「忘れたくても忘れられない」
この季節になると君のことを思い出すよ。微睡みながらゆっくりとまばたきをする君のことを。
でもあの頃には既に僕達の関係は破滅へと向かっていたね。季節が少しずつ冬へ向かって移ろいゆくように。僕と君は、あの夏のような情熱を遠くに置き去りにしてきてしまった。
それにも関わらず僕に縋ろうとする君は、まるで醜かった。君ではないと思いたいくらいに。だから僕は君が、君であるうちにお別れをしたかった。急いで、急いで、急いで。今すぐに!
そうして、あの時君に触れた感触が、今も僕の手にべったりとまとわりついて離れないんだ。
「やわらかな光」
あなたは輝いていた。
あなたは美しかった。
あなたは唯一だった。
これまで出逢った何者ともあなたは違っていた。
あなたはあなたのことを考えていなかった。
あなたの優しさを他人に分け与えることに躊躇などしなかった。
春の陽のようなあなた。
ずっと傍にいたかった。
そうするつもりだった。
そうできたらよかった。
欲張りな私はそうするだけでは満足できなかった。
今はもう一筋の光も見えない。
「踊りませんか?」
アン・ドゥ・トロワ
リズムに乗って
くるくる回る
アン・ドゥ・トロワ
わたしはここで
ひとりで踊る
アン・ドゥ・トロワ
できることなら
あなたと再び
アン・ドゥ・トロワ
アン・ドゥ・トロワ
アン・ドゥ・トロワ……
「巡り会えたら」
またここで会いましょう。
その時にはもう、わたしとしてのわたしじゃないかもしれないし、
あなたとしてのあなたじゃないかもしれないけれど。
それでもいいよね。
「奇跡をもう一度」
君に出会えたことは私の人生において最上の幸運であり、不幸でもあった。あの偶然の出会いを、君は運命だ、奇跡だと言った。つまりは偶然と偶然が合わさり、結果として奇跡的に良い方向へと働いたのだ、と。
それまで私は運命だの奇跡だのというものを信じちゃいなかったけれど。でも、確かにあのことは特別だった。衝撃的とでも言おうか。それによって、私の物の見方もすっかりと変わってしまった。変えられてしまった。世界には常軌を逸したことが起こり得るのだ。私の世界は、突然に広大なものになってしまった。それは喜ばしいことに見えたが、次第に恐ろしさへと変貌した。
私は、臆病なのだ。それを自覚させた君が憎い。愛しくて、憎くて、堪らない。これが全て夢幻の類であったのだと願いたい。君の存在ごと知らずに、あのままの私でいられたなら、と。今からでもそうなれたのなら、と。君の言う奇跡が再び起こらんことを、請わずにはいられないのだ。