通り雨の続き
きっと明日も
今日は、いつものメンバーで遊園地に
来ていた。 事の発端は....
「ハイネとシズクが両思いになったお祝いに四人でWデートしようよ!!」
「あ~此処まで長かったわ~やっと長年の
夢が叶うのね~」とミーナとナイトの二人の提案だった。
「はぁ~そんな事言ってお前ら遊びに
行きたいだけだろう って言うかそんな事
祝うんじゃねぇ恥ずかしいだろう....」
(って言うか長年の夢って何だよ俺の
恋愛成就は、そんな長年待つ程 希少な物みたいに言うんじゃねぇよ....)
はぁ~とハイネはため息を吐く
そして隣に座っているシズクを横目で見ると何故だかシズクは、考え込んでいた。
(何考え込んでんだこいつ....)ハイネが
シズクに声を掛ける。
「シズクどうしたんだ....」
「あっ....あのね....友達同士が両思いになったらお祝いするなら ミーナとナイトの事もお祝いしなきゃ 二人両思いなのに私
お祝いしなかった....今からでも間に合うかなあ....」とズレた返事をよこして来たので
ハイネは、更にため息を吐く
するとナイトが見計らった様に
「だから僕達のお祝いも兼ねて四人で
遊園地に行こう!」とナイトがシズクに
呼びかける
するとシズクが目をキラキラさせて
「うん!」と頷く と三人で盛り上がって来ていたので 嗚呼 これは行く流れになって来てるなあ面倒くさいなぁと思わなくもないが....シズクがにこにこして嬉しそう
なのでその笑顔を見てるとハイネ自身
(まぁ良いか....)と言う気持ちになるのだった。
そうして 今に至る....
「....ハイネ....見て....見て....!!」
シズクがミーナと動物の耳が付いた
カチューシャを被りハイネとナイトに
ミーナと一緒に見せに行く
どうやらお店で買ったらしい.....
ミーナは、猫耳 シズクは兎耳の
カチューシャだった。
「ミーナ凄く可愛いよ 似合ってる!」
「ありがとうナイト」ミーナとナイトの
二人の間に恋人特有の二人だけの世界みたいな雰囲気が流れる。
「ハイネ!!兎さんだよ!!」とシズクが
嬉しそうにハイネに顔を綻ばせる。
ハイネ「っ・・・」と言葉を詰まらせる
両思いになってもシズクに面と向かって
可愛いと褒める事が出来ないハイネだった。
無難に「ああ・・・」と一言返すだけで
留める。
シズクは、そんなハイネの言葉が嬉しくて
照れた様にもじもじしていた。
しかし当のハイネは....(俺って奴はどうして素直に可愛いって言えないんだろう....)
もう泣かせたくないのに.....
離れたくないのに....
もっと もっと喜ばせたいのに....
結局 告白も意気込んで決意した割に
最初に言い出してくれたのはシズクから
だったし.... 俺 もしかして彼氏らしい事
全然シズクにしてない....
その事実に思い至りハイネは、内心
落ち込んでいた。
暫くして四人は、乗り物のアトラクションやレストラン ショッピングなどを堪能して帰る頃になった。
「楽しかったわね!」「うん!」
シズクとミーナが話している後ろで
ハイネは、落ち込んでいた。
それを見て取ったナイトがハイネに
声を掛ける。
「ハイネどうしたの?」ナイトがハイネを
覗き込むナイトの問いかけにハイネは、
ぶっきらぼうに...
「別に....唯 俺っていつまでも格好悪いなあって思っただけだよ...」
「ふ~ん ハイネも自分の事に関しては
鈍いんだね!」
「はぁ....どう言う意味だよ!」ハイネの
問いかけにナイトは、答えず
「じゃあ僕達は、此処で失礼するね!」
「ハイネちゃんとシズクを送って行きなさいよ!シズクじゃあまたね!」
こうしてミーナとナイトは、手を繋いで
先に自分達の家へと帰って行った。
シズクは、今日は、凄く楽しかった。
皆と居られて.... ハイネと居られて....
だから今シズクは、最高に幸せだった
このまま寮に着かなければ良いのに
そう思ってしまう程....
シズクは、ちらりとハイネの顔を見る。
私の大好きな人は、普段は、ぶっきらぼうで意地悪で厳しいのに 私が本当に困っている時や助けて欲しい時は、いつも一番に
駆けつけて私の事を助けてくれる
ヒーローみたいに格好良くて大好きな人です シズクは、ハイネの顔を見て
くすくすと笑う
「はあ~何笑ってんだよテメェは」ハイネ
バツが悪そうにシズクを睨む
シズクはその睨まれた顔すら
初対面の時は、あんなに怖かったのに
今は、全然怖くない ハイネが色んな表情を自分に見せてくれる事が心から嬉しい
「....ハイネ大好き!」シズクは、満面の
笑顔をハイネに見せる。
それを見てハイネは...「ばっ馬鹿 うるさい こんな公衆の面前で好きとか言ってんじゃねえ うぜえんだよ ほらもう
さっさと行くぞ!」「うん....」
こうして二人は、並んで歩き出した。
きっと明日も大好きな人に会えます様に
二人は、心の中でそう同じ様に願っていた。....。
静寂に包まれた部屋
ドアを開けるとしーんと静まり返った部屋
誰も居ないその部屋に一人でいると
冷たく冷え冷えとした空気が肌を通る
誰も私を見つけてくれない
気付いてくれない
今日も一人寂しく 家具も何もない
殺風景な部屋の床にその身を横たえる
暖かみも感じられない冷たい床は
寂しさを増長させるだけだった。
嗚呼 私は、一人ぼっち誰か私を見つけて
【あくる日】とある井戸端会議
「やっぱり奥の部屋 誰か居るような物音がするの.... やっぱり呪われてるのよ....
だってその部屋は、誰も住んでいないはず
だもの....」
「あの部屋でしょ....女性が首吊り自殺した
部屋って きっと今でもその女性が幽霊に
なってあの部屋に住んでるのよ...」
「あまりに不気味だから今度あのアパートの奥の部屋お祓いしてもらうらしいわよ」
そんな噂話をする中年女性達
あれ?何で部屋に入れない何で私は...私....
嗚呼 そうだ 私は、死んだんだ....
上司のパワハラ セクハラに耐えに耐えて
私は、とうとう耐えきれなくて死んだんだ
誰も遠巻きに見るだけで助けてくれなかった。
一人暮らしに憧れて家賃6万のこのアパートで新しい生活を始めた
両親に仕送りもしてやっと親孝行が出来ると思ったのに....ごめんなさい
お父さん お母さん 私が弱いばっかりに
親不孝をしてしまった 二人に心配や
迷惑を掛けたくなくて会社の事は、
二人に話せ無かった。
結果的にそれが二人に迷惑を掛ける事に
なるなんて死んでから気付く愚かな娘を
どうか許して下さい さようなら
死んでからも私は、追い出されてしまった
やっぱり私は、誰にも見つけられなかった
やっぱり私の存在意義なんて何も無かったんだ こうして私は、誰にも必要とされず
私の魂は、消えて行った
【お祓いをして一ヶ月後】
「わあ~パパ ママ この部屋 他の部屋に比べて凄い綺麗だよ!!」
「本当ね 他の部屋は、床にシミやキズが
少しだけど付いてたのにこの部屋は新築みたいに綺麗だわ!」
「きっと前使っていた住人の人が大切に
丁寧に使ってたんだなあ....」
「ママ パパ 私この一番奥のこの部屋に
住みたい!」
「そうね パパもママも賛成よ!
こんなに綺麗に片付けられた部屋なんですもの きっと前の住人さんが気遣いが
出来る優しい人だったのね」
「僕達も大切にこの部屋を使わせて貰おう」娘と母親も父親の言葉に嬉しそうに
頷く
こうして彼女の優しい性分を間接的にでも
分かってくれる人が現れたのは彼女に
とっては、救いになったのかもしれない
しかし本当の所は、永遠に分からないまま
だった。....。
心の灯火(番外編)21の続き
別れ際に(番外編)22
●別れ際が寂しいシズクちゃん
今日は、皆でティーパーティー
帽子屋のナイト 白兎のミーナ
魔法使いのハロルドその助手のマリア
そしてシズクちゃんと灰色猫のハイネで
楽しいお茶会をしていました。
しかし楽しい時間は、あっという間に過ぎて行き皆帰る頃になりました。
別れ際 皆は、シズクちゃん達に手を振り
帰って行きました。
皆が居なくなり 静かになると
シズクちゃんは、急に寂しくなり
泣き出してしまいました。
「うっうええっ ひっく....ひぐっ...」
「どうしたんだ お前」皆が帰った後
パーティーの後片付けをしていたハイネは
さっきまで皆と笑っていたシズクちゃんが
何の脈絡も無く泣き出したので困惑して
いました。
ハイネはシズクちゃんを抱き上げシズクちゃんの背中を叩いて落ち着かせます
するとシズクちゃんがハイネの首元に
抱き付いて「皆....帰っちゃって....寂しい」と言いました。
ハイネは、そんなシズクちゃんに苦笑して
「馬鹿だなあ....皆 お前に手を振って
くれただろう バイバイって....
また会おうねって またいつでも会いに
行けるだろう.... それにお前には俺が
いつでも側に居るだろう だから大丈夫だ」シズクちゃんは、ハイネの言葉に
素直に「うん」と頷きまたハイネの首元に
抱き付きました。
ハイネは、(最後の言葉は、ちょっと
言い過ぎたかなあ....)と自分でもちょっと
恥ずかしい事を言ったかもと少し後悔しましたがシズクちゃんが.....「えへへへ」と
嬉しそうに にっこりまた笑ってくれたのでハイネは、安堵してシズクちゃんと
一緒に後片付けをしてそして夜が
深まった頃一緒に眠りにつきました。
めでたし めでたし!!
形の無いものの続き
通り雨
ハイネクラウンは、今 最高に幸せだった
外に雨脚が強い通り雨が降っていても
全然憂鬱にならなかった。
「ハイネ~これ私の....傘....使って....」
シズクが自分の赤い傘をハイネに差し出す。
「はぁ 別に通り雨だしすぐ止むし
要らねぇよ!」シズクの好意は、嬉しいが
本当に通り雨らしくさっきまで強い雨脚
だったが だんだんと弱い雨脚になって
きている。
家までだったら走って帰れる。
「でもミーナと....ナイトは....一緒に傘を
差して帰って行ったよ....」
「まぁ あいつらは、一緒に住んでるし....
それに二人っきりになりたいんだろう!」
此処の所ミーナとナイトには、世話をかけさせてばかりだったのでたまには二人っきりにさせてやろうとハイネなりの配慮だった。
するとシズクが少し俯いて....
「じゃあ....私が傘を差して ハイネを
送って行く....」と何だかシズクが決意した表情でそんな事を言うから....
「はぁ! 良いって 帰りお前が一人になる
だろうがそっちの方が危ないだろう!
もう良いよ雨止んだしもう行くじゃあな」
とハイネが背中を向けて立ち去ろうとした
時シズクがハイネの腕を引っ張った。
「じゃあ私の傘だけ持って行って....
そうしたら 返す時....少しだけハイネと
二人っきりになれるから....」そう言って
シズクは、ハイネにはにかむ
「私....ハイネの....か....彼女として....
ハイネに....もっと....好きになって貰える
様に....頑張るね....!」そう言ってシズクは
赤い傘をハイネに渡し自分も顔を赤くして
そのまま逃げる様に寮に戻って行った。
そんなシズクの立ち去る姿を見ながら
ハイネもまた顔を赤くしていた。
そうしてそのまま顔を隠す様に地面に
しゃがみ膝に自分の顔を埋める
(馬鹿シズク....あいつ俺を殺す気か...)
ハイネは、赤い傘を大事に握りしめ
もうとっくに雨が通り過ぎて
眩い陽光が差し込む空へと一歩踏み出し
口元を緩ませて自分の幸せを噛みしめるのだった。
秋🍁
やっと来たよ秋 待っていたよ秋
きっと今年の秋も短いんだろうなぁと
思いながら 貴重な秋の有り難さを
私は、噛み締めている。