玉響

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11/26/2023, 1:13:34 PM

『微熱』
ベッドの中で、あなたを待つ。
枕元には、あなたとのトーク画面を映すスマホ。
微熱と勢いにまかせて頼んじゃったけど、大丈夫だったかな。迷惑じゃなかったかな…。
そんな考えを巡らせながら暗い天井をぼーっと眺めて過ごしていると、不意にインターホンが2回鳴る。
最近物騒だからとあなたが言うから、二人で決めた合図。合鍵があるのに、とても心配性なんだよね。
鍵が開いて、あなたの声が近づいてくる。
だるい体を起こすと、暗がりの中に白いビニール袋を持ったあなたの姿が見えた。
とても優しい声。毛布にくるまっても寒くて震えていた私を、あなたの声はすぐに暖めてくれた。
あなたの顔を見るだけで、とても安心する。
あなたは簡単な食事を作ってくれて、家事までやってくれた。
それから、少しだけお話をした。
ご飯はどのくらい食べられそうか、とか、治ったら前話してた所に行こうね、とか。
その後は、私が寝る少し前まで傍にいてくれた。
普段はおしゃべりなのに、私を気遣ってか今日は静かに寄り添ってくれた。
今日いっしょに居られた時間は長くはなかったけど、それでもあなたに会えてとても幸せ。
あなたが帰ったあと、横にあるスマホを見ると、おやすみなさい、のスタンプがミュートで送られていた。
今日はありがとう。嬉しかったよ。おやすみなさい。
そう心の中で返信して、目を閉じた。

赤くなった頬は、きっと微熱によるものじゃない。

11/26/2023, 8:35:23 AM

『太陽の下で』
太陽は、私たちに光を平等に届けてくれる。
でも、自分だけ良い思いをしようとする奴もいる。
そいつらが背伸びをするから、影ができる。
影を落とされた奴らはどうする?
光を浴びるために、そいつらに追いつく、追い抜く。
それを見て、また追いつく、そして追い抜く。
世界ってのはこういう競争によって成り立ってる。


エゴイズム。敬遠されがちな考え方だけれど、
利己的行動が巡って社会全体の利益になる事もある。
太陽の下で輪になって踊っていた時と比べれば、
今の世界は大変な進化をしてきた姿と言えよう。


⸺秩序を壊す者がいなければ、世界は前へ進めない

11/24/2023, 11:25:16 PM

『セーター』
解れかかったセーター。

色あせたセーター。

縮みかけたセーター。

それでもあなたから貰ったセーター。

11/21/2023, 2:40:39 PM

『どうすればいいの?』
幼い彼女の悲痛な問いは、雑踏に吸い込まれていった。
誰一人、立ち止まる者はいない。訝しむ目さえ浴びせる者も少なくない。
次第に、彼女は問うことをしなくなった。
意味がないから。答えてくれる人はいないから。
そして、彼女は笑みを浮かべるようになった。
周りの目から逃れる為に。嫌われない為に。

幼さがまだ抜けない顔に、貼り付いた笑顔のシール。


「自分の好きなように生きなさい。」
ただそれだけの事だった。十五文字の単純な言葉。
これが十五年経った今のわたしの解答。
もし過去に戻れたら、こっそり教えてあげたい。
でも、そんな事はできないから。
今に繋げる。未来に遺す。
だから、まだ幼いきみにこの言葉を贈った。

賃貸の壁に貼り付いた笑顔のシールに苦笑しながら。

11/19/2023, 2:56:10 PM

『キャンドル』
僕の心が休まるのは、キャンドルの火が淡く灯っているときだけ。

学校、部活、家庭、友達、恋人、、

みんながキャンドルを持っていてくれたなら、
僕の火を分けてあげられたのに。

みんなライターしか持ってないから。
そんな煌煌とした炎、僕はいらないよ。

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