Saco

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3/19/2024, 12:53:07 AM

不条理

使い捨てられ ボロボロにされやっとの
思いで辞めた会社から電話が掛かって来た

「すまない 今までの事は謝る
謝罪として 戻って来てくれたら
給料を前の倍払おう」

その言葉で俺の心は益々沈んだ。
「社長 謝罪は受け取りました
しかしその申し出は結構です私は当社に
戻る気は一切ありません 失礼します」
そう言って俺は一方的に電話を切った。

がんじがらめだった心の鎖が
不条理を叩き返した事で全て断ち切られた。
俺は自分の机に戻り 今している新しい
仕事の続きに戻った。....。

3/18/2024, 2:24:56 AM

泣かないよ

「泣かないよ」そう言っていた君が今僕の
目の前で泣いて居る。
今まで堪えて来た分涙が後から後から
止めどなく雫となって君の頬を流れて行った。
僕は君の隣でそっと君の手を握る事しか
出来なかった。

煙突から煙がモクモクと空に上って行った。それを見て僕は君の手を握る手に
力を込めた。

3/17/2024, 3:37:49 AM

怖がり

「お兄ちゃんいる?」
「居るからさっさとすませろ!!」
と俺はトイレのドア越しに叫ぶ

と俺は今弟のトイレに付き合っている
昼間テレビ画面に何の気なしに流れていた
心霊番組の幽霊スポット特集や
心霊写真特集をたまたま側に居た弟も
一緒に見てしまい今になって怯えて
しまい一人でトイレに行けなくなって
しまったからだ。
俺は弟とは正反対でそのての番組に夢中に
なっていたので怖がって居る弟に気付け無かった。

弟の怖がりの性格は、俺なりに熟知して
居たので遠ざける事も出来たのだが
気づいた時には、もう遅く弟は
完全に固まり隣のテレビが無い別の部屋に
逃げ込むと言う考えも思い浮かばず
ましてやテレビから視線を逸らすと言う
簡単な方法すら思い浮かばないらしく
番組が終わるまでテレビを凝視ししていた。

そうして今に至っているのだが.....

弟がもう一度トイレのドア越しに
心配そうに聞いて来る。

「お兄ちゃん居る?」
「だから居るからさっさとすませろって」

「お兄ちゃんが幽霊って事ないよね?」と
弟が唐突に馬鹿な事を聞いて来た。
「此処まで手を引いてトイレまで連れて来てやっただろう? 幽霊は生身の人間には触れないだろう?それが答えだ」
それを言うと弟は安心した様に
「そうだよねぇよかったあ~」と水を流した音と共にトイレから出て来た。

そうしてまた安心させる様に俺は弟の
手を引いて自分達の部屋に戻る為
暗い廊下を歩き始めた。

途中暗い廊下にぼわっと軽く仄かに薄く
火の玉みたいな物が俺と弟を取り巻いて
いたが それを弟に言うと今度はトイレに
行けなくなる所か眠れなくなるので
俺は静かに黙って弟を部屋へと連れて行った。....。

3/16/2024, 12:23:28 AM

星が溢れる

広いベランダでプラスチックのテーブルと
椅子を広げて ガラスのグラスで炭酸系の
お酒を飲む色は透明その透明の液体の中で
炭酸の泡がシュワシュワとグラスの上に
上って行く。

ふと視線を上に向けると夜空に満天な星々が溢れんばかりに並んでいる。
グラスをその星空に向けるとまるでグラスに星を閉じ込めたみたいに炭酸の泡と一緒にグラスの上に上ってグラスから溢れるみたいに光を放ち輝きを主張する。
星の輝きをうっとりと見つめながら
私は、グラスの縁に口を付け星を飲み込んだ。
お酒のほんのりと甘くそして後からやってくる苦みも加わり顔から熱が上って来る。

溢れる程の星達がそんな私を輝きながら
見守り そして少し可笑しそうに笑っている様だった。....。

3/15/2024, 1:07:14 AM

安らかな瞳

病院のベッドに横たわる祖父ベッドの脇には親族が右にも左にも並んでいる。
祖父は、瞳を開いているが此処では無い何処かを見ている様な遠い瞳を天井に向けて
いた。
まるで祖父には見えない何かがみえる様に
天井のある一点を凝視し何かを悟った様に
ふっと口元を緩め瞳の中の光が一瞬だけ
煌めいて安心した様な安らかな瞳を天井に
向けた。
そうして祖父の瞳から急激に光が無くなって行く親族達がハンカチを目に当てて
泣き始めていた。
父は祖父の手を握り母は祖父に呼びかけていた。みんなが感情を剥き出しにして
祖父に最期の呼び掛けをしている。
祖父の意識の最期の最期まで呼び掛けを
止めない。
祖父の意識が途切れるまでたとえ言葉が理解出来なくても頭の奥の脳の信号に
届くと信じて....
そうして心電図が直線を描き祖父の瞳の
中の光が見えなく無った所で祖父は
旅だったのだと皆が理解した。
皆が泣き伏している中 私は唯一涙が
出なかった。

祖父の最期の満足した表情と安らかな瞳を
見たら何だか涙で送り出すのが失礼な
感じがしたからだ。
祖父は何の未練も無い顔を私達に見せて
安らかに逝ったのだった。....。

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