蒼白ねっこ

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3/20/2025, 2:59:06 PM

手を繋いで


目を覚ますと。見覚えのない場所にいた。
真っ白で、透明な世界。心すらも透き通すほど。

私は、死んだんだ。つい、先程。

彼が優しく手を握ってくれていた。
未だに、その感覚が残っている。手を動かしてみても、ぶらぶらと足を運んでも。その感覚は付いてくる。

………?

その時、ふと違和感が湧いた。

私の手を握ってくれていたのは、彼、じゃない。弟だ。私の彼氏は、先に病死した。死んだ私の年齢は、80を超えていた。

手を見つめながら、握ったり振ったりするのをようやく辞め、私は透明なその場所を見つめた。その瞬間、私の視線は一点に集中した。

先程までいなかった彼の姿に。

彼は、私の手に彼の手を重ねた。
そして優しく握ると、私の手を引っ張りながら、そのまま透明な世界の中に走って行く。

そうして、

二人は、手を繋ぎながら透明な世界から消えた。



まるで、透明な、糸に縛られているかのように。

彼の手は私から離れない。

二人の小説はまた、始まる。

3/19/2025, 10:05:18 AM

どこ?


あなたは、どこ??

大雨の中、探し回った。
手術から逃げ出した彼を。

成功率10%だと言われ、死ぬかもしれないという絶望に襲われたのだろう。しかし、手術をしなければ、どの道、彼は命を失う。

それが今なのか、この先なのか。
酸素マスクを着けられた途端、医師を押し倒し、そのまま走り去った彼を、私は追いかけた。

しかし、あまりに大雨だったため、私は彼の後ろで転んだ。彼に背中を向けさせたままにした。

私は、それでも彼を見つけ出す。
どこにいようと、絶対。


彼の小説を、終わらせないために。

3/18/2025, 10:21:24 AM

大好き


大好きだよ。そう言い、ほんのり甘いキスを。

私は、彼が大好きだった。付き合ってまだ一年未満。それでも、二人の愛は本物だと言えるほど。

身体を重ね、やがて結婚にまで及ぶ二人の関係。

私の中にある、彼が大好きな感情は変わらない。

「ずっと一緒にいてね」

そう囁いて、お互いに愛情を注ぎ合う。永遠を共にすることだって約束した。

しかし、その言葉とは裏腹に、

やがて終わりを迎える二人のワルツ。


永遠なんざ、共には出来ない。
彼が永遠を共にしようと、ありもしない現実を言い、甘い嘘をついたとしても。


それでも、私はずっと彼が大好き。

3/17/2025, 10:05:22 AM

叶わぬ夢


二度と叶わない。
彼が帰ってきて下さい。なんて。

彼は病気で死んだ。最後はぎゅっと私の手を握りながら、息を引き取った。最後まで死にそうなことを、私に言わないまま。

「大丈夫、大丈夫。」

そういい、確信のない生存を伝えながら、最後を見送った私は、後悔しかない。

きっと、もうダメだと言うことを、私に一言でも伝えたかったのかもしれない。
きっと、ありもしない希望を言われて嫌だったに決まってる。

今更、言いたいことなんてないのに。



___彼が帰って来ますよう。

3/16/2025, 10:05:23 AM

花の香りと共に


これは、恋人からもらった花。
手に収まっているのは、真っ赤に染まった薔薇。

これは、職場の人から頂いた花。
手に収まっているのは、ディモルフォセカ。

どれも素敵な花言葉がある。しかし、世の中には、とても闇深い花言葉を持つ、花も存在する。


私の正体は、花農家。

毎日、花の香りと共に生きていく。

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