『先輩』
昔は良く、好きな人がバレたら
黒板に傘と名前を書かれていじられたものだ。
私と隣の傘に入るなんて相手に迷惑だろうに。
なんて思っていた小学生時代。
そんな時代は乗り越えて今は高校生。
何故か分からない。ほんとは分かる。
私は今、好きな人と相合傘をしている。
なんで?いや、私が勇気を出したからだけど。
遡ること数十分。
下校の時間になり昇降口へ行くと雨が降っていた。
元気の良い人間なら傘もささずに走って帰れるだろう、くらいの雨だ。
私はいつも準備万端なので折り畳み傘も手持ち傘も持っている。
そんなとき、私が思いを寄せている大人しくて優しい、笑った顔がとても可愛らしい先輩が困った顔をしていた。
これはチャンスだ。一緒の傘に入ることは出来ずとも傘さえ渡すことが出来たら!
そう思ってからの行動は早かった。
「あ、あの!!!こ、こ、これ!」
「……え、あ……ありがとうございます。
傘無くて困り果ててたとこでした。でも、君は?」
「私は折り畳み傘あるので!!」
「…せっかくだから、一緒に帰りません?」
「…へ?!」
「僕、いつか君と話してみたかったから。
狭くなっちゃうけど君さえ良ければ」
「も、もちろんです!!!!」
で、今に至るわけだ。
私と話してみたかったってなに。
私のこと知ってたってこと?
いやいやいや!こんな冴えない女のことを?
隣に居る先輩の体温が触れていないのに伝わる。
心臓がばくばく言い過ぎて確実に寿命は縮まっていると思う。
なんて思いながら先輩の方を見ると目があってしまった。
「ぴゃ」
情けなくも声が出てしまい焦る。
なんの反応もないのでもう一度見てみると、先輩の顔はりんごみたいに赤かった。
え、なんで??
「せ、先輩?」
「………あ、いや、………ごめん。
目があっちゃったからちょっとうれしくて」
「……………へ」
「あー!!!いや!うそ!じゃないけど!
いや、あの、えっと…………」
「そ、その反応は勘違い、しちゃいますけど…」
私がそう言うと先輩は、はー、と息を吐いてまた吸った。
「僕、ずっと君のことが気になってたんだ。
中学一緒だったんだよ。知ってた?」
「え、そうだったんですか?!」
中学はまだ先輩の存在を確認してなかった。
「うん。中学のときから気になってて、入学式で君を見たとき運命かと思ったんだ。」
先輩は傘をおろした。
いつの間にか雨は止んでいて、
空には綺麗な虹が掛かっていた。
お題:《相合傘》
6/19/2023, 1:06:38 PM