取って、家は誰が建てて建材を用意するのかを考えたら、1人で生きるなんてとても難しい。
でも、なにも考えてない先生が言う、
「皆で手を取り合って、誰とでも仲良く」
って言葉は大嫌いだ。
確かに、手を取り合わなければ生きていけないかもしれない。でも、私たちは無理して手を取り合う必要は無いと思うのだ。
どうして苦手な人と一緒に居なくちゃいけないんだろう。わざわざ、神経すり減らしてご機嫌伺って。
仲良くしないと先生にはこちら側が悪者に見える。
私たちは、手を取り合う人間を選ぶことが出来るはずだ。仕事はどうしても関わらなくてはならないときもある。そういうときは手を取り合わなければいけない。
でも、それだって選べる。
お題:《手を取り合って》
『私の努力』
私はいつだって1番だった。
勉強も、運動も、容姿も、性格も。
いつだって褒められてきた。
勉強も必死にやった。
難関大学に合格出来たくらいよ。
天才じゃないから、他の人よりたくさん勉強した。
運動だってたくさん頑張った。
バスケもバレーも、女子のなかで1番上手だった。
運動だって、元は苦手だったけれど小学生の頃から放課後ほとんど毎日ランニングして基礎体力をつけた。
容姿だって小さな頃から恵まれて、お母さんに似て可愛い子だって言われ続けてきた。
実際、何人に告白されたか覚えていられないほどは告白された。
でも天然のままじゃない。美容に気を遣った。毎日筋トレをした。自分が可愛くなるための努力を怠ったりしなかった。
私のこの黒い感情を表に出さず、笑顔で
誰に対しても変わらぬ態度だった。
色んな人から性格もよくて顔も良い人に初めて出会ったと言われた。
でも私は、性格だけはダメだった。
取り繕うことは上手く出来ても、性格だけは嘘をついている。私の中の黒い感情は、嫉妬、羨望、優劣感、劣等感で渦巻いていた。
小さな頃からたくさん褒められた。
努力をしてきた。だから、努力をしない人が嫌いだった。試してみようともしないでいる人がどうしようもなく苦手だった。
なのに、今ここで、私が所属する会社で1番愛されているのはどんくさくて化粧っけもあんまりない少しぽよんとした可愛らしい女の子だ。
本当に性格が良いとはこの子のようなことを言うのだと劣等感に苛まれる。
私の性格が本当は表に出ているようなものではないことは私が1番よく知っている。本音と建前も見分けがつく。私がそうだから。
でもこの子は、全て本心から出る言葉。そしてその言葉がとても綺麗だ。
だから私は、ただ嫉妬を、羨みを表に出さないように必死になるのだ。
なんて話を、あるときその子にしたら
「そう思える人は、本当にとても優しいものなんですよ。それに勉強も運動も、見た目だってこんなに努力しているのがそもそも凄いんですよ。
…あと、本当に性格が悪い人は心のなかで思っていることはおろか、普段の言動もとげとげしいの。でも貴方はとても優しくて、とげとげしさなんて感じない。本当に優しいんですよ」
そう言ってくれた。
お題:《優劣感、劣等感》
『通知』
《たすけて》
私のもとへそう通知が来たのは、街も静まり返る午前2時のことだった。
(………不気味だわ)
午前2時ということもあり、少し怖くなる。
LINEなのだから差出人は分かるはずなのに、名前は空白だった。
していた作業をやめてLINEを開く。
トーク履歴までは消せまい。
「……?」
そこにあるのは、ただ《たすけて》の4文字のみだった。以前のトーク履歴はない。新たに追加した友達でもない。友達になっていない人でもない。
改めて怖くなり急いでLINEを閉じたが既読の文字はついたままだ。読んだことは相手に知られる。
そしてすぐ、また
《たすけて》
《さがして》
《おねがい》
《みつけて》
連続で4つもメッセージが来るものだから心臓はばくばくした。
これを送っている誰かは誰なのだろう。
どこかにいるその誰かは、見つけてほしいと言っている。これがもし、私の思う通りなら白骨が見つかってもおかしくはない。
これがもし、私の知っている人間だったらいたずらか、本当に危険な状態のどちらかだ。
どちらにせよ私は助けることは出来ない。
私はそのまま、そのLINEを無視することにした。
お題:《1件のLINE》