踊るように
金色の房飾りが施された
少し色褪せた赤茶色の幕が上がる
現れたスクリーンに映る見覚えのあるふたり
それは漆黒のタキシードに身を包んだ貴方にエスコートされる私
軽やかに舞う色鮮やかなドレス
指を絡ませ合わせる呼吸
リズムを刻み 弾む息
重なるシルエット
12時の魔法が解けてもかまわない
今宵このまま
時を忘れて踊りましょう
疲れて
抱き合い眠りにつくまで
なんてね、現実にあり得ない夢のようなシチュエーションを妄想してみる。
それが穏やかな眠りにつくための私の儀式。
ん?現実?
明日のこととか?
考えない考えない。
逃避癖不治end
時を告げる
君と別れてからもう3年も経つ。それなのに、私はあの日から動けないでいる。
シャンプーも柔軟剤もあの頃のまま。君がいい匂いって言ったから変えてないよ。
一緒に選んだベッドカバーやカーテン、お揃いの食器やマグカップもまだ使ってる。
君が見たいと言ってた映画が配信されるから入ったNetflixも解約してない。
全然見てないのにね。
でもLINEやアドレス、写真なんかは全部削除したよ。あの時はめちゃくちゃ泣いたなあ。
結構頑張ったのにさ、結局嫌でも君を思い出してしまうものばかりに囲まれて生活してるんだ。
いい加減変わらなきゃ、という思いと、もうこのままでいいやの繰り返し。
こんな日々が続くのかと思うと悲しくなった。
そんなある日、マグカップを落として割ってしまったの。持ち手と本体が見事にまっぷたつ。
焦った私が拾い上げようとした時にね、
(もう終わりにしない?)
誰かの声が聞こえたの。
ハッとして部屋を見渡したら
不思議だね、カーテンもベッドカバーも食器も全てが色褪せて見えた。
「うん、そうだね」
マグカップが割れる鈍い音は、出発の時を告げる合図だったのかな。
明日、新しいカーテンとベッドカバーを買いに行こう。
「見ててよ、君より幸せになってやるからさ」
新・強女子誕生の瞬間でしたend
貝殻
爪をね、淡いピンクに染めます。次の日には、ベージュを重ねて少し暗いトーンにしてみたり。
たったそれだけのことで、指先の動きがしなやかになる。我ながらなんて単純思考。
お気に入りの色に染めた指先を見ながら、いつも貝殻のようだなって思う。うまく塗れたら上機嫌。透き通って、ツヤツヤで、つい眺めてしまう。
サロンに通いたいとは思ってなくて、落としたい時に自分でオフして、また好きな色を選んで塗る。女性の特権です。(キレイな男性もされてますけど)
でもね、一通り塗ってあとは乾かすだけ、の状態になると必ずと言っていいくらい指を使わざるを得ない状況が起きるんです。何か落としかけて慌てて掴んだら爪に触れてネイルが歪んだりね。
かなりの確率で起こるこれ、何現象って言うんだろう。
私にとって、香水もネイルも女子でいるために必要な鎧のようなもの。男の人でいうスーツかな。
それにしても天然の女子力がないって大変。あれこれ工夫しなきゃならない。
さぁ、明日の爪先は何色にしようかな。
この夜のひと時をささやかな楽しみにしているのでした。
誰ですか?「おばさんが悪あがきしてもねーっ」て言ってるの。
あなたが寝てる間に爪やすりでピカピカにしてやりますからね!(怒)
end
きらめき
(お題、何にも思いつかないから全然違う話)
歩くのが好きです。
てくてく てくてく歩きます。
音楽聴きながら、猫追いかけたり、逃げられたり。立ち止まって水分補給したり。
歩いてると頭から離れなかった嫌な事が少しづつ消化されて、ちょーどいいのです。
あんな事やこんな事を思い出して、踏んづけながら歩くのもいいけれど、私は風に乗せて流す感じ。
(聞こえはいいけど、汗だくですよ)
いつものルートを変えてみると、知らないお店がオープンしてたり、前からあったコンビニが違うお店に変わってたり。
いつも通ってる道なのに、車に乗ってる時は気付けなかったことが思いの外あって驚きます。
嫌なことって、人それぞれ。他人から受ける嫌なこととか、変われない自分に対して抱く不甲斐なさとか。
でもそれは、みーんな同じです。
人は変わらない、だから自分が変わろうって思ったけど、自分が変わるのが一番大変だと気づいてしまった私。
バグが多すぎて!
修正が追いつかない。
ビックかヨドバシ行けば直してもらえるでしょうか?
「旧型過ぎて無理ッスねー、部品もうないッスよー」
とか言われたらどうしよう。
嫌なことが増えただけじゃないか。
やっぱり嫌なことは、こちらで文章にして読み手の方へ当たり散らす。
これが一番です。
お互いさまってことで、許してくださいね。
え?違うって?
(汗)end
些細なことでも
目映いヘッドライトが横顔を照らす。
「久しぶりだね」あなたが言う。
「2ヶ月くらい前?前に会ったのって」
よそ見しながら、笑って返す。
すぐ気づいた。私ではない誰かが乗った感じ。
見てないふりした、見たことのないライター。
窓を開け、燻らす煙。
いつものように文句を言う私。
「匂いがつくから嫌よ。やめるって言ったのに」
「言ったっけ?」
「嘘つきね」
いつもの軽口。
いつもの会話。
「コーヒー飲みたいな、買ってきてくれる?」
車を降りるあなた。
コンソールボックスの奥底に眠る、見覚えのあるライター。付き合って一年の記念日に私があげたものだ。
(返してもらうわね)
戻ることのない助手席に強めに残す香り。
些細なことでもかまわない。
いつも私がここにいたこと、知らない誰かに気づかせたかった。
「今日は歩いて帰ろうかな」
途中で降ろしてもらい、いつものように別れた。
湿った生温い空気の中、星のない夜空を見上げ、バッグから取り出した煙草に火をつけ、深く吸い込んだ。
「嘘はだめね」
メロドラマ♪end