「君は今」つい、言葉が出た。
彼の目は光を失ったように、俺を見つめてくる。彼の近くの空気は重みを持つ。
俺は近づくたびに、口が開かなくなる。彼は口を開いて、ボソボソと喋る。
「なんだよ。」
あの頃の笑顔は、消えていた。
140文字トレーニング
出来ない
「はぁ……」首を重く回しながら、顔を上げる。
ポツンと橙色に染められた薄い月。
落ちかけの橙色の光が体に当たる。光から影が伸びる。
140文字トレーニング。まだまだ出来ません。
題名「いただきます。」
「うん!今日もうまそう。」私は自分の食事に点数をつけながら、コップにはスマホを立てて、スマホから流れてくる動画に目を輝かせながら、スプーンでオムライスをすくう。
オムライスの黄身は、焼き加減がうまく出来ていて、口の中になめらかと溶けていく。
「……いただきます。」
彼女は、少し考え事をしたような顔になった後、スプーンをオムライスに入れる。ゆっくりオムライスの黄身が、破れて行った。
彼女は口を動かし、堪能している。
彼女がオムライスを堪能した後、じっと私の目を見つめる。恥ずかしくなって目を逸らす。彼女が口を開く。
「最近は、スマホに熱心だね。」
急にスマホの話をされたから、つい、急にどうしたの?と聞いてしまう。
ため息混じりで、彼女が話し始める。
「食事ってさ、食べることなんでしょ。いただきますもしないで。その卵たちが可哀想だよ。」
ついに、ヴィーガンに目覚めた……とつい心の中で考えついてしまった。その考えを頭を振り、すぐさま切り替える。
「それは、ごめん……」
彼女は、少し唇を指で押しながら、話し始める。
「まぁ、食事は、小さい命の積み重ねだから、野菜も動物も、食べさせてもらっているから、その感謝の意味でのいただきますなんだから。それに、ちゃんとご飯を味合わないと、楽しく無いよ。」
そう言い終えると、少しギコついた笑顔になる。
「命か……」
私はつい、スプーンをすくう手を止める。
命、卵も命だな。そもそも小さい頃私は毎回してたのに、なんでやらなくなったんだろう。
そうして視線をテーブルに戻すと、そこには
「ア……」
そこには、コップに立てかけられたスマホがあった。
私は食事中も食事を作る時も、スマホをいじっていた。ずっとずっと、欲を求めてしまった。彼女との食事や会話より、スマホをしてしまっていた。
私は、つい言葉が出てしまう。
「ごめんなさい、私、当たり前。忘れてたかも。」
私が言うと、彼女は少し、苦笑を浮かべながらも
話す。
「そこまで深く考えなくても良いよ。食事の感謝だって、人によって、色々あるものだしね。でも、私との食事中は、スマホとか、使わないで欲しいなぁ……って」
その顔は、ほっとした表情をしていて、笑顔が眩しかった。
「なら、もう一回、一から良い?」
彼女はそう言う。
「うん、私ももう一回したい。」
スマホをテーブルに伏せ、手を合わせる。
「「いただきます」」
ネタと毎回、かけ離れてしまう。
カチッカチッと、少しずつ時計の針が動く音が聞こえる。
その音が、12時になってしまえば、自分が死んでしまそうな、そんな音で、身が縮まる。制限時間、なのだろうか?
「……俺を一体、どうするつもりだ?」
誘拐した理由には、身代金以外の可能性もある。それを聞き出して、なんとか解決策を。瞼を開いて、男を見つめる。
「どうするって?金だろ。金になるなら、俺はなんでもするぜ」
男の顔は唇に傷があり、目元は鋭い眼光で、鷹のように見える。自分は餌で、男にとっては、自分は多種多様な餌の一つとしか見られていないような。そう錯覚する。
「本当にそれだけが……」
そう自分が言うと、鷹の目はより一層鋭くなり、今も喰われると恐怖で、背筋が伸びる。
風が肌に当たって、寒い。
「あっ?もしかして寒いのか?言えよ、身代金が少なくなったらめんどくさいからな」
そういうと、鷹は、窓を閉める。少しだけだが、肌に当たっていた風は無くなった。少しだけ、落ち着いてきた。
「さぁ、身代金。さっきの話の理由、教えてもらおうか」
ついに彼女とキスをする。
目の前の潤いを持った唇が、自分の唇にあたる。
彼女の唇は、優しい温かみがあって、気分が落ち着く。好きな人とキスをすると、興奮すると聞いたが、彼女の顔を見ていると、ハグをしてしまう。彼女の肌は暑かった。目は泳いでいる。離さないように、守れるように、強く、深く、ハグをする。この時間で、世界が止まるように。
いつのまにか、彼女から、細い糸を弾きながら、唇を離していた。その顔は頬が紅くなっていて、顔を背ける。
「人が見てるよ……」
少し、彼女の肩が震えていた。
「名前」自分は彼女の顎に触れて、もう一度顎を近づける。自分の思いを、ぶつけるように。