NoName

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深夜0時キッカリにインターホンの音。
寝ぼけ眼でモニターを見れば、ずぶ濡れの君。
急いでドアを開けて、タオルを渡すと
わんわん大声で泣き出した
しゃがみ込んでタオルに顔を埋めながら
嗚咽を堪える君の背中をそっとさする
冷たい背中だ 随分と濡れたまま歩いたのだろう
バスタオルをもう一枚用意して
頭から被せて、半ば抱えながら風呂場へと誘導する
温かいシャワーを頭からかけるのは少し躊躇したが
どうせ濡れているし風邪を引くよりは増しかと思って
流し続ける……なんだかずぶ濡れの猫みたいだ
少し落ち着いてきたのか、シャワーヘッドを奪うと
自分の顔に思い切り浴びせ始めた
何か断ち切りたいものでもあるかのように

そしてぽつりと呟いた

疲れた    と。

8/29/2024, 7:00:04 AM