中宮雷火

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3/17/2025, 10:58:09 AM

【アンフルフィルド】

⚠️流血表現あり




















⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️

肩を押さえていた手には、血がべっとりと付いていた。
銃弾が肩に当たったのだ。
血は腕を伝って、滴り落ちている。
「ここまで、か……」
身体の力が抜けていき、俺はその場に膝をついて倒れ込んだ。

俺の寿命が5分も無いことなど、分かりきっていた。
しかし、俺はまだ死ぬわけにはいかないのだ。
愛する人にこのパンを渡すまでは。
もっとお金を稼いで、2人で幸せに暮らすまでは。
こんなところで死ぬわけにはいかないのだ。

走馬灯とやらが見える。
彼女の面影が見える。
彼女の笑顔が、すぐ目の前に見える。
ごめんなぁ、君を幸せにすることは叶いそうに無いよ。

俺の瞼は、もう閉じようとしている。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「――昨夜、強盗と建造物侵入の疑いで40代の男を逮捕しました―」

3/16/2025, 2:21:16 PM

【人間香学】

「人は香りと共に歩んでいるんだよ」
誰もいない教室で、先生は私にそう言った。
「そうなんですか」
「ええ。
昔のフランスでは、お風呂に入る習慣が無かったから香水を使って体臭を消していたらしいわ。
現代はお風呂が普及しているから、そういった使い方をする機会は減ったけれど、オシャレの1つとして使われるようになったの」
「へえ」
先生の話はまだ続いた。
「匂いは記憶に残りやすいのだけど、私は『香りで何かを思い出す』という行為がとても愛おしく感じるの。
だから、私はそんな香りを作りたいと思った。
私達と密接に関わる存在、香りがそんな存在になれば良いと思ってる。
だから、私の仕事は『人間香学』なの」

先生が言うのだから、間違いない。
だって先生は、世界的に有名な香水ソムリエなのだから。

3/15/2025, 12:08:58 PM

【ミラーハウス】

「ただいま〜」
リビングに向かうと、お母さんが「おかえりなさい、琴音」と返事をしてくれた。
右を向けば、「今日は早かったな」とお父さんが言う。
「本当は大学の図書館に残って勉強しようと思ってたんだけど、疲れたからやめたんだ。
……あ、そうだ。
明日、友達連れてきてもいい?」
「うん、いいよ。楽しみに待ってるね」
私達家族は、テーブルを囲んで楽しい話を始めた。
今日も、家族団欒の時間が始まる。

―――――――――――――――――――――
「へえ〜、大学の近くに住んでるんだ。
いいなぁ」
「うん、徒歩10分のところに家があるんだ」
安西琴音は、大学のサークルで知り合った子だ。
人よりもよく笑う、ごく普通の子。
大学から家が近い子。
そして、今では私の友達だ。
「琴音って一人暮らし?」
「ううん、お父さんとお母さんと住んでる」
「そうなんだ」
家が近いだけでなく、実家暮らしだなんて、とても羨ましい。
私なんか、通学に1時間はかかるし、一人暮らしだから出費が多い。
「私、一人暮らしだからさ。
家に帰っても話聞いてくれる人がいなくて寂しいんだよね。
琴音って、家に帰ってどんな話してるの?」
「普通だよ、普通。
その日あった出来事とか、面白かったこととか話してるよ」
「いいなぁ」
「もし良かったら、今度家来る?
お父さんとお母さんいるけど」
「いいの?」
「うん!明日とかどうかな?」
「じゃあ、明日の4限終わったらお邪魔させてもらうね」

翌日。
4限が終わり、私は琴音に家を案内してもらった。
「着いたよ」
10分ほど歩いて着いたのは、一軒の古いアパートだった。
外壁は少し汚れていて、心なしか暗い。
「お父さんとお母さんと住んでいる」という言葉から一軒家を想像していたので、少しびっくりした。
「開けるね」
琴音が鍵を差し込んで、ドアを開けた。
「帰ったよー」
「お邪魔します」
しかし、返事が返ってこない。
というか、人の気配がしない。
「あれ、お出掛けしてるのかな」と思いつつも、靴を脱いだ。
ふと靴箱の上を見ると、1枚の写真が飾られていた。
お父さんとお母さん、そして琴音が写っている写真だ。

「ただいま」
琴音がリビングの扉を開くと、そこには2枚の鏡があった。
私と琴音の姿が反射して写っている。
「あ、びっくりした。なんだ、鏡か」
私がそう言うと、琴音は変な事を言い出した。
「え、何言ってんの。
こちらがお父さんで、こちらがお母さんだよ」
琴音は鏡の前に立ち、こう言った。
「おかえりなさい、琴音」、少しびっくりした。
「開けるね」
琴音が鍵を差し込んで、ドアを開けた。
「帰ったよー」
「お邪魔します」
しかし、返事が返ってこない。
というか、人の気配がしない。
「あれ、お出掛けしてるのかな」と思いつつも、靴を脱いだ。
ふと靴箱の上を見ると、1枚の写真が飾られていた。
お父さんとお母さん、そして琴音が写っている写真だ。

「ただいま」
琴音がリビングの扉を開くと、そこには2枚の鏡があった。
私と琴音の姿が反射して写っている。
「あ、びっくりした。なんだ、鏡か」
私がそう言うと、琴音は変な事を言い出した。
「え、何言ってんの。
こちらがお父さんで、こちらがお母さんだよ」
琴音は2つの鏡を指差した。
右にあるのは縁が黄色い鏡、左にあるのは縁が緑色の鏡だ。
どちらも、全身が写るスタンドミラーだ。
「えっと……どう見ても鏡にしか見えないんだけど。」
「いや、だからお父さんとお母さんだって」
私は、心がざわめくのを感じた。

琴音は鏡の前に立ち、声色を変えてゆっくりと口を動かした。
「おかえりなさい、琴音。
この子が昨日言ってたお友達?
はじめまして。
私、琴音の母です」

3/14/2025, 1:23:45 PM

【赤い糸】

死の間際に君は言った。
「生まれ変わったら、私を迎えに来て……」
そう言って、君は冷たい雪の降る日に旅立った。

時が経ち、僕にもお迎えがやって来た。
僕は一度たりとも「あの約束」を忘れたりしなかった。
生まれ変わったら、絶対に君を迎えに行く。
そう胸に誓って、僕も旅立った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
生まれ変わった僕は、21世紀の日本にいた。
愛する人はどこにいるのか分からない。
違う国、違う大陸にいるかもしれない。
だけど、それでも僕は構わなかった。

恋人は赤い糸で結ばれていて 、惹かれ合うらしい。
つまり、赤い糸が愛する人の居場所を教えてくれるということだ。
だけど、あまりに距離が離れすぎていると赤い糸が見えない。
だから、僕自身が動き回らなければいけなかった。

まずは日本を探すことにした。
東京から始まり、北は北海道、南は沖縄まで、日本中を探し回った。
赤い糸は全く見えなかった。

愛する人は外国にいるのかもしれないと考え、世界を一周することにした。
北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸、多くの時間とお金をかけて、愛する人を探すことにした。

そうして、僕は40歳になった。
体力的にしんどい。
愛する人に会えず、心もしんどい。
もう、今世では会えないかもしれない。
そう覚悟した時だった。
ふと手元を見ると、左手の薬指に赤い糸が結んであった。
まさか。
僕は前を見た。
目の前に一人の女性が立っていた。
僕と同じく、左手の薬指に赤い糸を結んでいた。
心が震えていた。
いつの間にか涙が頬を伝っていた。

涙でぐしゃぐしゃな顔に、僕は笑顔を浮かべて言った。
「迎えに来たよ」

3/11/2025, 1:11:10 PM

【星座の見つけ方】※再掲

子供の頃、田舎に住んでいた。
田舎は人間関係が陰湿で、噂話なんかすぐ広まっていた。
両親が喧嘩をすれば翌日には
「薫ちゃん、昨日お父さんとお母さん喧嘩してたでしょぉ〜」
と、近所のおばちゃん達から言われるくらい。
バス停もほとんどなく、あっても3時間に1本程度なので、自転車と車、バイク、鍛え抜かれた足などが必須だった。
当然、そこら中にお店があるわけでもなく、
小学校や中学校も歩いて結構かかるのだ。

だけど、悪いことばかりでは無かった。
何と言っても、自然が美しいのだ。
空気がおいしい。
水が綺麗(しかも美味しい)。
花が至る所に咲いている。
私のお気に入りは星だった。
夜になると、黒色の空一面にスパンコールが敷き詰められるのだ。
芝生に寝っ転がって星を眺めるのが好きだった。
冬は辺りが暗くなるのが早いので、学校からの帰り道で星を眺められた。

大学に合格した私は上京した。
初めに思ったのは、「星がない」ということだった。
建物や街灯がいっぱいあって、星なんか見つけられやしないのだ。
月明かりなんか役に立たない。
至る所に整備された花壇があって、道路なんかちゃんとコンクリートで舗装されているのだ。
暫くして大学内で友達が出来たり、バイトを始めたりして人付き合いが盛んになった。
みんな標準語だからか、次第に私も標準語になっていった。

少し秋の気配がする夜の街を歩き、駅へと向かった。
今年の正月、帰ろうかな。
地元の人達は陰湿であまり良く思っていないけれど。
やっぱり自然の美しさが好きだな、と思う。
地元に帰れば、
訛った言葉遣いではないことに驚かれて、
虫に怯えるようになって、
近くに何も無いことが不思議に思えて、
夜の暗さに目が慣れなくて、
月明かりがやけに眩しくて、
星座の見つけ方なんて忘れてしまっているのだろうな。

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