「誰かしら?」
彼女はいまだに理解できない。
もしかしたらあの時の自分は本来の自分だったのかもしれないと思うのだ。
じゃあ、今の私は誰なのだろう。
本当の自分?
偽りの自分?
誰かを演じてるのだろうか?
もしそうだとしたら、
それは誰なのだろうか?
親やきょうだいが求める人間を演じてるのだろうか?
分からない。
「芽吹の時」
春の訪れを感じさせる芽吹の時
胸に少しのワクワク感が芽生える
厳しい、寒さの中でも大地から芽生えるその逞しさに
今年も春がくるんだな、とホッとする
「あの日の温もり」
あーなた、愛してくれた
まーるで、ひだまりでした
この歌詞を思い出す
うんと昔、とても気の合う友達以上恋人未満の人がいた
その人はいつも穏やかで、
怒ったとこは見たことなかった
愛だとは気付かなかった
恋愛経験が乏しかったからか、
内面が成長してなかったからか、
本を読んでその分野に関しては勉強したり、擬似体験してなかったからか、
いくつも理由は書けるけど
その人がしてくれてたことを思い出すと、
それは愛からくるものだったんだなと思う
ただの恋愛ではなく
相手を思う、愛
だから、私から離れていったんだ
今なら、ちゃんと理解できる。
そして、年老いた今の私
思い出すと心がじんわり暖かくなる
あの日の温もり、
それはその人が与えてくれてた手の温もり
「記録」
君には話していないけど、
君のことは全て心のノートに記録してある。
どんなに頑張って消そうとしても消えない。
初めて君からプレゼントをもらった時、その場で開けて身につけて見せたら良いのに、私は舞い上がってしまって、そのまま持って帰ってしまったね。
渡してくれた場所、景色、全て覚えてる。
次に会った時に私は身につけて行った。
そっと髪をかきあげて、ほんの1秒くらい見つめている君がいた。
確かエスカレーターでの移動中の出来事だったと思う。
あの頃には戻れないけれど、
私の数少ない、大切な記録
「一輪の花」
僕は一輪の薔薇を花屋さんで買った。
今日は彼女に思いを伝えようと思う。
その時まで、僕はこっそり後部座席の下に、薔薇を隠していたのだけれど、
助手席に座る彼女が今日はやたらと後ろを振り向くから、
薔薇が見つからないか、ヒヤヒヤしてた。
「君のことが好きだから、彼女になってほしい」
そう言って、一輪の薔薇を差し出した。
彼女は一瞬戸惑ったようで、
1週間、返事は待ってほしい、そう言った。
考えさせてはいけない。
今、OKがほしい。
僕は思わず彼女を抱きしめた。
いいよね?
彼女は照れてるようで、頬を赤らめながら、こくり、とうなづいた。
あれから月日は流れ、今でも僕の側にはいるものの、彼女は僕をいつも不安にさせる。
彼女に愛されてるという実感がないのだ。
だから、不安になるたび、彼女を抱きしめる。
彼女は何を考えているのか時々わからない。
全く別人のように感じてしまう。
僕の側にいつまでもいてほしのに、僕はそのことをうまく伝えられない。
彼女はというと、
ずっと彼の側にいたいと思っているのに、うまく伝えられていない。
結局は似たもの同士なのかもしれない。
一輪の花から始まった、僕と彼女のお話はいつまで続くのかな。
ずっと、ずっと続いたらいいのにな。この先も、ずっと、ずっと。