今日の心模様
今日の君の笑顔はまるで太陽を真っ直ぐ
見つめる向日葵の様に輝いている。
また次の日には妖艶な妖しい此方を
挑発する様な試す様な笑顔を僕に向け
刺を剥き出しにしてつんと澄まして
僕を困らせる。
まるで刺のある薔薇の様に僕を振り回す。
そしてまた別の日には小さく儚げな
静かな笑顔を向け悲しみを閉じ込めた
霞草みたいな笑顔を僕に向け
僕を心配させる。
いろんな君が居る。
一日一日いろんな君に出会える。
そんな一日が愛おしくて嬉しくて
たまらないんだ....。
たとえ間違いだったとしても
卒業式
桜が咲き誇る校門前で私は卒業証書を
胸に抱えながら 先生を見る。
「卒業おめでとう!」そう言って先生は
私に声を掛けてくれた。
「先生のおかげだよ」私は涙を零しながら
精一杯の笑顔を浮かべる。
そうして最後にこの3年間欠かさず先生に
伝えた言葉をまた私は変わらず先生に
伝える。
「先生 好きだよ!!大好き!」
「嗚呼 俺もお前の事は誇らしい大切な
生徒だ!」
そう言って先生は、私の頭を優しく撫でて
くれた。
私は下を向いて先生に顔を見られない様に
涙を流した。
「じゃあ!!先生元気でね!!」
私は先生が誇ってくれた立派な生徒に
見える様に校門の門を潜り
先生に大きく手を振った。
先生も同じ様に大きく振り返す。
そうして涙を振り切って
大きく前を向く
もう先生の方には振り返らない
たとえこの気持ちが周りから見たら間違い
だったとしても....
私の3年間の恋心は無駄じゃない
後悔なんかして居ない
先生ありがとう先生を好きになれて
良かった。
10年後 20年後 私が素敵な大人の女性に
なって先生がびっくりする位格好いい素敵な人を連れて また先生に会いに来たら
「おめでとう!」また変わらない笑顔で
私の事を祝ってね
私 先生が羨む位に幸せになるからね!!
だからどうか先生も奥さんといつまでも
幸せでいてね
私の3年間の思いを色づかせてくれた
私の初恋の人
いつまでも笑っていてね
それが貴方の生徒であった私の
色褪せない願いだから....。
沈む夕日の続き
雫
パラパラと雨が降り雨の水が水滴になり
木々の葉っぱや建物の屋根に溜まって
雫となって地面に落ちる。
そんな疎らな雨の日だった。
ハイネはトレーナーのパーカーの
フードを被り自宅のソファーに膝を抱えて
寝転がり蹲って居た。
そうして 酷く不機嫌だった。
昨日から視界が黒く靄がかって居たからだ
眼鏡のレンズ越しで見れば消えるそれは
普通の視界では無いのだろう。
幼い頃から魂の色を見る事が出来る
特殊な目を持つハイネは時々こう言った
現象に悩まされる事があった。
特にこう言う天気が悪い時は
たまに起こる現象だった。
それは、生者のマイナスな思考
ネガティブな考え方とでも
言えば良いのか
生きている者の愚痴 本音 嫉妬
羨み 見下し 蔑みなど生きている
者のマイナスな色の感情を受け取って
しまうのだ。
今も家の中で一人きりなのに
壁越しに通行人でも通ったのだろう
その人達の負の色を受け取ってしまって居た。
でも視界だけなら眼鏡をしていれば
見えないので何ら問題は無いのだが
厄介なのは負の感情が直接頭の中に
流れ込んで来る事だった。
時々起こるこの現象厄介なのは普通の
病気では無い為薬も治療法も無い事だった。
バインダー専門の医療機関もあるには
あるがまだまだ特異な体質や現象に対して
研究中な事も多くハイネみたいな
特異体質な人は稀な為あまり治療も出来ない
なのでこの現象が起きた場合ひたすら家に
引きこもり一日が過ぎるのを待つしか無い
外出したら人の負の感情が流れ込んで来て
直接頭の中で声として響く為ハイネに
とって鬱陶しく億劫だった。
しかしこの現象は本当に時々で
この現象が起きた一日だけ乗り切れば
また元に戻る為今日一日外に出なければ
良いだけの話だったのでハイネは
不機嫌になりながらもひたすら引きこもり
今日一日は仕事が入ってもキャンセルする
つもりだった。
しかしそんな外に出たくない時に
限って訪問客と言う者は
やって来るもので....
ピンポーン
家のチャイムが鳴った。
しかしハイネは無視を決め込む事にする。
しかしチャイムは中々鳴り止まない
何だこの非常識なチャイムの鳴らし方は
とハイネは苛々してきたが我慢して耐え
無視をしていたが....
玄関のドア越しに絶対に身近には訪問して
来ない けれども馴染みのある声が聞こえた。
「はー君居る?遊びに来ちゃった!」
ハイネはその声にびくんとして起き上がる。
自分の事をそんな風に呼ぶのはハイネの
知る限り一人しか居ない....
ハイネは今すぐ家から逃げ出したい
衝動に駆られる。
しかし続いて聞こえて来た声に....
「ハイネ居る!」
「ちょっと何で出て来ないのよ大丈夫なの!」
お馴染みの二人の声が聞こえ....
ハイネは反射で玄関のドアを開けた。
「久しぶりね貴方はー君の家に入るの!」
「そうだな!」
そこには可愛らしい感じの30代位の女性と
精悍な顔付きの40代位の男性がソファーに
座って居た。
そうしてソファーからそれぞれ空いている
スペースにお馴染みのメンバー三人
「しかし驚いたね!」
「本当まさか街中で偶然声を掛けられたのがハイネのお父さんとお母さんだったなんて!」
「改めて自己紹介しますね はー君の
母のリンネクラウンです気軽にリンちゃんって呼んでね そうして私の隣に座ってる
格好いい人が私の愛しの旦那様
はー君のお父さんハイルクラウンさん
私は貴方もしくはイルさんって呼んでいるわ!皆も気軽に呼んであげてね!!」
「宜しく頼む!」両親の自己紹介に
周りが盛り上がって居たが
ハイネは心底早く帰って欲しかった。
(よりによってこんな時に来るなよなぁ...)
「あらミーナちゃんとナイト君は恋人同士なの良いわぁ~若いわぁ~!」
リンネが頬に手を当てて二人を
微笑ましい顔で見つめる。
ミーナとナイトが照れた様に笑って
「有難うございます。」と声を揃える。
「シズクちゃんは大人しいわねぇ
それにとっても可愛いわぁ~」
シズクはリンネの視線にどぎまぎしてしまう 「あっ....ありが...とう...ごさい...ます...」
ハイネは鋭い視線で両親が三人に
余計な事を言わないか見て居たが 不意に
.... 「っ....」ハイネは頭を抑えて
リビングの部屋から廊下側にそっと出る。
「ちっ....」頭が痛い 頭の中から
声が聞こえる。
『あいつ偉そうでむかつく』
『何であの子があの人と一緒に居るの
大して可愛くも無いのに....』
『死んじゃえば良いのに!』
「っ....」負の感情が 言葉が頭に
流れ込んで来る。
黒い靄が眼鏡の隙間から闇を湛えて
ぽっかりと口を開けて居た。
その闇に負の言葉と一緒に引っ張られそうになる。
ハイネは目を瞑る。早く一日が過ぎれば
良いのに....
ハイネは無意識に今一番側に居て欲しい人の名前を呟く
「シズク....」ハイネは廊下に座り込み
腕で顔を覆う。
自分が泣きそうになってるのが分かり
情けなくて顔が上げられ無い。
するとふわりと優しい温もりがハイネの
頭を撫でる。
「ハイネ....大丈夫?....具合悪いの?」
シズクが蹲って居るハイネと目線を
合わせてハイネの頭を優しく撫でて居た。
「っ....」ハイネは涙を見られない様に
眼鏡を押し上げる。
そうして自分の頭を撫でて居るシズクの
腕を取る。
「大丈夫だから向こう行ってろ!!」
また心にも無い事を言ってしまう...
本当は側に居て欲しいのに....
「で....でも....」シズクはハイネの言葉に
躊躇う。
「良いから向こう行け!!」ハイネの
言葉に従ってシズクは踵を返すがしかし
また戻って来て今度は自分の胸に
ハイネの頭を抱えて抱きしめた。
「なっ....」これにはハイネも予想外で
言葉が止まる。
「ハイネが....大丈夫でも.... それでも....
ハイネが皆の所に戻りたいって思うまで....
私も....此処に....居る....」
その言葉にハイネは目から涙が雫になって
流れそうになるが眼鏡を押し上げて
誤魔化す。
「何だよそれ...うぜえ....」
ハイネは自分の腕をシズクの背中に回して
抱きしめ返したい衝動に駆られるが
それをすると自分の気持ちが溢れそうで
怖くて出来なかった。
そうして 雨も上がり晴れ間が覗いた頃
ハイネの両親の見送りに皆が立った。
「今日はありがとうね!はー君の
お友達と喋れて楽しかったわぁ~」
「ハイネたまには実家の方にも来て良いん
だぞ!」
「行くかよ面倒くせェ!」ハイネは父親から視線を逸らしそっぽを向く
「それじゃあ皆今日はありがとね
さようなら!」
そうしてクラウン夫婦は背を向けて
駅の方へ去って行った。
そうしてハイネの家から遠く離れた後
クラウン夫婦は話し出す。
「あの子こう言う雨の日はたまに
情緒不安定になるから心配で見に来たけど
要らなかったわね!
あんなに心を開けるお友達が居るんですもの.... それに弱さを曝け出せる
大切な子も出来たみたいだし....
ああいう恋愛に不器用な所貴方そっくりね」
「何を言う俺はちゃんと君に気持ちを
伝えただろう...」
「其処まで来るのが長かったけどね!」
リンネの指摘にハイルは黙り込む
(そう言う所が似てるのよ!)
リンネはふふっとハイルを見て微笑む
そうしてクラウン夫婦は手を繋ぎ
息子の状況を知れて大満足だったのだった。
何もいらない
ふぅ~お腹いっぱい もう食べられないや
何だかお腹いっぱいになったら眠く
なって来た。
欠伸が一つ無意識に出る。
しばらくはもう何もいらない
とりあえず一眠りして
胃の中が消化されて
リセットされるまでは....。
もしも未来を見れるなら
もしもあの時の状況が事前に分かっていたら 僕は君の腕を引っ張って君を僕の方へ
引き寄せて抱きしめていたら
君は今僕の隣で笑っていただろうか.....
君が道路に叩き付けられたあの瞬間に
呆然と立ち尽くす事しか出来なかった
自分を許せるだろうか....
でもそんな事自分の気持ちを楽にさせる
言い訳にしかならない....
君はもう居ないそれだけがどうしようも無い僕への事実で罪なのだから
未来なんて見えたってその先に
君が居ないのであれば僕にとって
死んだ事になるのと変わりは無いのだから
嗚呼 ごめん ごめんせめて君の次生まれて来る世界が君にとって幸せな未来を
築ける世界でありますように....
それだけが君に罪を犯した
僕のささやかな願いだ....。