時を告げる
君と別れてからもう3年も経つ。それなのに、私はあの日から動けないでいる。
シャンプーも柔軟剤もあの頃のまま。君がいい匂いって言ったから変えてないよ。
一緒に選んだベッドカバーやカーテン、お揃いの食器やマグカップもまだ使ってる。
君が見たいと言ってた映画が配信されるから入ったNetflixも解約してない。
全然見てないのにね。
でもLINEやアドレス、写真なんかは全部削除したよ。あの時はめちゃくちゃ泣いたなあ。
結構頑張ったのにさ、結局嫌でも君を思い出してしまうものばかりに囲まれて生活してるんだ。
いい加減変わらなきゃ、という思いと、もうこのままでいいやの繰り返し。
こんな日々が続くのかと思うと悲しくなった。
そんなある日、マグカップを落として割ってしまったの。持ち手と本体が見事にまっぷたつ。
焦った私が拾い上げようとした時にね、
(もう終わりにしない?)
誰かの声が聞こえたの。
ハッとして部屋を見渡したら
不思議だね、カーテンもベッドカバーも食器も全てが色褪せて見えた。
「うん、そうだね」
マグカップが割れる鈍い音は、出発の時を告げる合図だったのかな。
明日、新しいカーテンとベッドカバーを買いに行こう。
「見ててよ、君より幸せになってやるからさ」
新・強女子誕生の瞬間でしたend
9/6/2024, 12:24:25 PM