心のざわめき
一人の大切な彼氏。
私は、毎日彼のお見舞いに赴く。
しかし、ここ一ヶ月意識を戻さない彼に、毎日花束を置いて、聞こえないことはわかっていても、話しかけた。
しかし、ある日。
意識のない彼が、突然私の右手を掴んだ。私に、どこにも行かないでと言わんばかりに。やがて、帰らなくてはならない私は、その手を離して帰宅した。しかし、帰宅してから感じた。
いつもには無い、何か変な感覚。
なんだろう、この心のざわめきは。。
君を探して
お願い、見つかってくれ、!
何度願ったか分からない。僕と恋人にまで関係が発展した彼女は東日本大震災で津波に飲まれ、行方不明になった。
自分が、彼女を諦めることは出来ない。
だから毎日探していた。何ヶ月経っても。ずっと
しかし、世界は残酷だ。
「彼女さんは、見つかりませんでした」
自衛隊に言われた一言に、悔しさを覚えた。
3/11の前日まで、キスをして、身体を重ねた日々
忘れることは出来ないのだ。
「どうか、まだ、お願いします」
「彼女を、、彼女を、、!」
透明
今日、僕は透明人間になった。
妻と、子を残して。
建設中の建物の最上階で、頭から落下した。
衝撃音と共に、自分の身体は砕け散った。
幸い、即死だったため痛みは感じない。それでも、嬉しいとは思えないのだ。
がんで入院してる妻と、二人の子供。
残してはいけないものを残した。
妻に、入院費や治療費、生活必需品、全て稼ぐと告げたのは私だ。
子供の養育費、ご飯代、生活必需品代。
頭が真っ白になった。
それと同時に怒りが湧いた。
生前の私の顔を見たくもない。
胸ぐらを掴みたいほどの怒りが湧いた。
その反面、私の顔を見た妻は優しかった。
「頑張ってくれたんだね、ありがとう」
「無理、させてごめんね、、」
今だけは、
溢れた涙を堪えなくてもいいだろうか。
終わり、また初まる
僕の人生は、今日終わった。22歳だった。
次に神に連れていかれた場所は、どこなのかも分からない暗い場所。両手と両足は鎖で縛られ、身動きが取れない。火葬された自分の体は燃え尽き、骨だけが残る。黄泉の国でも同じらしい。
やがて、自分の前に神と思われる男が前に立つと、するりと鎖を外し、別の場所に運ばれた。
所々火が燃えている場所。自分はどこにいる?
隣には、神の姿。自分は、子供の姿に変わっていた。まだ歩けない赤ちゃん。おくるみに包まれ、優しく抱かれる姿。
終わった人生は、また、初まる。
次は、どんな世界だろう。
幼い頃、父親を亡くした。当時母親は悲しませないためか、子供を喜ばすためか、お父さんは星になったんだと教えてくれた。大人になった今でも、その記憶が鮮明に残っている。
当時、母の教えをもろに受けていた私は、当然父親が星になったと純粋に思い込み、毎晩星に話しかけていた。
「お父さん、今日は--」
大好きな父親と話している気分になれたのだ。
そして社会人になると、終電を逃す一歩手前まで仕事をする日々。当然父親のことなど、頭から抜けてしまっていた。久しぶりの休日に、星を見つめていると、突然幼い頃に、父親に話しかけていたことを、ふと思い出したのだ。
「お父さんも、仕事大変だったのかな、」
一度星に話してみると、
なんとなく、気が楽になった気がした。