玉響

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『微熱』
ベッドの中で、あなたを待つ。
枕元には、あなたとのトーク画面を映すスマホ。
微熱と勢いにまかせて頼んじゃったけど、大丈夫だったかな。迷惑じゃなかったかな…。
そんな考えを巡らせながら暗い天井をぼーっと眺めて過ごしていると、不意にインターホンが2回鳴る。
最近物騒だからとあなたが言うから、二人で決めた合図。合鍵があるのに、とても心配性なんだよね。
鍵が開いて、あなたの声が近づいてくる。
だるい体を起こすと、暗がりの中に白いビニール袋を持ったあなたの姿が見えた。
とても優しい声。毛布にくるまっても寒くて震えていた私を、あなたの声はすぐに暖めてくれた。
あなたの顔を見るだけで、とても安心する。
あなたは簡単な食事を作ってくれて、家事までやってくれた。
それから、少しだけお話をした。
ご飯はどのくらい食べられそうか、とか、治ったら前話してた所に行こうね、とか。
その後は、私が寝る少し前まで傍にいてくれた。
普段はおしゃべりなのに、私を気遣ってか今日は静かに寄り添ってくれた。
今日いっしょに居られた時間は長くはなかったけど、それでもあなたに会えてとても幸せ。
あなたが帰ったあと、横にあるスマホを見ると、おやすみなさい、のスタンプがミュートで送られていた。
今日はありがとう。嬉しかったよ。おやすみなさい。
そう心の中で返信して、目を閉じた。

赤くなった頬は、きっと微熱によるものじゃない。

11/26/2023, 1:13:34 PM