形の無いものの続き
通り雨
ハイネクラウンは、今 最高に幸せだった
外に雨脚が強い通り雨が降っていても
全然憂鬱にならなかった。
「ハイネ~これ私の....傘....使って....」
シズクが自分の赤い傘をハイネに差し出す。
「はぁ 別に通り雨だしすぐ止むし
要らねぇよ!」シズクの好意は、嬉しいが
本当に通り雨らしくさっきまで強い雨脚
だったが だんだんと弱い雨脚になって
きている。
家までだったら走って帰れる。
「でもミーナと....ナイトは....一緒に傘を
差して帰って行ったよ....」
「まぁ あいつらは、一緒に住んでるし....
それに二人っきりになりたいんだろう!」
此処の所ミーナとナイトには、世話をかけさせてばかりだったのでたまには二人っきりにさせてやろうとハイネなりの配慮だった。
するとシズクが少し俯いて....
「じゃあ....私が傘を差して ハイネを
送って行く....」と何だかシズクが決意した表情でそんな事を言うから....
「はぁ! 良いって 帰りお前が一人になる
だろうがそっちの方が危ないだろう!
もう良いよ雨止んだしもう行くじゃあな」
とハイネが背中を向けて立ち去ろうとした
時シズクがハイネの腕を引っ張った。
「じゃあ私の傘だけ持って行って....
そうしたら 返す時....少しだけハイネと
二人っきりになれるから....」そう言って
シズクは、ハイネにはにかむ
「私....ハイネの....か....彼女として....
ハイネに....もっと....好きになって貰える
様に....頑張るね....!」そう言ってシズクは
赤い傘をハイネに渡し自分も顔を赤くして
そのまま逃げる様に寮に戻って行った。
そんなシズクの立ち去る姿を見ながら
ハイネもまた顔を赤くしていた。
そうしてそのまま顔を隠す様に地面に
しゃがみ膝に自分の顔を埋める
(馬鹿シズク....あいつ俺を殺す気か...)
ハイネは、赤い傘を大事に握りしめ
もうとっくに雨が通り過ぎて
眩い陽光が差し込む空へと一歩踏み出し
口元を緩ませて自分の幸せを噛みしめるのだった。
9/27/2024, 10:57:23 AM