『memories』
私、あなたがいたから頑張れたの。
あなたがいたから、今日まで生きてこられたの。
あなたがいたから、恋って素敵なものなんだって思えたの。
あなたがいたから、この世界が彩りに溢れてることに気が付けたの。
私が幸せだったのは、全部あなたがいたからなの。
それなのに、その幸せを教えてくれたあなたは、
私を遺して死んじゃった。
あなたがいないとなにもうつらない。
色も見えない。
あなたがいないと、頑張れない。生きられない。
あなたがいないと私、悲しくて辛くて、苦しくて毎晩泣いてしまうの。
でも、あなたとの思い出はとても幸せで、
本当に凄く凄く幸せで、思い出したいの。
あなたのこと、ずっと考えていたいの。
死にたくなる。だってあなたがいないから。
でも死んでしまったら、
貴方を思い出す私がいなくなってしまう。
いつか、漫画のなかで聞いた台詞。
それが頭をぐるぐるしているの。
貴方を思い出したい。
だから私は生きなくてはいけないの。
………でも、叶うことなら
本当はあなたとずっと生きていたかった。
お題:《あなたがいたから》
『先輩』
昔は良く、好きな人がバレたら
黒板に傘と名前を書かれていじられたものだ。
私と隣の傘に入るなんて相手に迷惑だろうに。
なんて思っていた小学生時代。
そんな時代は乗り越えて今は高校生。
何故か分からない。ほんとは分かる。
私は今、好きな人と相合傘をしている。
なんで?いや、私が勇気を出したからだけど。
遡ること数十分。
下校の時間になり昇降口へ行くと雨が降っていた。
元気の良い人間なら傘もささずに走って帰れるだろう、くらいの雨だ。
私はいつも準備万端なので折り畳み傘も手持ち傘も持っている。
そんなとき、私が思いを寄せている大人しくて優しい、笑った顔がとても可愛らしい先輩が困った顔をしていた。
これはチャンスだ。一緒の傘に入ることは出来ずとも傘さえ渡すことが出来たら!
そう思ってからの行動は早かった。
「あ、あの!!!こ、こ、これ!」
「……え、あ……ありがとうございます。
傘無くて困り果ててたとこでした。でも、君は?」
「私は折り畳み傘あるので!!」
「…せっかくだから、一緒に帰りません?」
「…へ?!」
「僕、いつか君と話してみたかったから。
狭くなっちゃうけど君さえ良ければ」
「も、もちろんです!!!!」
で、今に至るわけだ。
私と話してみたかったってなに。
私のこと知ってたってこと?
いやいやいや!こんな冴えない女のことを?
隣に居る先輩の体温が触れていないのに伝わる。
心臓がばくばく言い過ぎて確実に寿命は縮まっていると思う。
なんて思いながら先輩の方を見ると目があってしまった。
「ぴゃ」
情けなくも声が出てしまい焦る。
なんの反応もないのでもう一度見てみると、先輩の顔はりんごみたいに赤かった。
え、なんで??
「せ、先輩?」
「………あ、いや、………ごめん。
目があっちゃったからちょっとうれしくて」
「……………へ」
「あー!!!いや!うそ!じゃないけど!
いや、あの、えっと…………」
「そ、その反応は勘違い、しちゃいますけど…」
私がそう言うと先輩は、はー、と息を吐いてまた吸った。
「僕、ずっと君のことが気になってたんだ。
中学一緒だったんだよ。知ってた?」
「え、そうだったんですか?!」
中学はまだ先輩の存在を確認してなかった。
「うん。中学のときから気になってて、入学式で君を見たとき運命かと思ったんだ。」
先輩は傘をおろした。
いつの間にか雨は止んでいて、
空には綺麗な虹が掛かっていた。
お題:《相合傘》
『夢』
落下する夢を見た。
夢占いによれば私自身が落ちる夢は精神の不安定らしい。
最近なにか精神が不安定になるようなことがあったかしらと現実の記憶を呼び覚ましてみたけど見当たらない。
知らず知らずのうちにストレスを抱えてたりするのかしら。
とりあえず良く食べて良く寝るのが一番だなあと思った私だった。
お題:《落下》
『あらすじ』
「僕は未来からやってきた。」
そう言うのは私の大切な人だった。
私はついさっき、この人に告白をしたのだ。
「…………え?」
困惑する私に、君は悲しそうに笑った。
「僕は君のことが大好きだけど、
…未来から来た人間は、過去の人間と付き合ってはならない決まりがある。」
お題:《未来》
『海』
蝉が煩く鳴き、雲は白く、青空が広がっていた
あの日、君は突然姿を消した。
街の人に聞いても誰も見ていないし覚えていなかった。とても奇妙だったし、君が居た痕跡すら無くてまるでまやかしに掛かっていたのかと思うほどで。
でも確かに君は居たし、
僕はこの手で君の手を引いた。
情報もないまま1年が過ぎた。
去年と同じように蝉が煩く鳴き、雲は白く、青空が広がっていた。
僕は君を探す気分転換に海へ来ていた。
目の前にはとてもとても綺麗な青い海。
その砂浜に、ただ一人の少女が佇んでいた。
君だ、と直感がそう言った。
僕は必死になって砂を蹴った。
やっと見つけた。
「レイ!!!!」
僕の声に反応して君が振り向く。
そして、ふんわりと笑った。
「…………久しぶりだね」
第一声がそれだった。久しぶりだね、じゃないよ。こっちがどれだけ心配したか。もう二度と会えないかと思った。言いたいことを全部のみ込んで、
「うん、久しぶり」
と返した。
そして聞きたかったことを聞いた。
「街の人たち、君が消えた次の日から君そのものの記憶がなかった。君はいったい何者なの?どうして僕だけが覚えてるの?」
君は少し困った風に笑って
「…んー、海の人間?だからかな。記憶が操れるの。君が私のことを覚えてるのは、私が忘れて欲しくなかっただけ。
…まぁ、だからこそ君には辛い思いをさせたかもしれないけど」
「ほんとだよ。1年も探したんだよ。
居なくなるにしても突然、なんもなしに居なくならないでよ」
「次からは気を付ける。」
「そうして。ところで何してたの?今まで」
「海の世界に帰ってた。」
お題:《1年前》