『通知』
《たすけて》
私のもとへそう通知が来たのは、街も静まり返る午前2時のことだった。
(………不気味だわ)
午前2時ということもあり、少し怖くなる。
LINEなのだから差出人は分かるはずなのに、名前は空白だった。
していた作業をやめてLINEを開く。
トーク履歴までは消せまい。
「……?」
そこにあるのは、ただ《たすけて》の4文字のみだった。以前のトーク履歴はない。新たに追加した友達でもない。友達になっていない人でもない。
改めて怖くなり急いでLINEを閉じたが既読の文字はついたままだ。読んだことは相手に知られる。
そしてすぐ、また
《たすけて》
《さがして》
《おねがい》
《みつけて》
連続で4つもメッセージが来るものだから心臓はばくばくした。
これを送っている誰かは誰なのだろう。
どこかにいるその誰かは、見つけてほしいと言っている。これがもし、私の思う通りなら白骨が見つかってもおかしくはない。
これがもし、私の知っている人間だったらいたずらか、本当に危険な状態のどちらかだ。
どちらにせよ私は助けることは出来ない。
私はそのまま、そのLINEを無視することにした。
お題:《1件のLINE》
『脳内』
目が覚めると、そこは知らない世界。
…なんてことはなく、ただの病院だった。
それにしても私、なんで病院にいるんだろう。
ぼんやりとしていた視界は段々と鮮明になり、
改めてやはりここは病院なのだと確信した。
そうして、側に人が居ることに気が付いた。
誰だろう、と思ったが私の側に居てくれる人間は限られている。
家族…両親と姉か、恋人のどちらかだ。
「………(ちかげ)」
そう声を発したつもりだったが声はでなかった。
どのくらい眠っていたのか皆目検討もつかない。
とにかく目が覚めたら喉がからからだし、体は重いしなんか痛いし。
隣に居るのはたぶん、恋人の千景だ。
眠っている気がするけど。
身体中が重くて動かない。いったい私は何をしたんだ。痛いなぁ…なんて呑気に考えながら動かそうと試行錯誤していると、千景がガバッと起きた。
「桜?!」
やっぱり千景だった。何故だか久しぶりに感じる千景の顔はやつれて、泣き跡がたくさんついていた。
私に何かあってからずっと泣いてたのかな。
そう思うと凄く申し訳なくなった。
自惚れとは思えないくらい、千景は私のことが好きだと思うから、心配になった。
とにかく看護師さんやらを呼んで欲しい。と思いながら千景を見ていると、伝わったのか、看護師さんを慌てて呼びに行った。
まだ身体が動かないので検査などは出来ないらしいが思考回路などはよく動いている。
すぐに私の家族も来てくれて、お姉ちゃんなんてぼろぼろ泣いてた。私そんなひどいのかな。今。
まっったく何があったか覚えていないから自分がどんな状況なのか理解できていなかった。
思考は正常なので説明が欲しい。
腕は動かないが首が動くことに気が付いたのでどうにか意志疎通が取れないか試してみた。
「…?なに?」
口パクで伝わらないかな。顔は痛くないし。
「………?
あ、もしかして状況を説明して欲しいの?」
さすが千景。普段から意志疎通してるだけある。
コクリと頷けたのかは分からないが、そのまま千景が話し始めたので頷けたのだろう。
「桜ね、………1ヶ月前に車に轢かれて」
1ヶ月前?!?!しかも轢かれたの?!
なんで顔が痛くないのか逆に不思議だ。
「道路に飛び出した子供助けようとして代わりに轢かれた。…説明して欲しいってことは覚えてないのかもしれないけど。その子は無事に生きてるよ。
ちなみに車の人も、子供のお母さんもお見舞いに来てくれてたよ。轢かれて飛ばされたからか頭を打っちゃったんだよね。…本当にもう、凄く心配したんだよ。」
ぼろぼろ涙を流す千景。
私の脳内はまるで事故に遭ったとは思えないほど能天気だけど、見た目は酷いのだろう。
お題:《目が覚めると》
『モーニングルーティーン』
朝起きたら、スマホを見て連絡を確認する。
次に、顔を洗ってお水を飲みに行く。
私のかわいいかわいい犬にかまってから
お洋服に着替えて見た目を整えて歯を磨く。
これが私の当たり前。
お題:《私の当たり前》
『下界』
下界を見ると点々と光が続いている。
人間の街だ。
いつも夜遅くまで明かりがついている。
人間はどうやら働くのが好きらしい。
…どこにも光がない場所もあるが。
このニホンという国のトーキョーというところは朝まで光が絶えたことがない。いつも目まぐるしく人間が動いている。そしてもちろん、朝も早い。
「…そんなに動いたら死ぬぞ」
私は天界から人間を見守る天使だ。
人間とやらは良く働きすぎだ。
お題:《街の明かり》
『願い事』
七夕は、年に一度だけ織姫と彦星が会える日だ。
この2人の恋愛はいいなと思う。
お互いがお互いを好きで、一年待っている。
ここまでとはいかずとも、私にもそんな人ができたらいいな。
短冊にはなんて願い事を書こう。
お星さまへの願い事。
『いつか、私にも大切な人が出来ますように』
って書こうかな。
お題:《七夕》