初恋の日の続き
恋物語
不遇の扱いを受けた主人公がお城の王子様と結婚する。
身分違いの恋 幼馴染みとの恋
遠距離恋愛 年の差の恋
世の中には、色々な恋物語が溢れている
ロマンス小説 恋愛映画 ドラマ
そんな恋物語を見るのが
シズクファーラムと言う少女は好きだった。
確かに恋が叶わない失恋の物語もあるけれど きっと恋は楽しい事ばかりでは
無いのかもしれないけど でも仲間である
ミーナやナイトの仲良しぶりを見ると
心が温かくなり微笑ましくなる。
二人の幸せを心から願いこれからもその
幸せがずっと続く様に祈る。
シズクにとって仲間達が幸せそうにして
居るのが大好きだった。
いつまでも皆と一緒に居たいけれど
でもいつかは皆と一緒に居る時間は
終わってしまう事もシズクは
分かっていた。
ミーナとナイトはきっとこれからも一緒に
居るだろう
ハロルド局長やマリアさんも帰る家や
帰りを待つ家族が居るだろう
そしてきっとハイネにもいつかずっと居たいと思える人が現れるのだろう
その時シズクは実家に帰らなければ
ならなくなるだろう
シズクはそれを思い気持ちが沈んだ。
実家の事を思うとシズクは
申し訳無い気持ちになる。
『ごめんなさい.... ごめんなさい
お父さん お母さん 弱くてごめんなさい』
治癒術を使えても大きい怪我は治せない
力は弱いし戦う力も無い
いくら術の練習をしてもシズクの力は
それ以上 上がる事は、無かった。
私は、いつも誰かの足でまといにしか
なれない
それでも自分の出来る事を頑張ろうと
決意したばかりなのに....
また気持ちが揺らいでしまう....
『君は誰かを不幸にする君に向けられた
好意を台無しにする だから君は
誰も好きになってはいけないよ
特別を作ってはいけないよ』
シズクは頭を振る。
(私は....皆が....好き.... 皆が....幸せ...
なら.....私も....幸せ)
恋と言う物はまだ分からない
いつか分かる日が来るのかも知れ無い
けど.... でもそうなっても私の恋は
叶わなくて良い.....
そんな事をシズクが考えて居たら....
ドアが開く音が聞こえた。
「あんた こそこそしてないでいい加減腹決めなさい!」
「そうだよ せっかく此処まで来たんだから会いに行けば良いじゃない!!」
ミーナとナイトの声が聞こえる
何だろうとシズクが首を傾げていると
ミーナとナイトに押されて前に出て来たのはハイネだった。
シズクはいきなり目の前に現れた
ハイネに目を丸くする。
何だかハイネと会うのは久しぶりな気がする。
体調が良くなったみたいでシズクは
ほっと安堵した。
「ハイネ....良かった....元気に....なって...」シズクはハイネにそう声を
掛けたがハイネは無反応だった。
しかも目を逸らしたままだった。
しかしシズクにとってハイネのそんな
態度はいつもの事なので特に気にしてなかったのだが
ハイネの腕が自分の頬に伸びて来た
元気になったのは良いがまた頬を
つねられたり髪の毛を引っ張っられたり
意地悪をされるのかと思ったら
シズクの肩はびくんと上がり
身構えた。
しかしシズクの予想に反してハイネの手が
シズクの頬をつねる事はなかった
それどころか優しく髪の毛を指先で梳き
頬にそっと手を添えられる。
「テメェ何で泣いてんだよ!」
「え....」そう指摘されシズクは初めて
自分が涙を流している事に気づく
そうしていつの間にかミーナとナイトの姿は無くハイネと二人きりだったと言う事にも....
「な....何で....だろう 分から...無い
目に....ゴミが....入ったの....かなあ....」
「ちっだったらもっと大声で泣けよ
分かりづれェんだよ!」
ハイネにそう言われてもシズクは大声では泣けなかった。
しかし意識してしまった涙は拭いても拭いても流れてきて止められなくて
シズクはどうすれば良いか分からなくなって居た。
するとハイネに突然腕を引っ張っられ
引き寄せられ気付けば自分の体がすっぽりとハイネの体に包み込まれていた。
シズクがびっくりしてハイネを見上げると
ハイネは口元を上げてしてやったりの笑顔を浮かべた。
「お返し」とハイネが呟く
シズクはお返しって何の事だろうと
疑問符を浮かべたが ハイネの暖かな
腕の中に居る今だけは何も考えず
ただ自分の涙が止まるまでハイネの腕の力は緩む事は無くシズクはハイネに自分の身を預けたのだった。
シズクファーラムと言う少女の恋物語は
まだ始まってはいない
いやもしかしたらこれから始まるのかも
しれないそれは誰にもシズク本人にも
まだ分からない事だった。
恋物語②
ハイネは久しぶりにバインダー局に顔を
出したもののさっきからロビーの辺りを
うろうろしてるだけで一向に中に
入れなかった。
(やっぱり辞めよう....)と心の中で何回も
思ってそれでも踵を返す事が出来ず
立ち止まってはうろうろを繰り返していた。
(いきなり入って顔を合わせたらどうしよう....) いやでもだいたい部屋に入ってる
だろうし 出入り口で本人に会う確率なんて低いはず.....
そう思いなけなしの勇気を奮いドアを
開けるハイネ
其処には目を吊り上げ腕組みして
怒ってるミーナと苦笑してやれやれと首を振るナイトの姿があった。
ハイネは、二人の表情を見てたじろぐ
「あんた一ヶ月も休んで何やってんの!」
「まぁだいたい休んだ理由も想像付くけど
シズクも心配してたよ....
何回も様子を見に行った方が良いか
聞いてきたし まぁ今シズクに会うのは
ハイネには酷かなあと思って大丈夫だよって言って止めといたけど.....」
「今シズク呼んで来るからちゃんと
シズクにも顔見せなさい心配してたんだから!」ミーナがシズクの部屋に行こうと
したのでハイネはミーナの腕を引っ張り
止める。
「呼ぶな....」それを聞いたミーナは
「はあ!っ💢」と声に怒気をはらむ
しかしハイネはもう一度懇願するように
「よ....呼ばないで下さい お願いします...」
それを聞いて二人は呆れる。
此処まで来といて何言ってんだこの男は
最早恋愛下手を通り越してただのヘタレだった。
二人はハイネに任せていたら埒が明かないと二人でハイネの腕を引っ張り
「あんたこそこそしてないで良い加減 腹
決めなさい」
「そうだよせっかく此処まで来たんだから会いに行けば良いじゃない」
二人でシズクの部屋のドアを開け
ハイネを押し出しドアを閉める。
二人に押し出され出るに出れなくなったハイネ
おまけにドアが閉まり際に二人に
「ハイネ 君そろそろ....」
「シズクに告白しなさい!」
なんて言われたものだから
ハイネの心は落ち着か無かった。
「ハイネ.....良かった....元気に....なって...」
シズクの声が聞こえハイネの体は
びくんと固まり何も返せなかった。
目線もうまく合わせられなかった。
(はぁ....っ こっ告白とか なっ何言ってんだあいつら....)
ハイネは、シズクの表情に少しだけ
目線を合わせた。
するとシズクのその表情を見て....
ハイネは思わず腕を伸ばす。
シズクの髪の毛に指先をかけ優しく梳く
様に髪の毛を撫でる。
そうしてそっとシズクの頬に手を添える。
「テメェ何で泣いてんだよ!」
「え....」ハイネの指摘にシズクは今自分は
気づいたみたいに目尻の涙を自分の手で拭く 「な....何で....だろう....分から....
ない....目に....ゴミが....入ったの....かなあ....」
そんなシズクの言葉に何だかハイネは胸が
痛くなり腹が立った。
(何だよ今まで一人で泣いてたのかよ...
今気づいたみたいに分からなかったみたいに言うなよ 無自覚で泣くなよ
何でこいつはいつも人の事は嫌になる位
心配するくせに自分の事は無頓着なんだよ)
「ちっ だったらもっと大声で泣けよ
分かりづれぇんだよ」
そうハイネが声を掛けてもシズクは涙を
拭いて静かに泣くだけだった。
(もっと俺がお前を泣かす時みたいに
大声で泣けよ 嫌いでも馬鹿でも良いから
俺を拒絶した時みたいにわがままでも
やつあたりでも良いから俺を捌け口に
しろよ クソっ馬鹿シズク)
ハイネはたまらなくなりシズクの腕を
引っ張り自分の体でシズクの小柄な体を
包み込んだ。
あんなにシズクに触るのを躊躇していたのに....
(何だかあの時と逆だなあ....)
シズクに優しく抱きしめられたあの時と....
ハイネは思わずしてやったりの表情を
浮かべ「お返し」と呟いた。
シズクは混乱した様に目を丸くしていたが
そんなシズクの顔を見てハイネは抱きしめた腕に力を込めた。
シズクが泣き止むまでハイネの腕の力が
緩む事は無かった。....
ちなみにハイネは結局シズクに告白は
できなかった。
しかしシズクの部屋に入る前と後では
入った後の方が明らかに落ち着いていて
無言だった為 何か良い事があったなと
察したミーナとナイトは 今日の所は
ハイネをこれ以上急かすのを辞め
またいつもの様に二人を見守るのだった。
真夜中
真夜中 深夜2時目覚まし時計がピピピッと鳴る。
私は、眠い目を擦り欠伸をしてパジャマから普段着に着替える
外は、夜風で冷えるので厚いブラウスを
羽織る。
待ち合わせ場所の公園のフェンスに寄り掛かっている待ち人君に声を掛ける。
「おそよう~」欠伸をしながら挨拶をする。
「私から呼びつけておいて何だが無理に来なくて良いぞ!」羽を広げて待ち人
喋るコウモリ君は囁く 私の周りを
飛びながら 「あっ良いの良いのどうせ
暇だし はい約束の鼠の死骸」私は堂々と
差し出す。
コウモリ君は羽を動かしながら口を大きく
開け鼠の死骸にかぶり付いた。
(うん うん大変だね夜行性の喋るコウモリって.... 家が古くて鼠が良く出るからって 駆除がてら食べてくれるのはありがたい)
この不思議なコウモリ君に出逢ってから
私は、毎日寝不足だ
だけどこの習慣を毎日止める事無く出来ている。
真夜中の秘密の餌付け行為が楽しくなって来ていた。
多分このコウモリが人語を喋り話し相手に
なってくれるからだろう...
学校の人間関係の愚痴とかコウモリには
関係無いし理解出来無い事も多いだろうに
このコウモリは意外と親身になって話を
聞いてくれるのだ。
だから私は、この奇妙で不可思議な時間が
好きだ
私が学校に登校し続けられるのは、
コウモリ君の人生相談のおかげだから
愛があれば何でもできる?
愛があれば何でもできる?と言っているけれど そもそも?マークが付いている時点で疑問形じゃ無いか 愛なんて曖昧で不確かで揺らぎやすいと証明しているものじゃないか
愛があれば何でもできるなんて確信を
持って言えてない以上一概にYESやNOで
答えを出す事も出来ない
しかし愛が無い人生は空虚でつまらない
愛しか無い人生は日常のサイクルが
破綻していくと思う
愛があればその人の為に何でもできると
問いかけてるけど
そもそも一方だけが愛を注いだって意味ないし お互いがお互いを思い合って
協力し合って自分が足りない部分や相手が
欠けている部分を補って行くそうやって愛を育んで人生を過ごして行った方が
結局は、その相手の為に出来る事が増えて行くと思うので愛がある無しに関わらず
生きている限り人との営みは切っても
切れないのだからそんな事考え無くても
良いと私は思う。
後悔
大人になっても 子供のままでも、
後悔は、募るばかり人生の選択肢の岐路に
立たされ 選ばなかった方に後悔したり
自分の気持ちを素直に言えなくて相手を
怒らせたり 逆に自分の気持ちを
心のままそのまま伝えたら相手を傷つけたり 生きている限り後悔の連続で
成功体験より 失敗して、挫折を繰り返す
方が多かったり それでも人は、人を
求めてしまうんだ 一人が好きな人も
寂しがり屋な人も この世界に住んでいる
限り 何十億人もいるこの惑星(ほし)で
社会と言う営みの中で日常を築いて
いる限り人と人が関わらないのは不可能で
だから失敗しても相手を傷つけても
ただその後悔を糧にして 見本にして
同じ事を繰り返さない様に学び直す為に
私は、後悔をこれからもして行くんだと
思う。
風に身をまかせて
あの青い空に浮かぶ雲の様にたまには、
風に身をまかせて自分の進む方向を
決めたい 何にも縛られず
何者にも囚われず 風の向くまま
気の向くまま 肩の力を抜いて
自由に 凝り固まった思考を放棄して
あの大きな空に身をまかせて飛んでみたい
きっと気持ちいいだろうなぁ....。