「大空」
果てしなく続くそれにもいつか終わりが来るのだろうか。
許されるならばそうであってほしいと思う。
あなたの言う、みんないつかは終わるという言葉が嘘であってほしくないから。
そうは思うのだけれど、頭上の広大な空間がどこまでもいつまでも続いていて、
私の辿り着いた先にあなたがいたらいいのにとも思うのです。
そうして一緒に浮かび上がって、青も赤も紫も灰色も、眩く輝く星々も、
あなたと共に見られたのならきっと素敵だったでしょう。
「永遠に」
君の心臓が動くことを止めて、一体どれくらいの時が経ったのだろう。僕はもうそれを数えることを辞めてしまったけれど、数日だとかではないはずだ。何せ僕は近頃自分の身体が君と過ごした日々よりも悪いものになっているのを感じているから。
だが、今も尚君の美しさは色褪せることがない。君を見たある者は奇跡だと言った。またある者は悪魔の仕業だと言った。そのどちらかなのか、あるいは自然がそうさせた偶然なのかなんて僕にはわからない。わからないけれど、とにかくはじめは嬉しかった。動くなってしまったとはいえ、君とこれからも過ごすことができることが、とても嬉しかったんだ。でも、今は怖い。僕は確実に終わりに近づいているのに、君はこのままだということが。君を遺すことが、恐ろしいんだ。もしかしたら、不滅の君を妬んでいるのかもしれないね。そうだ。きっと、そうなんだ。ねぇ、お願いだから、もう一度笑っておくれ。そして前みたいに「永遠なんてあるわけない」と笑って、僕を安心させてくれないか。
「理想郷」
わたしは、わたしと、わたしたちの為にここを作りました。皆わたしに賛同してくれる、素敵な場所です。他にこんなところはない。わたしたちが生きる為に、必要なのです。
だけれど、あとひとつだけピースが足りない。君だ。君ですよ。どうして君だけが賛同してくれないのか。わたしは、君の為にここを……。
「行かないで」
あなたを引き止められたなら、こんな思いせずに済んだのでしょうか。
でも、思うのです。きっとあなたは、私が引き留めようとしたとて、遅かれ早かれ遠くへ行ってしまったでしょうね。だから同じこと。変わらなかった未来だと。そう、思うのです。
これは負け惜しみ。たったひとことが伝えられなかった私の、情けない私の、今もあなたを想ってしまう私の、負け惜しみ。
「衣替え」
長袖から半袖になるよりも半袖から長袖になる方が寂しいのは何故なのかな。
服が重くなるから? 明るい夏が終わったことを実感するから?
わたしたちが箱庭から卒業する日が近づいているから?