『ところにより雨』
おとぎ話は云う
逃げ出したこの街に告別し
破れた秩序が蔓延る外界へと
そこは常々雨雨の砂上の楼閣
それはまるで遥か彼方へと行方を晦ました
ノンフィクション絡まる自称フィクション
その真偽は未だ解らず
久遠も騙されてきた歴史は歩む
人々は縷縷この場に留まる
解れた糸は在った
僅かに在った
掠れたページの狭間に
解き、解き。
解の在り処を知った
「未知」を思索した後羨望に暮れ
秩序に淘汰されないうちに駆ける
最終章の空欄の解は
「ところにより雨」
『物憂げな空』
今日、大切な人に謝った
初めて謝った
私の気持ちであなたを傷つけ
無理して間を埋めた白色の時間
「16日と11時間23分」
そして今、22時54分
星一つ見えない物憂げな空
仰ぎ仰いでベランダにうなだれる
でも、謝りたくて謝りたくて
スマホの画面に指を滑らせる
全て吐き出した
凍えた外の空気に私の熱い想いが
心も空も少し晴れた気がした
その隙間から返事は来るかな
『10年後の私から届いた手紙』
暾に呑まれ
未だ許しを乞う様な日々に
欲に拠り欲に醉い欲に迷いいよいよ宵
孤独の証明と冒涜の存在に
全て正しいと云う嘘を伝える
齷齪の惰性が酷く望む光の先へ
「ああ、確か……。」
思い出が堕ちた
そこに佇むは私の背中
底に淀む花束の偽善?
甦らない 甦らない
「寂しさ」
何時もの通学路に雪が降ってる
午前8時52分のバスの中
冷たさ感じる生意気な空気が
マフラーの隙間を掻い潜る
「あれ? ちょっといけないなぁ もぅ」
簿記の問題集忘れてしまって
「ああもう! 今日に限って何故遅いの!」
20分遅れで到着!
赤信号で止まった交差点は
寒さが人影を攫ってる
道端に落ちてる使い捨てカイロは
猫が咥えて逃げてった
「ねえ? ちょっと待っててよ ねぇ」
アタシだけが遅れてるから
「だからさ! 全然分かんないんだよ!」
何が何だか分からない思想!
『部屋の片隅で』
齷齪に塗れ凋落となり
聚楽の味を噛む日々に
冨樂を嫉む醜悪な性に染まる
明日の陽を見ることさえ覚束無い
魑魅魍魎のように化ける心
縷縷忘れてしまうのか
いつからかの朧気を
解を見い出せぬまま
部屋の片隅で
泣いている