下屋

Open App
5/15/2024, 1:12:50 PM

「後悔」

 あなたは過去を振り返った時に悔いていることがありますか? ……ない? そう。それは素敵なことだ、羨ましい。確かにあなたはいつだって高潔で、公正で、正しい判断のみをしてましたからね。
 それに比べたらわたくしなぞ、後悔だらけの人生を歩んで参りました。近いものなら昨日の夕飯で見栄を張って好物を選ばなかったこと。遠いものなら学生の時分、手を挙げなかったこと。小さいものなら財布に小銭がないこと。大きいものならあの時あなたを手放してしまったこと。

3/13/2024, 10:37:00 PM

「ずっと隣で」

 あなたの一番近くにいるのは私だと思っていたのに。実際にそうであったはずなのに、今は違う。どうしてだろうと、なぜだろうと、私なりに考えて、考えて、考えて……。
 きっとはじめから私たちは背中合わせだったのだと気がつきました。側にはいるけれど、そのまままっすぐ進んだら離れていってしまう。だからこれは、しかたのないことだったのだと。そう、気がつきました。
 でも、もしもう一度やり直せるならその時は、——。

2/29/2024, 5:40:36 AM

「遠くの街へ」

 あなたとはもう二度と会うことはないと思っていたのだけれど、存外私の世界はちっぽけなものだったのですね。
 ならば次は、もっと遠くにゆこう。あなたというひとに再び出会わない為に、私は遥か彼方にきっとあるまだ名も知らないところを、当もないままに目指しているのです。

12/22/2023, 7:19:04 AM

「大空」

果てしなく続くそれにもいつか終わりが来るのだろうか。
許されるならばそうであってほしいと思う。
あなたの言う、みんないつかは終わるという言葉が嘘であってほしくないから。

そうは思うのだけれど、頭上の広大な空間がどこまでもいつまでも続いていて、
私の辿り着いた先にあなたがいたらいいのにとも思うのです。
そうして一緒に浮かび上がって、青も赤も紫も灰色も、眩く輝く星々も、
あなたと共に見られたのならきっと素敵だったでしょう。

11/1/2023, 11:52:23 PM

「永遠に」

 君の心臓が動くことを止めて、一体どれくらいの時が経ったのだろう。僕はもうそれを数えることを辞めてしまったけれど、数日だとかではないはずだ。何せ僕は近頃自分の身体が君と過ごした日々よりも悪いものになっているのを感じているから。
 だが、今も尚君の美しさは色褪せることがない。君を見たある者は奇跡だと言った。またある者は悪魔の仕業だと言った。そのどちらかなのか、あるいは自然がそうさせた偶然なのかなんて僕にはわからない。わからないけれど、とにかくはじめは嬉しかった。動くなってしまったとはいえ、君とこれからも過ごすことができることが、とても嬉しかったんだ。でも、今は怖い。僕は確実に終わりに近づいているのに、君はこのままだということが。君を遺すことが、恐ろしいんだ。もしかしたら、不滅の君を妬んでいるのかもしれないね。そうだ。きっと、そうなんだ。ねぇ、お願いだから、もう一度笑っておくれ。そして前みたいに「永遠なんてあるわけない」と笑って、僕を安心させてくれないか。

Next