七夕(番外編)⑧の続き
これまでずっと(番外編)⑨
●シズクの苦手克服大作戦
シズクファーラムと言う少女には、
苦手な物が沢山ある。
虫 怖い話 露出の多い服を着る事
初対面の人と喋る事 大きな声を出す事
等々 数を上げればキリがない程
苦手な物が多い
中でも一番接する機会が多い苦手が
運動だった。
シズクは、運動が苦手だった。
体を動かすのは、嫌いではない
寧ろそれ自体は、楽しい
しかしシズクは、運動音痴だった。
球技系のスポーツは、ボールを投げると
遠くへ飛ばないし ボールを受け取ろうと
すると強い力に弾かれ取りこぼすし
体をボールにぶつける事も多い
プールや海に行くと浮き輪は、手放せない
必需品になっている。
おまけに顔を水に付けるのが怖くて潜る事も出来ない
これまでずっと運動は、避けて来た
皆がやるのを見てるだけで十分だった。
しかしそれだと周りの皆もシズクに
気を遣って楽しめない
だからシズクは、決意した。
一つだけでもちゃんと出来るスポーツを
増やそうと頑張るシズク
そうして季節は冬
ウィンタースポーツの定番はスキーや
スノボー等々
と言う訳で今日は皆でスケートに来ていた。
そうしてシズクは、最初に言った通り
運動音痴なので、スケート靴を履いたまま
上手く歩けない歩くと転ぶ転ぶ
なのでミーナとナイトに手を繋いで貰っていた。
「ごめんね....ミーナ...ナイト....」
シズクは、申し訳無さそうに謝る。
「良いのよ初めてなんだから最初は皆
こんな物よ」
「そうそう 寧ろちゃんと歩けてシズクは
偉いよ!」二人は、優しくシズクの手を
取って褒めてくれる。
シズクは、二人の優しさに胸が暖かくなり
「ありがとう」と二人にお礼を言う
こうして三人で手を繋ぎゆっくりと滑り
三人の中で穏やかな時間が流れる。
シズクも楽しくなって思わず笑い声が
漏れる。
しかし世の中は、そんなに甘くは無かった。
世の中は、アメ(優しさ)とムチ(厳しさ)で
出来ている。
シズクは、(アメ)優しさ代表の二人に
褒められて嬉しくなってすっかり忘れていた。
苦手を克服すると言う目的を....
このまま二人に手を繋がれながら滑るのも
もちろん間違いでは無い
しかしそれでは、皆を自分のペースに
合わせてしまう
何より出来るスポーツを一つ増やすのが
シズクの最初の決意だった。
そんなシズクの目的を思い出させる様に
ムチ(厳しさ)がやって来た。
「テメェら チンタラチンタラ滑ってんじゃ
ねェ!」吊り上がった鋭い目を険しくして
ハイネが三人を睨む
「何よ良いじゃない別に...」とミーナが
ハイネを睨み返す。
「テメェら二人シズクに甘すぎだろう!
シズク テメェもミーナとナイトに
甘えてないで自分で滑れる様になれ!」
とハイネの叱咤にシズクは、ハッとなり
「うん....頑張る....!」とシズクが片手で
小さく拳を握る。
シズクのその言葉にハイネはニヤリと笑い
「よし!その言葉に嘘は、ねェなぁ!
だったら俺が今日中に滑れる様にしてやる」
「よろしくお願いします。....」
シズクはハイネの言葉に素直に頷いた。
二人のやり取りにミーナとナイトは
心の中で(大丈夫かなあ...)と思っていた。
こうしてハイネとシズクのマンツーマンの
特訓が始まった。
すると....「きゃあああーっ」シズク
ドッテンバッタンと転ぶ転ぶ
ハイネはミーナやナイトみたいにシズクに
手を貸さない 正にムチの指導だった。
「ほらどうした!!もう終わりか!」
「う~....痛い~.....」シズクが涙目になって泣きそうになって思わずミーナとナイトが駆け寄ろうとすると....
「お前ら駆け寄るんじゃねェ
邪魔だ向こう行ってろ!!」
ハイネが二人を睨む
ミーナが「ハイネあんたやり過ぎよシズクが可哀想じゃない」と抗議しても
「うるせー俺のやり方に口出しすんじゃねぇ!」ハイネが二人に怒鳴る。
「シズク下向くな真っ直ぐ前見ろ!
軸がぶれてんぞ!」
シズクがハイネの言う通りに前を向いて
姿勢を真っ直ぐにすると奇跡が起きた。
バランスが取りやすくなりすーっと体が
前に進んだ。「で....出来た...」シズクは
嬉しくなり思わず皆の方を見る。
「シズク危ない!」ミーナとナイトが
揃ってシズクに大声で叫ぶ
シズクが前を見ると眼前に壁が迫っていた
しかしシズクはまだ曲がるのが上手く
出来ないこのままじゃ顔面を壁に
ぶつける。
シズクは怖くなって目を瞑る。
しかしシズクの体が壁にぶつかる事は
無かった。
シズクの体をしっかりと前面で受け止める
ハイネの体があった。
シズクは涙目でハイネの顔を見る。
ハイネは呆れた様にシズクを見て
「ったく 調子に乗るんじゃねェよ!」
そんなハイネの言葉にシズクは安堵して
ハイネにしがみつきながら
「ごめんなさい....」とハイネの胸に自分の
顔を埋める。
ハイネはシズクの顔を自分の方に向かせて
シズクの泣き顔を見ながらシズクの耳元で
「馬~鹿」と囁いた。
シズクはそんなハイネをキョトンと見上げる。
そんな二人を見守るミーナとナイトは....
「あ~あハイネったらあんな幸せそうな
顔しちゃってあれ多分自覚ないよ!」
「何がシズクを甘やかすなよ自分が
一番甘やかしてるじゃない!」
ミーナとナイトの視線の先には
普段の鋭い目つきを緩ませて
幸せそうに口元を笑ませるハイネの笑顔が
あった。
その笑顔に他にスケートをしていた
女性達が見惚れて居るがハイネは
気付かない
こうしてシズクの苦手克服大作戦は
今日中にとはいかなかったがスケート靴で
ゆっくりとだが補助無しでも滑れる様になったのだった。
これまでずっと(番外編)⑨その2
●ハイネのムチ(最終的にはアメ)
今日は、四人でスケートに来ていた。
ハイネは、別にスケートなんてどうでもよかったがいつもの如く押し切られ
流される様に付いて来た。
そうしてスケートリンクの上を楽しそうに
滑っている人を横目に眺め
自分の連れの三人を眺めていると....
「....ごめんね....ミーナ....ナイト...」
「良いのよ初めてなんだから最初は
皆こんな物よ」
「そうそう寧ろちゃんと歩けて
シズクは、偉いよ!」
などとふんわりとした暖かい空気を
纏いだす三人
シズクの笑い声まで漏れてきて
楽しそうな雰囲気を醸し出していた。
ハイネは、そんな空気を目にして
(温ィ~)と思っていた。
(あの二人シズクに甘くないか....)
何より現状に満足して楽しそうにしている
シズクの笑顔がハイネには気に食わなかった。
「テメェらチンタラチンタラ滑ってんじゃねェ!」
「何よ良いじゃない別に....」
ミーナがハイネに文句を言うが
ハイネは言葉を続ける。
「テメェら二人シズクに甘すぎだろう!
シズクテメェもミーナやナイトに
甘えてないで自分で滑れる様になれ!」
ハイネの言葉にシズクは、何かを思い出した様にハッとなり「うん....頑張る....」と
答える。
シズクのその言葉にハイネはニヤリと笑い
「よし!その言葉に嘘はねェなあ
だったら俺が今日中に滑れる様にしてやる」
シズクは、ハイネの言葉に小さく拳を
握り「よろしくお願いします....」と
答えるのだった。
その後シズクは、バランスを崩しそうに
なり悲鳴を上げながら何度も転んだ。
「ほらどうした もう終わりか!」
途中ミーナが駆け寄りそうになったが
ハイネが大声を出してそれを止める
「お前ら駆け寄るんじゃねェ邪魔だ
向こう行ってろ!」
「ハイネやり過ぎよシズクが可哀想じゃない」
「うるせー俺のやり方に口出しすんじゃ
ねェ」ミーナを一喝しハイネはシズクへの
指導を続ける。
「シズク下向くな真っ直ぐ前見ろ
軸がぶれてんぞ」
シズクの姿勢が真っ直ぐに伸びた時
シズクの体が補助無しで前に進んだ。
シズクは、嬉しくなり
思わずミーナとナイトの方を見る。
その瞬間(あの馬鹿...)とハイネはスケート靴のまま滑り駆けた。
気がつくとハイネは、シズクの小柄な体を
抱き締めていた。
「ったく調子に乗るんじゃねェよ!」
呆れた様にシズクを見ると
「ごめんなさい....」と泣きながら縋る
様にハイネにしがみ付いていた。
ぐずっ ぐずっとハイネの胸に自分の顔を
埋めて泣きじゃくるシズクの声を聞いて
ハイネは自分でも良く分からないが
シズクの泣き顔を見たい衝動に駆られる。
シズクの顔を自分の方に向かせると
涙の跡がシズクの白い頬に筋を作って
いた。
丸い大きな瞳から大粒の涙の雫をいくつも
溢れさせるシズクの顔が可笑しくてたまらない 思わずハイネはシズクの耳元に
「馬~鹿」と囁く
シズクはそんなハイネをキョトンと
見上げる。
そんなシズクの表情がハイネには可笑しくてたまらない
ハイネは自分では気付かぬ内に
優しい笑顔になっていた。
何だかシズクの泣き顔をいつまでも
眺めていたいと思うハイネだった。
1件のLINE
ピコンと音が鳴って、1と書かれた赤い
ピンマークが1件のLINEが来た事を知らせる。
何だろう?と何気なく開くと
こんな訳の分からないメッセージが
書かれて居た。
『このLINEのメッセージを開いたら最後
一週間以内に他の人にメッセージを回さないとその二週間後に死ぬ』
by呪いのLINE
そんな巫山戯たメッセージが俺のスマホに
入っていた。
あ~一昔前に流行っていた呪いの手紙の
LINE版ね!とホラーマニアの友達の顔が
浮かぶ。
俺は、スマホを動かし
『もし俺が死んだらお前の家に化けて
出てやるから安心しろ!』と返してやった
しばらくして その友達から
『お前の執念ハンパねェ』と返って来た。
そうして数分間 俺と友達の下らない
やり取りは、続いた。
目が覚めると
気が付くと一面お花畑の場所に立って
いた。
ここは、どこだと視線を彷徨わせ首を
動かして辺りを窺うと遠くの方で
「お~い」と呼ぶ声が聞こえた。
目を凝らして声の方向を見ると
俺は、確信する。
嗚呼 これは夢だと....
そして 早く目が覚めないとこれは
やばい奴だと....
だって「お~い」と俺を呼ぶ声を
発しているのは 去年と 一昨年に
それぞれ亡くなった
おじいちゃんとおばあちゃんだった。
嗚呼 これ二人が呼ぶ方に行ったら
完全に俺もあの世に行く
目が覚めるには、どうしたら良いんだ?
ほっぺたを抓ってみるが夢なので
痛く無い
早くしないとおじいちゃんとおばあちゃんの輪郭がはっきりして来て像を結んで来て
居る。
自分の視覚が二人をはっきり認識する前に
此処から出ないとやばい....
え~とつまりあれだ
二人が呼んで居る方向の逆方向に進めば
良いんだと俺はおじいちゃんおばあちゃんに背を向けて道を戻り始める。
するとだんだんと道が明るくなって行き
光の入り口みたいな物が見えて来た
俺は、一か八かその光に飛び込む
そして次に目が視界を捉えた時
俺の目に映ったのは、白い天井と
病院のベッドに寝かされてる自分
誰かがすすり泣く声だった。
どうやら俺は間に合ったらしい
おじいちゃんおばあちゃんには悪いけど
まだまだそっちに行くのは先延ばしにしたい
俺は、ギリギリセーフでこの世に戻って
これたらしい....
嗚呼 目が覚めて本当に良かった。....
私の当たり前
私の当たり前は、君 いつだって君が
側に居る事が私の当たり前なんだ
だから...私が側に居る事が貴方の当たり前になってると良いなあってささやかな
願望を抱いてしまう....
「おはよう~」君が起き出して私に声を
掛ける。
私も「おはよう~」と返す。
こんな何でも無い当たり前の日常が
君と一緒に居られる日常がいつまでも
続けば良い....
出来るだけ長く続けば良い....
それが私が心の中で願う
当たり前の願い事
だから 神様どうかこの願いを叶えて下さい。
いつまでも いつまでも彼と居させて下さい。
そうして 永遠に眠る時も彼の隣で
眠らせて下さい
他には何も要りません
当たり前だけをどうか永く
よろしくお願いします。!!
街の明かり
煌々と輝く街の明かり 街灯
イルミネーション ネオン
家々の明かり
明かりの数だけそれぞれの物語がある。
夜の街の始まりの明かり
就寝前の仄かな明かり
家庭の団らんの暖かな明かり
それぞれの中のそれぞれの明かり
さあ明かりのスイッチを押して
物語の明かりを付けよう!
街の明かりが物語のページを開く
今日は、どんな物語が始まるのだろう
わくわくしながら
街の明かりの1ページ目を開く
物語の明かりを辿って....。
まずは、物語の序章に辿り着こう。
其処には、きっと笑顔の明かりが
灯って居るから....。