私だけ
誰もがそう思っているのだ。
天才であると、
特別であると、
異端であると、
特殊であると、
私だけがと。
でもふと周りを見ると
私だけ、でないのに気付く
気付いた途端
私に私はないのだと
私だけがそう思う。
誰も私が他と同じだと
思うことはないのに。
私は
他と違う事もなければ
同じという事もない。
私とはとても
複雑で面倒くさいものだ。
…と面倒くさい思考を
私だけが、ずっとしている。
私の当たり前
音のない空間
冷たいご飯
生活感のない内装
それが私の家の全て。
母親と父親の仲は冷え切り
ただ親という肩書きだけで繋がっている
それを繋ぎ止めるだけの私
そんな存在に対する態度も同様である
会話はすべてが冷ややかで
空気はいつも張り詰めている
それが私にとっての普通の家族だった
段々成長するうち
それが普通でないと気付いていった
仲の良さというのももちろん
パパ嫌だー。だとか
ママが怖いー。だとか
皆それぞれ親に対して
何かしらの興味、感想を持てていた。
皆、あたりまえのように。
私は?
私にとっての当たり前が崩れていった。
崩れたところで当たり前は当たり前のままだった。
きっと誰も私の当たり前を当たり前と思わない。
口うるさいこともなく
それなりのご飯を食べて
それなりの家に住んで
きっと誰もが普通以上の環境だと思うから。
親は二人で、学校にも行かせてもらっている
これ以上に何を望むというのかと
きっと誰にだって思われるんだ。
私の当たり前はきっと揺るがない
こんなことなら気づかなければよかった
中途半端にこれは当たり前じゃないなんて。
そうすればきっと
当たり前として生きれたのに
窓越しに見えるのは
ボクはお出かけが好きだ。
ちゃんと座っているのに
どんどん流れていく窓越しの景色。
それを見るのがとても楽しいから。
目的地は何処だっていい
その流れる景色を見るのが一番の醍醐味だから。
流れるといえば、流れてる音楽も好き。
歌詞はわかんなかったりするけど
なんだかワクワクしてくる。
そして君の楽しげな鼻歌も聞けることがあるから
ボクも楽しくなれる。
だから音楽もすき。
…考えてたらお出かけ行きたくなってきちゃった
頑張ってアピールするか…
「うっ…その目…外行きたいか?」
はい!
「雨だからな…」
そこをなんとか!景色が重要なので!
「可愛い目しやがって…」
角度も完璧のはず!
「車でちょっと行くだけだからな」
それが目当てです!
「ちゃんとお利口に座るんだぞ」
おすわりはお手の物です!
「…じゃあ行くぞ太郎。」
「返事は?」
ワンッ!
窓越しに見えるのは
流れていく不思議な景色。
窓に映るのは
楽しげに歌う君と
尖った耳と高い鼻。
可愛い目をしたボクの顔。
赤い糸
ある日、僕は赤い糸を見れるようになった。
なぜかはわからない。
駅前によくいるカップル
散歩をしている老夫婦
そんな人達の薬指に
その赤い糸はある。
運命の赤い糸というものだ。きっと
誰かと結ばれていない者にも糸はある
誰とも繋がることなく
ただ糸が垂れているだけ。
以外にも運命の赤い糸は
元々用意され結ばれているものではないらしい
運命は人が決められるものではないが
運命の赤い糸はきっと自分が結ぶものなのだろう。
僕の赤い糸は少し縺れている
迷っているからだ。きっと
結ばれたい、いや結びたい人は決まってる
だけど迷っているんだ。
別に向こうに相手がいるわけではない
拒否されるのを怖がっているわけでもない
ただ迷う。その度に糸が縺れる
赤い糸が目に見えるようになった所で
その迷いが無くなることない
逆に縺れるたび焦燥に駆られていった
糸の縺れが解けなくなってきた頃
僕は赤い糸が見えなくなっていた。
なんだかとてもほっとした。
運命の赤い糸なんて見えなくても
駅前によくいるカップルは楽しそう。
散歩をしている老夫婦は仲睦まじい。
糸が見えなくなって少しして
僕は彼に告白をした。
糸を結べたのかはもう見えないけれど
きっと運命は僕の方を向いている。
繊細な花
君はよく怒る
少し話を聞き流すと
強引に顔を引っ張るし
1センチ違う前髪を
いつまでも主張してくる
返信が遅れてしまうと
後日、お喋りから逃してくれなかったり
記念日をぼかしたりすると
それはそれは凄く怒る。
まるで
水、日光、気温
全てに気を使う繊細な花の様に
髪、格好、記念
…その他様々なものを
気をつけなければならない君
だけどとても愛おしい。
頬を膨らませ怒る君も
少し拗ねて不機嫌な君も
小さい子の様にはしゃぐ君も
嬉しそうな輝く可憐な笑顔も
とても愛おしい、
僕だけの知る可愛い花。
これからもずっと
その繊細さに翻弄されながら
愛おしさを募らせるんだ。