夢が醒める前に
私は夢をよく見るタイプの人間だった。夢は好き。現実の私が持っていないものを夢の私は持っている。
私の夢には人がよく出てくる。夢にまで出てこなくてもいい人もいるけど、夢に出てこないと話せない人もいる。
現実の私は絶対あなたとは話せない。あなたは私と話す必要がない。そんなあなたが私にだけ話しかけてくれる夢がすき。夢が醒めて、またあなたの存在が遠くになってしまう前に、その前にあなたに、わたしは。
優しさ
消えてしまいたい時に、その気持ちを後押ししながらも止まらせてくれる優しさがほしい。
ミッドナイト
午前0時を過ぎるとき布団の中で息をころす。体に侵入する重い空気を纏った怪物から長い間逃げている。また日付が変わってしまう。もう朝を迎えたくない。わずかな時間に現れ、その存在だけ残していく怪物に飲み込まれる。
寝ることができずにいる夜はカーテンを開けて恐怖を紛らわす。まだ消えない街の明かり、通り過ぎていく車の光、近づいて遠のく人の話し声。生きているという空気を体に抱えて、怪物の持つ空気に対抗する。午前0時をいつのまにか過ぎ、冷たい空気が体中に行き渡ったら私の勝ち。
安心と不安
自分が良いことをするたびに安心する。人に感謝される存在の中に自分がいることを確認しては安心する。感謝された話が他者にできる自分に安心する。
そういう安心がたくさん感じられた日の夜は特に不安になる。自分は、自分を不安にさせる安心を他者にもらっている。こんな不安定な生き物が自分以外にもいてほしい。
閉ざされた日記
日記に日々の出来事を書いていた時期がある。映画を見た時の気持ち、喫茶店で食べたケーキの味、本を読んだ時に思い出したこと、友人と話したことの内容、夜に見た夢の情景。1日のことを短く書いていた。日記はただのノートで、6冊で500円くらいだった。なんの特別感もないけど、私の気持ちを書くには十分だった。大切にしていた。
ある時、勝手に部屋に入った母親が私の日記をこれまた勝手に読んだ。母親は私の文章の書き方、日記の付け方、私が日々感じること全てが気に入らなかった。私はあれから日記を書けていない。私の日記が閉ざされてしまったように、私の心も閉ざされてしまった。