眠れないほどの続き
半袖
暑い夏の日差しが続き衣替えが始まり
半袖の白い制服のシャツを着て登校する
生徒が増えて来た。
隣の席のあの子を見る。
半袖のシャツから覗く白い腕に視線を
向けてしまう
あの子の視線が僕を見る。
僕は視線を合わせ無い様に自分が読んでる
本に視線を落とす。
井上帆乃香さん僕の好きな人
図書館で何の因果か奇跡的にデートが
出来る様になってあの時は本当に
天国に居る気分だったのに
学校で隣の席に座る関係になったら
また元に戻ってしまった。
友達と話している彼女の笑顔は何にも
代え難く可愛くて僕は読書をしては
横の彼女に視線を向ける。
友達とお喋りに興じては、彼の読書をする
横顔を盗み見る。
私の好きな人 橘斎君 図書館に一緒に
お出掛け出来たのは本当に嬉しかった。
衣替えをして半袖の制服シャツになった彼の首筋から覗く鎖骨 喉仏 上着を
着ていた時は分からなかった
引き締まった腕 決して筋肉が凄く
盛り上がっている訳では無いけれど
男の子だなあと思う大きな手
そんな彼の体つきをまじまじと見てしまい
彼と視線が合う前にまた横を向いて
友達とのお喋りに戻る。
あんなに楽しかった図書館のお出掛けも
学校に行ったらまた元に戻ってしまった。
連絡先を交換したのに.....
(私の馬鹿....) (僕の馬鹿....)
僕は読書をしながら小さくため息を
私は友達とのお喋りを続けながら内心で
ため息を┘┘吐いたのだった。.....└└
天国と地獄
此処は、あの世 死んだ人が地獄行きか
天国行きか決められる閻魔様の庁舎から
少し外れた道に二つの温泉宿屋がありました。
右側の宿屋の呼び込みが声を張り上げて
言いました。
「まるで天にも昇った様な心地になる
天国風呂だよ 生者の内に昇天されて
死者になっても夢心地の快楽が得られる
昇天風呂なんて早々無いよ 寄ってきな
寄ってきな」とそれに負けじとつられる
様に左側の宿屋の呼び込みも声を張り上げます。
「地獄の釜茹で地獄なんて目じゃ無い
家の地獄の釜茹で風呂は熱いの何のって
これに一度入れば病みつきになって中毒に
なっちゃうよ 地獄の釜茹で地獄なんて
温く感じる位さ さあ命知らずなスリルを
味わいたい死者は家の宿の温泉に寄っといで!」
「こらあ~っこんな所で商売して
客を呼び込むなあ~!
閻魔様の沙汰がある庁舎に行く列の者が
崩れるだろう~」
「お役人様勘弁して下さい あっしら
生きていた頃から商人だったもので
その性が抜けないんでさ~」
「地獄の沙汰も金次第と言うじゃありませんか地獄に行くにしろ天国に行くにしろ
一時の欲を此処で洗い流せれば死者にも
覚悟が生まれると思うんです
誰だって天国行きを望んでいるのは
百も承知 好き好んで地獄に行く奴は
稀でさあ~」
「でもこうやって娯楽にしてしまえば
地獄行きが決まっても心に余裕が
生まれるってもんでさあ~」
「一応地獄行きが決まった死者にも
天国を味わって貰おうと
天国風呂も作りましたさあ~」と二人の
呼び込みはニコニコと揉み手をしながら
お役人に言う。
お役人はため息を吐き呆れ半分苦笑半分で
二人に言い聞かす。
「ちゃんと許可は取っているのか?」
「それはもちろん」二人は揃って頷く
「分かった許そう 但し声を掛けて
呼び込んで良いのは天国行きか地獄行きか
沙汰が決まった死者だけだ分かったな!」
「承知しやした!」二人はにこにこと
同時に頷いたのだった。
三日月の続き
月に願いを
私 滝本月菜(たきもと.つきな)16歳
高校1年生
私には、願いがあるそれは、私が所属する
黒魔術研究部を存続させる事
しかし現実は厳しく部員は、私一人だけ
顧問の先生はのほほんとして良い先生だけどこう言う時には、あまり役に立たない。
黒魔術 またはオカルト 超常現象でも可
とにかく神秘的で不思議な出来事が小さい
頃から大好きだった私は皆が怖がる
お化け 悪魔はたまた吸血鬼などが
大好物である。
人々には馬鹿にされるけど私はそう言う
現象に一度で良いから出会ってみたい
「そんな事 現実に起きる訳ない
そんなの当たり前じゃん」と言われるのが
殆どそんなの分かってると納得するのは
簡単だ だけど私は信じたい
悪魔や吸血鬼お化けと言う存在を
だから私は願った
綺麗な満月の晩 窓越しで手を合わせ
一生懸命に....
(神秘的で不思議な出来事に出会わせて下さい) そうして月の神様は、
私の願いを聞き届けてくれた。
そう私の学校に転校生が来たのだ しかも
7人も....
私のクラスにもその転校生は割り振りられた。
赤髪と焰の様な瞳のサラマンダー君
怜悧な氷の瞳と青髪のグエル君
黄金色に輝く黄色髪のバーナード君
この三人が私のクラスに転校して来た。
三人の人間とは思えない整った顔立ち
男女問わず魅了するその容姿に私は
予感めいた物を感じた。
クラスの皆に囲まれ当たり障りの無い質問に笑顔で返すサラマンダー君
気怠げに返すバーナード君
何かを吟味する様に一人一人に視線を向けるグエル君
私はその三人をじっと凝視していた。
そして青髪の青年グエル君と目が合った。
私は盗み見していた後ろめたさから
ぐるんと首を大げさに逸らしてしまう
変に思われたかなあと心配してまた覗き
込んでみるが変わらず会話は続行されていた。
私はあの三人を見て欲が出た。
あの三人を黒魔術研究部に勧誘したいと
そしてこれは勘でしか無いが
あの三人を巻き込む事が出来れば
神秘的な出来事に出会えるのでは
無いかと言う想いが私の頭を駆け巡った。
放課後
「やはり考え直した方が良い!人間の
学校に通うなど」眼鏡をかけた緑髪の
青年が眼鏡を押し上げながら言う。
「え~でももう入っちゃったし!
後は卒業するまで楽しむだけじゃん」
サラマンダーが両手を横に上げながら
言う
「しかし人間って何でもかんでも知りたがるよねェー僕もう疲れたよ~」
バーナードが欠伸をしながら応える。
「でも美味しそうな人間も何人か居たよ
少し位 血を吸ってもバレないんじゃない
疑われたら都合の悪い記憶をけしちゃえば
良いし」グエルが物騒な事を自然と呟く
「グエルそう言う発言は慎め誰が聞いてるか分からないんだぞ!」
眼鏡を掛けた緑髪の青年
アカーシャがグエルを窘める。
「アッハハハ!とか言ってアーちゃん
自己紹介の時緊張してたじゃん!
横で聞いてた俺様 噴き出さない様に
するの苦労したぜ!」
紫髪の青年ヴァルドが大口を開けて
アカーシャを揶揄する。
「黙れヴァルドお前こそ何だあの不遜な
態度は完全に目立ってただろうが!」
「こそこそしたって仕方ねぇって
第一印象で舐められたら終わりだろう!」
五人の会話の中最後に呟いた顔立ちの
よく似た双子の銀髪の青年二人
「ねぇ.....これ....」「拾った....」
「何だカイル カインまた何か拾ったのか
お前ら二人は良く物を拾って来るなあ」
アカーシャが呆れた様に双子を見る。
其処には黒魔術研究部 部員求むと
書かれたチラシがあった。
「黒魔術?見るからに怪しい?」
「僕達を滅するために作られた敵対勢力とか?」
バーナードとグエルが疑いの目を向ける。
「へえ~人間の中に僕達を敵に回そうって言う勢力があるとはね」
サラマンダーが面白そうな表情で言う
「あるいは俺達の他にも人間界に降りて居る同族が居て俺達を追って来たか
窘めに来たか矢張り無闇矢鱈に人間界に
降りたのが間違いだった」
「面白そうじゃん敵状視察に行こうぜ」
ヴァルドが立ち上がる。
その行動を見て五人も立ち上がる。
唯一人アカーシャだけは....
「全くヴァルド何でお前は無茶な提案しか
しないんだ」そう言ってアカーシャも
立ち上がる。
それを見てヴァルドはニヤリと笑い
「決まりだな!」
こうして7人の吸血鬼の勘違いから
一人の人間の少女との交流と言う邂逅が
始まるまでそう時間は掛からない。....
降り止まない雨
さっきからざあざあとどしゃ降りの
様に降り止まない雨
「雨止まないね」隣に居る君が暇潰しの様に僕に話し掛ける。
僕と君は立ち往生していた。
「うん そうだね」僕は君の問いかけに頷く
このまま止まなかったら傘が役に立たなそうなので最悪走って帰るか
電話して親に迎えに来て貰うか
決めなければならない
向こうも同じ考えに至ったのか
携帯電話を持って連絡していた。
その様子を見て僕はため息を付いた。
やっとこの空間から解放される安堵の息と
同時にもっと君とこの雨の檻に閉じ込められて居たかったなあという残念と言う
ため息だ
まぁ僕の勝手な一人よがりなんだけど
電話が終わった君は嬉しそうに僕に
話し掛けた。
「やっと帰れるね!」その笑顔を見ながら
僕も薄く笑って「うん...そうだね」と
答えたのだった。
あの頃の私へ
深夜 寝静まった頃 不思議な夢を見た。
あの頃の私と対話する夢
「え~あんた私なの!ババアじゃん!」
それを聞いた 私は口元を緩めた。
(あ~そう言えば昔 こう言う口調だったなあ....)
なんか暴言を吐かれたのに懐かしいなぁと
感慨に耽っていた。
そんな私の表情を見てあの頃の私は唇を
尖らせて不満を露わにする。
私は、大人に考えを押しつけられるのが
大嫌いなすれた子供だった。
私の表情を見てあの頃の私はちっと
舌打ちをして「私つまんない大人に
なるんだねぇ」
つまらない大人.....
父は家庭を顧みない仕事人間の人だった。
母はそんな父に抗えず父の言いなりの
人だった。
毎日父は怒鳴り母は泣いていた。
世間体を気にして離婚届けに判を押さない
父と父の機嫌を伺って離婚して下さいと
強く言えない母そんな光景が私の家庭の
日常茶飯事だった。
どちらも堂々巡りで一向に解決しない
まだ未成年だった私の存在も離婚をしたい母と離婚を許さない父の足を引っ張っただろう
そんな環境で育った当時の私が大人を
信じられないのも無理な話だ
たとえそれが大人になった私自身でも....
それでも私はあの頃の私に向かって
一言だけ告げる。
「大人になったら其処から自由になれるから大丈夫!」
あの頃の私は目を丸くして私を見ていた。
あの頃の私には理不尽な言葉に
思えるだろう。
大嫌いな大人にならなければ其処から
抜け出せないと言ってるのと同じだからだ
でもどうしたって子供の内は大人の許可が
必要でどんなに拒絶しても認めたくなくても大人の力がなければ生きて行け無い
大人 それだけでなにもかも自由になる
訳では無いけれど....
それでも今の私は愛しい人 一緒に居たい人 守りたい人が出来て幸せだから
貴方にも頑張って此処まで来て欲しい
大人の勝手なエゴで勝手な願いだ
でも....「大丈夫!!貴方なら出来る!」
勝手な励ましの言葉を私に告げて
私の夢はそこで終わった。
目を覚まして夢から覚めると
(何だか結局 説教じみちゃうんだよなぁ.....)
大人になった私は、結局自分の考えを
昔の私に押しつけただけで
あの頃の自分の両親と同じ事をしてしまった。
けれど....
「ママ~」廊下からそんな声が聞こえて来た。
幸せになれる事は間違いないから
それだけは確信を持って本当だと
自信を持って言えるから
だから.... 此処まで来い 私!!