深夜0時キッカリにインターホンの音。
寝ぼけ眼でモニターを見れば、ずぶ濡れの君。
急いでドアを開けて、タオルを渡すと
わんわん大声で泣き出した
しゃがみ込んでタオルに顔を埋めながら
嗚咽を堪える君の背中をそっとさする
冷たい背中だ 随分と濡れたまま歩いたのだろう
バスタオルをもう一枚用意して
頭から被せて、半ば抱えながら風呂場へと誘導する
温かいシャワーを頭からかけるのは少し躊躇したが
どうせ濡れているし風邪を引くよりは増しかと思って
流し続ける……なんだかずぶ濡れの猫みたいだ
少し落ち着いてきたのか、シャワーヘッドを奪うと
自分の顔に思い切り浴びせ始めた
何か断ち切りたいものでもあるかのように
そしてぽつりと呟いた
疲れた と。
雨に佇む二人
1メートル程離れて
背中を向け合っている
何をするわけでもなく
ただ流れ落ちる雨に身を任せつつも
全身で受けとめている
黒く重くのしかかる様な雲と
しきりに降り注ぐ雨
そんなことはお構いなしに佇む二人は
どこか可笑しくもあり
勇ましくも見えるのだった
ガタンゴトンと揺れる列車の中で
向かいに座るのはいつかの私
この街を出る時には
必ず窓の広いボックス席に座り
窓枠に頬杖をつく
緑から灰色へと移り変わる景色を眺めながら
なんとなく独りに帰っていく侘しさと共に
都会の街へと消えていった
あの時の思いは今も覚えている
大都会という孤独の群れの中で
温もりを探し彷徨う人々
ネオンに紛れ、自分だけの光を探している
そんな世界は嫌いじゃなかった
きっと中にいる時には気付けなくて
何かをきっかけに抜け出した時
過去を振り返られるようになった時
見えてくるものがあるんだと思う
いつかの私へ
その苦しくも懸命に歩く姿は
きっと役に立つときが来るから
存分に足掻いてください
許せないとは違うんだよね
どうにもできない悔しさとか至らなさとか
もっとああできた、とか
こうできたんじゃないか、とか
後悔とかそんなのが沢山あって
やるせないんだよ
それでも今日も日は昇るから
闘いながら生きるんだ
そういう気持ちを抱えながら
生きてやるんだ…。
あれ?シャツ反対じゃない?
あ、、、ほんとだ、、、
指摘されて気がつくことが私にはよくある
どこか抜けているとか 天然だとか
そんな言葉で片付けても良いのだけれど
わたしにとっては恥ずかしいことこの上ない
かんぺきとは程遠いこの性格
一度は直そうと奮闘してみたが
ただただ疲れる一方で三日も経たずに諦めた
しかしそんな私でも
意外と役に立つこともあるそうで
まの抜けたテンポを見ていると癒される〜
なんて言われたりもして
今ではそんな自分を少しは認められるようになった
結局、取り繕っても仕方ないし
ありのまま生きるしかないんだなって。