『私の秘密』
私には誰にも言えない秘密がある。
そう、誰にも。
私の秘密は私だけのものだから
誰にも教えたりしない。
そこの君にも。
だーれにも言えない秘密なのだから
ここには書かれてなくて当然なんじゃないかしら。
なんてね。
お題:《誰にも言えない秘密》
『まだかな』
暖かい日差し、ふわふわな部屋。
ごろごろくつろぐには申し分ないとっても落ち着く部屋。
そして僕のお気に入りのこの四角い箱。
ぴったり入るちっちゃくて狭い部屋。
いつもそこで丸まって落ち着くのが僕。
僕に餌をくれたり遊んでくれるでかいやつが居ないときは、いつもここでくつろいで待っている。
たまーに窓に行って日向ぼっこをしている。
この前のなんかいい匂いするのが食べたいなぁ。
っていうかいつもあのでかいやつは暖かくて明るくなると居なくなる。
この僕を一人にしていったい何をしているんだ。
あーあ、早く帰ってこないかなぁ。
美味しいなんかと、左右に動く楽しいやつで遊びたいなぁ。
なんて思いながら、このせまーい部屋でまたくつろぐのだ。
にゃーん。
お題:《狭い部屋》
『生涯愛した人』
私は失恋した。
好きな人がいた。
とても素敵で誰にでも優しい人だった。
もう5年くらい片想いしていたと思う。
ただ見ているだけで幸せだった。
話しかけなかったのには理由もあった。
私が臆病だった。
そして何より彼には他に好きな人がいた。
分かりやすいくらいその人のことが大好きで、
私は彼の幸せを願っていた。
どうかその人が振り向いてくれますように。
けれど、彼は失恋した。
彼の好きな人にも好きな人が居たのだった。
あれから少し泣いていたのを知っている。
声をかけることさえ出来ない臆病な自分を悔やんだ。
彼が失恋したのと同時に、私はこのままの私で良いのか悩んだ。陰から見ているだけで良いのか?
それからの私はちゃんと努力をした。
せめて彼が失恋したときに、話を聞ける友達でいられたら。側にいられたら。
そう思って、私は意を決して話しかけに行ったんだ。
「あ、あの!!」
「…あ。君は」
「わ、私と友達になってくれませんか」
「え、あ、うん。」
晴れて友達になれた。連絡先も交換できた。
たぶん、誰よりも彼の側に居ることが多くなった。
そしてまた、自分のなかで葛藤が生まれた。
私が側に居ることで結果的に彼の恋路を邪魔してしまうことになったらどうしよう。
でも私のことを好きになって欲しい。
やっと仲良くなれたのに告白をしてこの関係が壊れるのは嫌だ。
そうして選んだのはこのままの関係だった。
誰よりも近くにいる友人。
ずっと良い友達で居られていたと思う。
少し時が経って卒業が近づいてきた頃、彼の態度が少しおかしいことに気が付いた。
私が話しかけに行けば
「用事があるからごめん」
と避けられるようになった。なにか嫌われるようなことをしてしまったのかと凄く凄く落ち込んだ。
かと思えば、
「今度二人で遊びに行こう」
ととても嬉しいことを言ってくれるようになった。
嫌われているわけではないことが分かればそれでいい。私は可愛い格好をして、彼との待ち合わせ場所に向かった。
既にそこにいた彼はとてもかっこ良くて素敵で改めて心を打たれた。
「ごめん、お待たせ!」
「待ってないよ」
まるで恋人のようなやり取りに私は勝手に嬉しくなる。
映画に行って感動して。
ショッピングを楽しんで。
最後には綺麗なイルミネーションを見た。
とても幸せな時間だった。人生のなかで一番。
「今日は楽しかったね」
イルミネーションを見ながら浮かれた気分で言う私に、彼は笑って
「うん、とても楽しかった」
と言う。こんなに幸せな日は今後一生ないだろうと思うくらい幸せだった。
「ねえ」
「なに?」
彼はふと、歩みを止めて私の方を向いた。
まさか告白?!とか思いながら答える。
「僕、…君と仲良くなってから毎日が凄く楽しいんだ。あの日、恋が叶わなくて良かったとさえ思う。
君のことが好き。付き合って欲しい。」
本当に告白だった。驚きすぎて声がでなかった。
代わりに涙が溢れた。
「………っ、わ、私、
私で良いの…?」
「うん、君が良い。」
「私も、貴方のことが好きです。お願いします」
ぼろぼろ泣く私を彼は優しく抱き締めてくれた。
本当に人生で一番幸せな日だった。
それからは無事に高校を卒業して、それぞれ別の県にある大学に進んだ。関係は良好で、2ヶ月に1度は必ずお互いの県に遊びに行く。
大学2年生になってから初めて会う日、
私は彼にプロポーズされた。
あまりに突然で驚いて、付き合ったときのようにまたたくさん泣いた。
彼はあのときのようにまた優しく抱き締めてくれた。
結婚式は大学卒業してからあげることにした。
両家の挨拶も済ませたし、卒業後に一緒に住む場所をどの辺にするかも相談した。
そんな幸せ真っ只中の出来事だった。
彼が死んだ。
そんな連絡が来たのはあと少しで卒業を控えていた頃だった。
即死だった。
居眠り運転のトラックにはねられたのだ。
運命を恨んだ。
なぜ他の誰でもなく彼なのか。
一晩中泣いた。
彼のお葬式で現実を突きつけられてまたたくさん泣いた。棺の中の彼は綺麗で、眠っているだけのように思えた。
それから大学を無事卒業し、彼と挙げるはずだった結婚式をあげた。
骨になってしまった彼と。
私は失恋した。
生涯愛する人を失った。
ただ、彼は私の心のなかに生きている。
これから先も、彼以外の人を好きになることはないだろう。
お題:《失恋》
『正直な人』
正直と言えば良いのか、
はたまたバカ正直と言えば良いのか。
貴方は強く正しく、とても真っ直ぐだ。
自他ともに認める本当のバカ正直。
それゆえに言わなくて良いことを正直に言ってしまう癖がある。その癖のせいで何度か人を傷付けていることもある。
それが分かる度、本気で申し訳なさそうに謝るものだから、それがその人の性格だと理解されていることの方が多い。
見ているとハラハラして、だけど人懐っこい貴方は愛すべきバカである。
悪いことは悪い。良いことは良い。
はっきりと線引きしている貴方だからこそ、信用出来る。
そんな貴方が、私と出会ってから初めて嘘をついた。嘘だと分かる嘘だった。
「なにがあったの?」
貴方は見違えるほどに痩せこけていて、体がどこか悪いのは見て分かるほどだった。
「どうってことないよ。大したことない。
最近、食欲が湧かなくて」
今まで風邪を引いたときも正直に体がダルいと伝えてくれた貴方が、こんなにも分かりやすい嘘をつくのは初めてで、ことの深刻さに怯えた。
問い詰めると、貴方は凄く悲しそうに笑いながら
「君に心配を掛けたくなかった。
僕のことで、君が悲しくなるのは見たくなかった。でも話さないのは不誠実だった。ごめんなさい」
そう言った。
「僕はあと、余命6か月。」
正直に話した貴方の口から出た言葉は到底信じられるわけがなかった。
お題:《正直》
『梅雨が好き』
雨だ。
じめじめとした季節は、心も沈みやすい。
それでも、私は梅雨が好きだ。
この頃の雨音は私をこの世界から隔離してくれるように思えるからだった。
それから、アジサイが好きだ。
わざわざ梅雨の時期に咲くなんてひねくれものだなと思うからだ。
雨だから今日は外出しないでおこうなんていう思考回路はアジサイには存在するわけがなく、
むしろ喜んで花を咲かせている。
私は梅雨が好きだ。
雨上がりの空は虹が掛かっていて、とても幸せな気分になるからだ。
ほら、今日も。
雨上がりの空にはとっても綺麗で大きな虹が掛かるんだ。
お題:《梅雨》