アリス

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『私の努力』


私はいつだって1番だった。
勉強も、運動も、容姿も、性格も。

いつだって褒められてきた。
勉強も必死にやった。
難関大学に合格出来たくらいよ。
天才じゃないから、他の人よりたくさん勉強した。

運動だってたくさん頑張った。
バスケもバレーも、女子のなかで1番上手だった。
運動だって、元は苦手だったけれど小学生の頃から放課後ほとんど毎日ランニングして基礎体力をつけた。

容姿だって小さな頃から恵まれて、お母さんに似て可愛い子だって言われ続けてきた。
実際、何人に告白されたか覚えていられないほどは告白された。

でも天然のままじゃない。美容に気を遣った。毎日筋トレをした。自分が可愛くなるための努力を怠ったりしなかった。


私のこの黒い感情を表に出さず、笑顔で
誰に対しても変わらぬ態度だった。
色んな人から性格もよくて顔も良い人に初めて出会ったと言われた。


でも私は、性格だけはダメだった。
取り繕うことは上手く出来ても、性格だけは嘘をついている。私の中の黒い感情は、嫉妬、羨望、優劣感、劣等感で渦巻いていた。

小さな頃からたくさん褒められた。
努力をしてきた。だから、努力をしない人が嫌いだった。試してみようともしないでいる人がどうしようもなく苦手だった。

なのに、今ここで、私が所属する会社で1番愛されているのはどんくさくて化粧っけもあんまりない少しぽよんとした可愛らしい女の子だ。

本当に性格が良いとはこの子のようなことを言うのだと劣等感に苛まれる。
私の性格が本当は表に出ているようなものではないことは私が1番よく知っている。本音と建前も見分けがつく。私がそうだから。

でもこの子は、全て本心から出る言葉。そしてその言葉がとても綺麗だ。

だから私は、ただ嫉妬を、羨みを表に出さないように必死になるのだ。



なんて話を、あるときその子にしたら

「そう思える人は、本当にとても優しいものなんですよ。それに勉強も運動も、見た目だってこんなに努力しているのがそもそも凄いんですよ。
…あと、本当に性格が悪い人は心のなかで思っていることはおろか、普段の言動もとげとげしいの。でも貴方はとても優しくて、とげとげしさなんて感じない。本当に優しいんですよ」

そう言ってくれた。


お題:《優劣感、劣等感》

7/13/2023, 2:45:11 PM